(写真)大門座/稲武劇場の跡地。
2019年(令和元年)9月、愛知県豊田市の旧東加茂郡域(旧足助町・旧稲武町・旧旭町)を訪れました。かつて稲武町には映画館「稲武劇場」(大門座)がありました。「稲武町を訪れる」からの続きです。
1. 稲武町の映画館
1.1 大門座/稲武劇場(戦前-1960年頃)
所在地 : 愛知県北設楽郡稲武町(1960年)
開館年 : 1942年以前
閉館年 : 1960年頃
「大門座」から「稲武劇場」に改称。1959年・1960年の映画館名簿では「稲武劇場」。1961年・1962年・1963年の映画館名簿には掲載されていない。1983年・1986年のゼンリン住宅地図では跡地に「駐車場」。現在の跡地は駐車場。稲武商店街にある「三江美容室」東側の路地を北に160m歩いた突き当り。
文献調査
『映画便覧 1960』(時事通信社、1960年)には「稲武劇場」が掲載されていますが、愛知県図書館や豊田市中央図書館の郷土資料ではこの劇場の名前をいっさい確認できませんでした。
(写真)稲武劇場が掲載されている『映画便覧 1960』時事通信社、1960年。
『目で見る東三河の100年』(郷土出版社、1991年)、『武節町の歩み』(安藤泰、1993年)、『目で見る 稲武の歴史と文化』(安藤泰、2011年)には「大門座」という劇場が登場します。稲武交流館図書室や稲武観光案内所を訪れ、大門座はどこにあったのか、稲武劇場と大門座が同一施設であるのかどうかを調べました。
(写真)1942年の大門座の館内。『目で見る東三河の100年』郷土出版社、1991年。
聞き取り調査
まずは稲武交流館図書室で40代くらいの女性職員に聞いてみると、この方は稲武町にあった劇場/映画館のことを知りませんでしたが、『目で見る 稲武の歴史と文化』の著者である安藤泰さんに電話してくれました。
在野の郷土史家である安藤さんは、稲武交流館で歴史講座を担当しているそうです。安藤さんによると、「稲武商店街にある『寿司と和食の店 つたや』の西側から北に延びる路地に入り、突き当たった場所にある駐車場に「大門座」があった」とのこと。大門座の場所はわかりましたが、大門座と稲武劇場の関係については判然としませんでした。
次に「 道の駅 どんぐりの里いなぶ」にあるいなぶ観光協会観光案内所を訪れ、30代-40代くらいの男性職員に聞いてみると、この方は「稲武町に映画館があったことは聞いたことがある」とのことでした。そこで大門座という名前を出してみると、"大モン" という小字があるとのことで、その範囲を教えてくれました。
最後に稲武商店街を訪れ、大門座に近かったと思われるよろずや「尾形誠意堂」で70代くらいの主人に話を聞いてみました。「(尾形誠意堂の)すぐ東側から路地を北に入った突き当たりに大門座があった」とのことで、安藤さんの話とも一致します。
さらに、「大門座はいつしか稲武劇場に改称した」とも話してくれ、稲武劇場と大門座が同一施設であることがわかりました。稲武劇場は1960年代初頭に閉館していますが、1970年代の航空写真にもまだ建物が写っていました。
(写真)1970年代の稲武町中心部の航空写真。まだ稲武劇場の建物があったことがわかる。地理院地図に加筆
(地図)1983年の稲武劇場跡地周辺の住宅地図。跡地は中央上の駐車場「P」。
大門座/稲武劇場の跡地
(写真)大門座/稲武劇場跡地にある駐車場。
(写真)大門地区の説明看板。
稲武町の映画館について調べたことは「豊田市の映画館 - 消えた映画館の記憶」に掲載しており、また映画館の所在地については「消えた映画館の記憶地図(愛知県版) - Google My Maps」にマッピングしています。