振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

大聖寺を訪れる

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(写真)加賀市役所。

2021年(令和3年)3月、石川県加賀市大聖寺地区を訪れました。

※本記事は2021年(令和3年)3月に投稿した「大聖寺の映画館」から2024年(令和6年)2月に分割した記事です。

 

1. 大聖寺を訪れる

大聖寺地区は加賀市役所がある町ですが、JR北陸本線大聖寺駅には特急列車が停まらず、1時間1本の普通列車のみ。隣の加賀温泉駅が鉄道とバスの交通結節点となっています。大聖寺駅は町はずれにあることもあり、駅前は閑散としていました。

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(左)JR北陸本線大聖寺駅。(右)大聖寺市街地を流れる旧大聖寺川

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(地図)吉田初三郎『加賀江沼観光案内』江沼観光協会、1935年。

 

1.1 大聖寺の歴史

大聖寺は近世に大聖寺藩の城下町として栄えた町ですが、現代の開発から取り残されたせいか古い街並みが残っていました。本町にある時鐘堂は象徴的な存在ですが、2003年(平成15年)に完成したもので新しい。1934年(昭和9年)9月9日の大聖寺大火では時鐘堂も含めて大聖寺市街地の西側が焼失しており、本町などでは大火後の建築がほとんどのようです。

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(左)本町。(右)時鐘堂。

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(写真)京町。 

 

本町以外の町には古い町屋や近代建築が多数残っています。町中にある登録有形文化財は中木家住宅のみのようで、各地の重伝建地区と比べると文化財の密度は薄いのですが、歩いていて楽しい町でした。

 

1.2 大聖寺の和風建築

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(左)中木家住宅。1913年建築。登録有形文化財。(右)庇に付く「さがり」が特徴的な大聖寺の古民家。大聖寺山田町。

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(左)青草通りの古民家。大聖寺本町。(右)大野屋。大聖寺京町。

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(左)小規模多機能ホームきょうまち。大聖寺京町。(右)FUZON KAGA Cafe and Studio。大聖寺魚町。

 

1.3 大聖寺の近代建築

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(写真)タビト学舎。旧那谷医院。

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(左)織田理髪店。旧八十四銀行。(右)彫金工房 月・カフェサロン 銀。旧牧野歯科医院。

 

1.4 赤瓦の街並み

かつて加賀国には石見国から瓦などが運ばれたそうで、大聖寺市街地には石州赤瓦で葺かれた寺院や民家が多い。日本海沿岸にある加賀橋立は北前船の日本遺産に認定されています。寺院は総じて山門が立派であり、雪の被害を防ぐために板で覆ってある本堂が多い。本堂が北を向いている寺院が目立ちましたが、雪国の寺院は北向きが多いのでしょうか。

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(写真)赤瓦で葺かれた大聖寺の民家。大聖寺鉄砲町

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(左)大聖寺劇場跡地に近い毫摂寺。(右)南映劇場跡地に近い水守神社。

 

2. 加賀市立中央図書館

2.1 図書館の郷土資料

加賀市は複数の市街地からなる自治体ですが、図書館は加賀市立中央図書館と加賀市立山中図書館の2館のみ。中央図書館は大聖寺市街地の南にあります。

石川県の南端部にある自治体なので福井県あわら市民も貸出カードの作成が可能で、郷土資料は石川県以外に福井県嶺北地方のものもありました。郷土資料・参考資料コーナーの名称は「市政・議会図書室」ですが、他自治体と比べて行政資料が充実しているのかどうかはよくわからない。

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(写真)加賀市立中央図書館。

 

2.2 図書館の歴史

大聖寺における図書館の歴史は、1900年(明治33年)に江沼郡教育会によって設置された図書縦覧所までさかのぼるようです。1916年(大正5年)には蔵書数3,885冊で江沼郡立図書館が開館し、1924年大正13年)には大聖寺町立図書館に改称します。

戦後の1948年(昭和23年)6月28日に起こった福井地震で建物が倒壊し、1949年(昭和24年)には公民館に図書館を併設する形で再建。1958年(昭和33年)には加賀市の発足によって加賀市立図書館となり、1962年には旧大聖寺町役場に移転。1974年(昭和49年)には加賀市社会教育センターに移転し、1991年(平成3年)7月に現行館の加賀市立中央図書館が開館しています。

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(写真)江沼郡立図書館。