(写真)中津市立小幡記念図書館。
2024年(令和6年)3月、大分県中津市を訪れました。「中津市の映画館(1)」「中津市の映画館(2)」に続きます。
1. 中津市立小幡記念図書館
1.1 図書館の歴史
中津における図書館の歴史は、1909年(明治42年)に開設された中津図書館に遡ります。慶應義塾の社頭を務めた 小幡篤次郎 - Wikipedia が土地・建物・蔵書を寄付して開館した図書館であり、1912年(明治45年)には財団法人小幡記念図書館と改称されました。1938年(昭和13年)には近代建築に建て替えられ、この建物が1993年(平成5年)まで55年間も使用されます。
(写真)小幡篤次郎。
戦後の1947年(昭和22年)には中津市に移管されて中津市立小幡記念図書館となりました。1993年(平成5年)には槇総合計画事務所(槇文彦)の設計で現行館が開館し、現行館は1995年(平成7年)に日本図書館協会建築賞を受賞、1998年(平成10年)には公共建築百選に選定されています。
旧館は長らく中津市歴史民俗資料館として使われ、1997年(平成9年)には「旧小幡記念図書館」として登録有形文化財に登録されました。中津市歴史民俗資料館は新施設の中津市歴史博物館が開館する際に閉館し、2019年(令和元年)には建物が学習交流拠点施設の新中津市学校に転用されています。
(写真)1938年から1993年までの中津市立小幡記念図書館。現在の新中津市学校。登録有形文化財。
1.2 郷土資料
中津市立小幡記念図書館の延床面積は2892m2であり、戦前に市制施行した自治体の中央館としては控えめな数字。2020年代の基準だと開架室には窮屈さを感じ、郷土資料コーナーに割り当てられているスペースもそれほど広くありませんが、郷土資料が「中津」「宇佐」「日田・玖珠・九重」「臼杵・佐伯・津久見」など地域別に分けられている点などに、歴史ある公共図書館の雰囲気を感じます。
(写真)郷土資料コーナー。
郷土資料コーナーの近く、東側の壁面沿いには「中津ゆかりの人コーナー」がありました。廣池千九郎 - Wikipedia は法学者、福永光司 - Wikipedia は中国哲学者、松下竜一 - Wikipedia は著作家、横松宗 - Wikipedia は中国史学者、田原淳 - Wikipedia は病理学者。福澤諭吉や小幡篤次郎の関連書籍もこのコーナーに置かれています。
(写真)中津ゆかりの人コーナー。
戦国武将の黒田官兵衛(黒田孝高)は中津城を築いた人物です。2014年(平成26年)にNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』が放送された際には、中津城公園内に黒田官兵衛資料館が開館し、図書館内に「黒田官兵衛コーナー」が設置されています。
(写真)黒田官兵衛文庫。