(写真)JR三島駅。
2020年(令和2年)3月、静岡県三島市を訪れました。現在の三島市にある映画館はシネコンの「ジョイランドみしまシネマ」だけですが、1950年代後半の映画黄金期には8館の映画館がありました。
※本記事は2020年3月に投稿した「三島市の映画館」から2024年2月に分割した記事です。
1. 三島市を訪れる
三島市は静岡県東部にある人口約11万人の自治体。かつては伊豆国の国府が置かれ、近世には三嶋大社の鳥居前町として、また東海道三島宿の宿場町として栄えました。太平洋戦争中の1945年(昭和20年)には隣接する沼津市が大規模な空襲を受けた一方で、三島市は空襲の影響をほとんど受けていないようです。戦後に沼津市は幅の広い道路を整備しましたが、三島市には戦前からの折れ曲がった狭い通りが多数残っており、沼津市との街並みの対比が印象的でした。
(写真)静岡県における三島市の位置。©OpenStreetMap contributors
1.1 白滝公園-桜川周辺
三島市の中心市街地には小規模な水路が多数あり、また楽寿園や三嶋大社の広大な緑地以外に小規模な緑地も目立ちます。JR三島駅の正面にある楽寿園の東側には、湧水池のある菰池公園や白滝公園があり、これらの公園から南の中郷温水池に向かって水路が流れています。三島市街地は約1万年前の富士山の噴火の際に流れ出た三島溶岩流の上に成り立っており、溶岩の隙間を流れてきた雨水や雪解け水が湧水として湧出しているようです。
(写真)白滝公園。(左)湧水が流れる池。(右)公園内の三島溶岩流。
(写真)桜川沿いの遊歩道。「水辺の文学碑」として太宰治や井上靖などの文学碑が建てられている。
1.2 三嶋大社
白滝公園からは桜川に沿って三嶋大社を目指しました。境内の桜は1-2分咲きといったところで、新型コロナウイルス問題もあって参拝者の数は控えめでした。
(写真)三嶋大社の拝殿。
(左)三嶋大社の参道。(右)境内の桜。
2. 三島市立図書館
2.1 図書館の歴史
白滝公園のすぐ東側には三島市立図書館が入る三島市民生涯学習センターがありました。生涯学習センターの開館は1997年(平成9年)4月29日であり、建物の巨大さからすると敷地の狭さが気になります。旧館である三島市立図書館佐野記念館もこの敷地にあったようで、佐野美術館の設立者である実業家の佐野隆一からの寄付をもとに、1960年(昭和35年)11月に開館しています。図書館法に基づく三島市立図書館が設置されたのは1950年(昭和25年)12月のことであり、さらに遡れば1915年(大正4年)から三島町立図書館が存在したようです。
なお、1968年(昭和43年)には同じく静岡県東部の裾野市に、寄付者である鈴木忠次郎の名を冠した財団法人裾野町鈴木育英図書館が開館しています。愛知県では1966年(昭和41年)に杉野繁一の名を冠した佐屋町立杉野図書館が、同年に豊島半七の名を冠した一宮市立豊島図書館が開館しています。いずれも1960年代に開館した図書館ですが、三島市立図書館佐野記念館は静岡・愛知の両県でもっとも早く寄付者の名を冠した図書館かもしれません。
2.2 郷土資料
三島市立図書館の蔵書検索機で「三島市+映画館」のキーワードで検索してみると、思いのほか多くヒットし、その多くは『三島ニュース』という地域新聞の戦前発行分でした。『三島ニュース』第1号から第1021号、『広報みしま』709号~1187号に掲載された「ふるさと探訪」、『広報みしま』592号~1200号に掲載された「歴史の小箱」の登録作業を進めているようです。
事前に静岡県立中央図書館で三島市の古い住宅地図を閲覧しています。最古の住宅地図は1971年であり、1960年代に閉館した5館の正確な位置は判明しませんでした。三島市立図書館で郷土資料を漁ったところ、『歴史と人情の町 ふるさと三島』という文献に映画館の場所が掲載されており、図書館を出た後にすべての映画館の跡地を訪れることができました。
(写真)三島市立図書館の入口。
2.3 データベース
(写真)三島市立図書館の蔵書検索用PC。「三島市+映画館」の検索結果。
(写真)三島市立図書館の蔵書検索用PC。1962年4月15日付『三島ニュース』の紙面。「夏も冷しくお買物をと 商店や映画館で冷暖房」の記事、「毎週五十名を御招待 セントラル劇場へ」の記事、明宝興行が経営する映画館であるセントラル劇場・中央劇場・銀座劇場の特別割引券が掲載されている。