(写真)レインボーライン山頂公園から見た三方五湖。2022年10月。
2024年(令和6年)3月20日(祝・水)、福井県三方郡美浜町で第2回「ウィキペディアタウンin美浜」に参加しました。
1. イベント概要
美浜町立図書館が主催し、福井県内の公共図書館の司書などからなるチーム福井ウィキペディアタウンが協力しています。美浜町では2022年(令和4年)10月の第1回に続く2回目のウィキペディアタウンであり、第1回と同様にedit Tangoの伊達深雪さんとともに講師を務めました。
1.1 参加者
会場は美浜町生涯学習センターなびあすの「趣味の部屋」(多目的室)。美浜町立図書館の図書館ボランティアの方、美浜町で空き家活用プロジェクトを行っている方、福井県内の地域おこし協力隊の方などが参加し、他にはチーム福井ウィキペディアタウンのベテラン司書らも執筆しています。
1.2 題材
第1回のイベントでは城下町だった「佐柿 - Wikipedia」、郷土料理の「へしこ - Wikipedia」、久々子湖で行われる「美浜町民レガッタ - Wikipedia」などが編集対象になりました。
今回はざっくり言えば「三方五湖 - Wikipedia」が題材。美浜町において三方五湖は大きな題材。5つある湖は淡水・汽水・海水とそれぞれ異なる性質を持ち、漁業・農業・観光業と様々な産業や文化が成り立っています。
2022年(令和4年)8月には個人的に美浜町を訪れ、日向湖と久々子湖の周囲をレンタサイクルで散策しました。日向湖と久々子湖の性格の違いに興味を持ち、「日向 (福井県美浜町) - Wikipedia」と「早瀬 (福井県美浜町) - Wikipedia」の集落記事を作成しています。
2. まちあるき(遊覧船)
午前中には久々子湖の遊覧船に乗船する予定でしたが、残念ながら強風で欠航となったため、美浜町レイクセンターの建物内で説明を聞きました。
美浜町レイクセンターは2023年(令和5年)4月にオープンした新しい施設であり、久々子湖から浦見川を通って水月湖に向かう電池推進遊覧船が運航されています。この電池推進遊覧船は太陽光パネルなどの再生可能エネルギーによる電力のみで運航されているとのことですが、このような遊覧船は全国初とのこと。すごい。美浜町は美浜原発がある自治体だけに、カーボンニュートラルや再生可能エネルギーの取り組みを推進してるようです。
(写真)ガイドによる電池推進遊覧船などの説明。
(写真)美浜町レイクセンター。
(写真)乗船するはずだった電池推進遊覧船。
お昼には美浜町生涯学習センターなびあすに戻り、まずウィキペディアやウィキペディアタウンの説明を行った後、図書館の文献を用いてWikipedia記事の編集を行いました。
(写真)美浜町新庄で狩猟されたジビエを用いた美浜町レイクセンターの鹿フランクドッグ。
3. Wikipedia編集
3.1 編集記事
イベント中には約10人の参加者が「三方五湖 - Wikipedia」を加筆し、「行方久兵衛 - Wikipedia」を新規作成しました。三方五湖は様々な角度から説明できる題材であり、Wikipedia「三方五湖」には護岸再生の取り組み、野鳥の飛来、遊覧船を運航する美浜町レイクセンターなど思い思いのテーマで加筆がなされています。第1回イベントも今回の第2回も、自治体として/図書館として推したい題材を編集記事としてる点がとてもいいです。
湖岸で行われている福井梅の生産(農業)、伝統的な漁法による天然ウナギの漁獲など(漁業)、ゴコイチと名付けられたサイクリングコース(観光業)など、まだまだ加筆できることはたくさんありそう。
また、5つの湖はいずれも単独記事がありませんが、それぞれの湖の性格の違いを考えると、それぞれ単独記事があってもよいと思われます。なお、7万年分の年縞堆積物で知られる水月湖のみは英語版に単独記事「Lake Suigetsu - Wikipedia」があります。
3.2 文献の提示方法
今回のイベントでも「三方五湖」や「行方久兵衛」に関する多くの文献が事前に準備されています。
約10人の参加者がいくつかのグループに分かれて編集を行っており、三方五湖の記事に美浜町レイクセンターについて加筆したグループがありました。美浜町レイクセンターの開業を報じる『広報みはま』の記事を骨格に、美浜町レイクセンターについて書かれた新聞記事をディテールとして文章を構成する、という理想的な流れを初参加者の二人だけで考えて実行できていました。
(写真)準備された文献。
行方久兵衛は江戸時代の人物であり、文献を読み解いて理解するのに時間がかかる題材でした。このような題材の場合は、『ふるさと福井の先人100人』で大まかな経歴を把握してから『わかさ美浜町誌』でディテールを加筆していく、などという流れが理想ですが、いろいろな文献を開いてみないとどの文献を核にすればわからない。個人で何かについて取り組むならともかく、グループワークをする場合には文献を絞って提示した方がいいかもと思いました。
(写真)行方久兵衛についてわかりやすく書かれた『ふるさと福井の先人100人』。
(写真)編集中の参加者。
3.3 絵図や古写真
三方五湖や行方久兵衛の記事には文章のほかに、国立公文書館が所蔵する三方五湖の絵図、デジタルアーカイブ福井が所蔵する浦見川の古写真などが挿入されました。
(写真)恨坂(浦見川)の文字が見える天保9年(1838年)の「天保国絵図若狭国」。
(写真)戦前の浦見川の絵葉書。デジタルアーカイブ福井
4. 美浜町の映画館
美浜町の映画館については2022年(令和4年)9月に投稿した「福井県美浜町の映画館 - 振り返ればロバがいる」にまとめています。
4.1 遊楽座(戦後-1961年頃)
所在地 : 福井県三方郡美浜町河原市(1961年)
開館年 : 1947年以後1950年以前
閉館年 : 1961年頃
『全国映画館総覧 1955』には開館年が記載されていない。1947年の映画館名簿には掲載されていない。1950年・1953年・1955年・1956年・1957年・1958年の映画館名簿では「遊楽座」。1959年の映画館名簿では「遊楽館」。1960年・1961年の映画館名簿では「遊楽座」。1962年の映画館名簿には掲載されていない。映画館の建物は「福井銀行美浜支店」北西40mに現存。最寄駅はJR小浜線美浜駅。
2022年(令和4年)8月に訪れた際には遊楽座の跡地が分からなかったのですが、ウィキペディアタウンの参加者の方に「遊楽座の建物は今も残っている」と言われて驚きました。
福井銀行美浜支店の北西に、商店街から約1軒分奥まった場所に青色のトタンが張られた倉庫がありますが、この建物が遊楽座として映画を上映していた建物のようです。各年版の映画館名簿によると遊楽座の経営者は文室吉弘であり、木造2階建で定員300の映画館でした。
(写真)有楽座の建物。
4.2 美浜中央館(1951年-1966年頃)
所在地 : 福井県三方郡美浜町河原市(1965年)
開館年 : 1951年
閉館年 : 1965年頃
1956年の映画館名簿には掲載されていない。1957年・1958年・1959年の映画館名簿では「中央館」。1960年・1963年・1964年・1965年の映画館名簿では「美浜中央館」。1966年の映画館名簿には掲載されていない。跡地は「浄圓寺」北北西150mにある空き地。最寄駅はJR小浜線美浜駅。
(写真)1970年代の航空写真における美浜中央館と遊楽座の建物。