振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

「ウィキペディアタウン宇川・プレ」に参加する

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(写真)会場となった宇川アクティブライフハウス。

2021年(令和3年)2月13日(土)、京都府京丹後市丹後町の宇川地区で開催された「ウィキペディアタウン宇川・プレ」に参加しました。丹後地方でウィキペディアタウンなどを行っているedit Tangoと、edit Tangoに宇川地区の有志なども加わるウィキペディアタウン宇川実行委員会(仮)が主催です。

 

 

1. スケジュール

スケジュールは以下の通り。編集に用いる文献はedit Tangoメンバー・京丹後市立図書館・京都府立図書館が事前に準備しており、京都市にある京都府立図書館からは前日までに相互貸借用運搬箱が送られてきています。当日には10時から京丹後市立丹後図書館で文献を探し、また依頼していた文献を運搬箱ごと貸出しています。

午後までに会場の宇川アクティブライフハウスに移動し、13時には宇川地区の参加者と合流してイベントを開始。まずはWikipediaに関する説明を聞き(約1時間)、その後2グループに分かれて文献の閲覧やWikipediaの編集を行いました(約2時間30分)。

 

午前 文献集め京丹後市立丹後図書室 ※一部の参加者)

10:00~11:20 文献集め

午後 イベント(宇川アクティブライフハウス)
13:05~14:15 ウィキペディアの説明
14:15~16:45 題材分析・文献調査・編集

 

1. 京丹後市丹後図書室を訪れる

京丹後市は6町の合併で発足した自治体であり、組織としての京丹後市立図書館は6町それぞれにあった2館4室からなります。丹後町にあった丹後町中央公民館図書室は合併後に京丹後市丹後図書室に改称。2019年(平成31年)に京丹後市丹後庁舎1階に仮移転し、2020年(令和2年)10月30日に丹後庁舎3階に移転開館しました。「海のみえる図書室」をキャッチフレーズとしており、閲覧席からは日本海や立岩などを見渡せます。

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(左)丹後図書室がある京丹後市丹後支所。(右)丹後図書室の閲覧席。

 

移転にともなって床面積(510m2)は5倍以上となりました。内装は規文堂が手掛けたそうで、隙間を空けてたくさんの木箱型書架を置いた空間は児童書コーナーにぴったりです。児童書コーナーとカウンターの間にあるガラス窓にはポスカでお絵描きすることができ、利用者が描いた絵の他には図書館からの案内も書かれていました。

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(左・中)絵本などのコーナー。(右)お絵描きができるガラス。

 

間人ガニ」(たいざがに)などで知られる間人漁港は京丹後市屈指の漁港であり、郷土資料の書架には「海の本」を集めた常設コーナーがありました。藤原勘治(元毎日新聞西部本社代表)からの寄贈や寄付に基づく豊淑文庫のラベルもありましたが、京丹後市立図書館 - Wikipediaによると2010年に購入した書籍でしょうか。豊淑文庫の赤いラベルは文庫本や文芸書に多い印象です。

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(左)郷土資料。右は「海の本」の書架。(中)豊淑文庫のラベルが混じる書架。(右)図書館トピックス。

 

2. 宇川アクティブライフハウスを訪れる

宇川アクティブライフハウスは宇川地区の地域活動の拠点となる施設であり、施設の開設以前から活動している宇川加工所などが拠点としています。かつて下宇川保育所だった建物には多数の教室や講堂があり、今回は講堂に複数の机を設置して編集場所としています。

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(写真)会場の講堂。

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(左)宇川加工所が販売する商品。(右)宇川加工所に関する記事。

 

参加者はedit Tangoのメンバーに加えて、上宇川区・下宇川区の区長を務めている方、高校の社会科教員だった方、京丹後市で観光業に携わっている方などがいました。各年版の『映画館名簿』に久僧の映画館は登場しませんが、映画館について聞くと「久僧にも映画館があった」とのことで『丹後町史』を閲覧しました。1950年(昭和25年)から1958年(昭和33年)まで、現在の久僧公民館の北西すぐの場所に "久僧映画館" があったようです。

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(左)1961年の久僧の航空写真。地図・空中写真閲覧サービス(右)現在の久僧の航空写真。地理院地図


 

3. Wikipediaを編集する

準備された文献は相互貸借箱5箱分。『丹後町史』や『京丹後市史』や『角川日本地名大事典』などの厚めの文献から、『宇川の未来づくり』や『宇川加工所のおいしいもん』などのパンフレット類、京丹後市立峰山図書館が所蔵する新聞切抜帳(新聞記事スクラップ)まで様々な種類の文献が準備されています。とはいえ限られた編集時間中にすべての文献を読み込むことはできないので、どれだけの範囲で文献を集めればいいのかは悩ましい。

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(左・中・右)準備された文献。

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(左・右)準備された文献。

 

漱石のねこさんによるWikipediaの説明の中では、edit Tangoのイベントで作成されたWikipedia記事が及ぼした影響の話が印象的でした。私も参加した2020年9月27日の「海と湖のウィキペディアタウン」では記事「樋越川」が作成されましたが、"川崎市議会議員が議会中にこの記事を読んでいたことがテレビに取り上げられて京丹後市観光公社に問い合わせがあった" とのこと。"商店街が公式サイトの改善をコンサルタントに依頼したときにWikipedia記事の構成が参考になると言われた" こと、"大学の教員がWikipedia記事を読んで商店に電話してきた" ことなどの話もありました。

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(写真)Wikipedia記事の影響に関する説明。

 

編集した記事

宇川 (地名) - Wikipedia - 新規作成 

宇川加工所 - Wikipedia - 新規作成

 

Wikipediaの説明の後、参加者は2グループに分かれて「宇川 (地名)」と「宇川加工所」の記事を新規作成しました。

私は宇川地区の地名記事を担当。宇川地区は14の大字からなる広域地名であり、かつての竹野郡上宇川村と下宇川村の範囲と定義できるものの、Wikipedia記事には何を書くべきか悩ましい。各大字の歴史や寺社などを細かく書いていけばいくらでも文章量が増えますが、宇川地区の概要を簡潔に把握できなくなってしまいます。(自分が編集に携わっておいてアレですが)将来的には内容の大幅な見直しが必要かもしれません。