(写真)北方町役場。
2019年(令和元年)6月、岐阜県本巣郡北方町を訪れました。
※本記事は2019年7月に投稿した「北方町の映画館」を2024年2月に分割した記事です。
1. 北方町を訪れる
北方町 - Wikipediaは岐阜市の西側に隣接している自治体。近代には本巣郡の郡役所があった町であり、1889年(明治22年)には本巣郡で初めて町制を施行しています。平成の大合併時には本巣郡の各町が合併して誕生した本巣市に加わらず、岐阜市との合併も合意に至らなかったため、この2019年(令和元年)には町制施行130周年を迎えています。
(地図)愛知県名古屋市からみた岐阜県北方町の位置。©OpenStreetMap contributors
1.1 近年の北方町
2005年(平成17年)には名鉄揖斐線が廃止され、北方町から鉄道路線がなくなりました。しかし、JR岐阜駅/名鉄岐阜駅からは毎時5本程度の路線バスが運行されており、公共交通機関でのアクセスは良好といえます。
2010年(平成22年)には町の中心部に北方バスターミナルが完成し、2016年(平成28年)には北方町役場が北方バスターミナルの南側すぐに移転しています。傾斜した大屋根は伝統的とも未来的ともいえる不思議な雰囲気で、シンボル性は抜群です。庁舎の設計はC+A・武藤圭太郎建築設計共同体。
(写真)2016年開庁の北方町役場。
北方バスターミナルや北方町役場の南西側にある県営北方団地(ハイタウン北方)が目につきます。ハイタウン北方は1960年(昭和35年)から1965年(昭和40年)に建設された団地であり、2000年代になってから建て替えが行われました。
男性建築家の磯崎新がコーディネーターを務め、妹島和世など4人の女性建築家が設計しています。建物の外観は見栄えがいいものの、入居者からは批判も多いようであり、県営住宅の設計に求められるものは何なのか考えさせられます。
そのジェンダー視点を「このHKSのプロジェクトにおいてジェンダーの視点は、居住性を高めるという名目のための単なるレトリックとして、男性建築家によって利用されたにすぎず、女性設計者は、あたかもその視点を実現するかのようにみせるための主体として選定されたのであるといえる」と痛烈に批判する論考もありました。
ハイタウン北方の北端には磯崎新アトリエが設計した北方町生涯学習センター「きらり」があり、屋根のうねりが異様な存在感を放っています。北方町生涯学習センター「きらり」は北方町立図書館と向かい合っており、銀色の屋根や白色・黄土色の壁面は図書館の外観を意識しているのかもしれません。
2. 北方町を歩く
2.1 円鏡寺・大井神社
旧庁舎の南東のブロックにある円鏡寺 - Wikipediaは「美濃の正倉院」とも呼ばれているそうで、楼門や金剛力士像など4点が国の重要文化財に指定されています。町の中心にありながら境内は緑豊かであり、ここだけ別世界のようです。
(写真)円鏡寺の楼門。重要文化財。
(左)円鏡寺の境内。(右)三重塔。
円鏡寺から見て鬼門の方角、北方町商店街の東端には旧郷社の大井神社 (北方町) - Wikipediaがありました。例祭の北方まつりは北方町最大の祭礼のようです。
(写真)大井神社。
2.2 北方町商店街(東部)
北方町商店街は東西約1kmに伸びる商店街です。中央部はクランク状になっており、アーチが設置されています。商店街の北200mには国道303号が並行しており、商業の中心は国道沿いに移ってしまったため、日曜日の昼にもかかわらず商店街を歩いているのは私くらいでした。
(地図)北方町の中心市街地。黒線は2005年に廃線となった名鉄揖斐線。緑線は明治時代からある道路。地理院地図に加筆
(写真)北方町商店街東部にある銭湯の北方温泉。
(写真)北方町商店街東部。(左)洋菓子店「長崎屋」。(右)「寺島書店」や仕出し屋「わかのや」や「大野仏壇店」。
(写真)北方町商店街のアーチ。
2.3 北方町商店街(西部)
北方町商店街の西部には1926年(大正15年)竣工の啓文社記念館という印象的な建物があります。本巣郡最古の鉄筋コンクリート造の建物だそうで、2011年(平成23年)に記念館となってからは地域の催しなどに使用されているようですが、文化財指定や登録はされていません。啓文社とは戦前に法令集や教育法規集などを手掛けた出版社だそうで、北方町商工会は「(かつて)全国一の規模を誇る(出版社)」であるとしています。
北方町商店街は閑散としてはいますが、よく見ると営業している店舗もそれなりに多く、特に書店は梅田文書堂俵町店・梅田文書堂俵町店・寺島書店と3軒もありました。啓文社が存在したことと関係あるのでしょうか。
(写真)北方町商店街西部。(右)書店「梅田文書堂俵町店」や金物店「かじ久」。
(写真)啓文社記念館。
2.4 北方真桑駅
「喫茶麻雀サンパール」は名鉄揖斐線美濃北方駅からわずか50mの距離にありました。駅舎は解体済みとのことですが、ホームやバラストはまだ残っています。名鉄揖斐線の廃線から14年が経過したものの、美濃北方駅前では「喫茶麻雀サンパール」、喫茶店「ハイライト」、お好み焼き店「つくし」、「スナック123」と、4軒の飲食店が健在です。
2.5 樽見鉄道の車内
北方町と本巣市の境界から本巣市側にすぐの場所には樽見鉄道北方真桑駅があり、駅舎の正面にある丸形ポストが印象的です。北方町とその周辺には計7本の丸形ポストが残っており、岐阜市などと比べて顕著に多いとのこと。角型ポストに変えられずに残った理由は不明だそうですが、北方町文化財保護協会が丸形ポストの所在地図を発行しています。
列車内は閑散としていると予想していましたが、立ち客もいる混み具合でした。私が乗車した北方真桑駅は私立岐阜第一高校と岐阜県立本巣松陽高等学校の最寄駅で、特に岐阜第一高校の生徒が多いようです。