（写真）金華山とその周辺。左下の市街地が金華地区。
2020年（令和2年）3月7日、岐阜県岐阜市で開催されたイベント「路地と猫」に参加しました。
1. 金華地区を訪れる
1.1 イベント「路地と猫」
2020年（令和2年）3月7日はインターナショナルオープンデータデイ2020（IODD 2020）であり、世界各地でオープンデータに関するイベントが開催されました。岐阜市ではCODE for GIFUが岐阜市内の地域猫を探してアプリ「ロジねこ」に登録する「路地と猫」を開催しています。ぎふメディアコスモスに集合してアプリや地域猫に関する説明を聞いた後、水道山のふもとの粕森公園まで歩き、さらに御鮨街道などを通って伊奈波神社の境内下に向かいました。
歩いた範囲は金華地区と呼ばれる地域です。金華地区の北部は岐阜空襲を免れたようであり、戦前に建てられた民家や商店などが多く残っています。岐阜市によって景観計画重要区域に指定されており、屋外広告物の掲出などが規制されています。特に白木町には古い町並みが残っており、御鮨街道の西側には登録有形文化財の旧松喜仏壇店もありました。周辺の建物と比べても目立たず、御鮨街道の東側の街並みに気を取られていると見落としてしまいそうなくらい小さな建物です。
1.2 岐阜市の映画史
近世の岐阜の市街地は現在の金華地区であり、芝居小屋などが並ぶ娯楽の中心は伊奈波神社周辺でした。1896年（明治29年）11月に神戸市で日本初の活動写真の上映が行われると、1897年（明治30年）7月には伊奈波の芝居小屋「国豊座」で、岐阜市初の活動写真の上映が行われました。しかし、1912年（明治45年）には伊奈波ではなく柳ケ瀬に岐阜市初の常設映画館「電気館」が開館し、大正時代には柳ケ瀬が岐阜市を代表する繁華街になったようです。
1945年（昭和20年）には柳ケ瀬が岐阜空襲で焼失した一方で、金華地区北部は戦災を免れます。しかし、娯楽の中心が柳ケ瀬から金華地区に戻ることはありませんでした。1922年（大正11年）から白木町にあった映画館「松竹館」は、戦後の金華地区唯一の映画館ですが、映画黄金期を迎える前の1950年（昭和25年）にはもう閉館しています。
（写真）白木町の御鮨街道東側の街並み。
（写真）白木町の御鮨街道西側にある旧松喜仏壇店。登録有形文化財。
2. 金華地区の映画館
2.1 松竹館（1923年-1950年）
所在地 : 岐阜県岐阜市白木町（1936年）
開館年 : 1923年
閉館年 : 1950年
1930年の映画館名簿には掲載されていない。1936年の映画館名簿では「松竹館」。1950年の映画館名簿には掲載されていない。跡地は「白木町公園」。最寄駅は名鉄名古屋本線・各務原線名鉄岐阜駅。
『岐阜町金華の誇り ふるさと岐阜・魅力発見大作戦』によると、映画館「松竹館」の跡地は白木町公園がある場所です。この場所には近代の一時期に岐阜市役所が置かれていました。1922年（大正11年）には岐阜市役所跡地に株式会社松竹座が設立され、現在の岐阜県営白木町住宅の場所（敷地東側）に演劇場「松竹座」が、現在の白木町公園の場所（敷地西側）に映画館「松竹館」が開館した、とされています。『岐阜町金華の誇り-』では演劇場と映画館が異なる建物だったように書かれていますが、本当に演劇場と映画館で2施設もあったのでしょうか。
松竹座（演劇場）は1945年（昭和20年）に強制疎開で取り壊されたとのことです。道路側にあった松竹館ではなく奥にあった松竹座が取り壊されたことは理解に苦しみます。『岐阜町金華の誇り-』以外にも松竹館について言及している文献を見つけたいところです。
（写真）白木町公園と岐阜県営白木町住宅。
なお、映画館「松竹館」の閉館は1950年（昭和25年）とされています。1950年代後半の映画黄金期に差し掛かる前には閉館しており、以後は金華地区に映画館が復活することはありませんでした。戦後の岐阜市の映画館街と言えば柳ケ瀬ですが、戦後の金華地区も一定程度のにぎわいがあったはずであり、昭和30年代以降に映画館が1館もなかったというのはやや驚きです。
（写真）松竹館跡地周辺。国土地理院 地理院地図
