振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

トヨテック本社社屋を訪れる

(写真)トヨテック本社社屋。

2023年11月25日(土)、愛知県豊川市西豊町にある「トヨテック本社社屋」(旧豊川電話中継所本屋)を訪れました。愛知登文会などが主体となって毎年開催されているあいちのたてもの博覧会(あいたて博)の見学会です。同日午後にはやはりあいたて博の見学会で豊橋市民俗資料収蔵室 ふるためを訪れています。

 

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1. 旧豊川電話中継所

1.1 建物の歴史

トヨテック本社社屋は1928年(昭和3年)に豊川電話中継所本屋として建てられた近代建築です。逓信建築としては郵便局(例として重要文化財の宇治山田郵便局)、電話局(例として近代化産業遺産の門司電気通信レトロ館)などがありますが、主として機械が置かれていたのが中継所です。

1927年(昭和2年)に東京~神戸間に装荷長距離ケーブルを用いた市外電話が開通した際、横浜、足柄、江尻、見附、豊川、名古屋、亀山、膳所、大阪の9か所に置かれた中継所のひとつです。建物の設計者は不明だそう。1952年(昭和27年)4月には中継所としての役割が廃止され、1964年(昭和39年)7月には電電公社から豊川商工会議所に譲渡されて豊川商工会館に転用されました。

その後取り壊されそうになった際、1985年(昭和60年)には総合光学レンズメーカーのトヨテックが豊川市から建物を購入し、屋根や壁面の修復を行った上で社屋に転用しています。2007年(平成19年)に登録有形文化財に登録されています。

(写真)建物の南面。

(写真)建物の東面の意匠。

 

1.2 建物の意匠

旧豊川電話中継所の意匠はモダンルネサンス様式とされています。建物は大きく南側と北側に分かれており、中央に玄関・階段・塔屋があります。北側部分の1階には展示室がありますが、その上の2階は商工会館に転用された際に増築されたようです。

(写真)玄関がある建物の東面。

(写真)2階部分が増築された建物北側。

 

2. トヨテック本社社屋を訪れる

2.1 展示室(1階)

1階には電力室や電池室(現在の事務室)、宿直室・修繕室(現在の展示室)、2階には機械室・事務室(現在の会議室)などがあったようです。展示室には製造している製品などが並べられていました。

(写真)展示室(旧宿直室・修繕室)。

 

2.2 会議室(2階)

トヨテックの全体会議などが行われている会議室には、かつて高さ3.0メートルの中継器が並んでいたようです。機械室から会議室への全く異なる用途への転用ですが、窓が写っていない写真だと近代建築だとわからないくらい違和感がありません。

(写真)会議室(旧機械室)。

(写真)会議室(旧機械室)。

(写真)会議室(旧機械室)。

 

2.3 階段

(写真)階段。

(写真)階段。

(写真)大理石の手すり。

 

2.4 屋上

トヨテック本社社屋は2階建て+塔屋ですが、機械室が主役だったことで特に2階部分が高く、「4階建てに近い高さがある」とのことでした。豊川市中心市街地である表参道からは約600メートル離れており、周囲にはトヨテック本社社屋より低い住宅ばかり。都市の中心にある一般的な逓信建築とはかなり立地が異なると感じました。屋上からは豊川稲荷の広大な寺叢などが見えます。

(写真)屋上。

(写真)塔屋。

(写真)あいたて博における建物解説。

 

2.5 倉庫(敷地内)

敷地内にあるトヨテック本社倉庫(旧豊川電話中継所倉庫)も登録有形文化財に登録されています。社屋の塔屋は外側にアールを描いていますが、倉庫は社屋の塔屋と対になるようなデザインです。敷地奥側の半分はある時点で取り壊されたようです。

(写真)倉庫。

(写真)西側半分が取り壊されている倉庫。