(写真)三田市立図書館。
2023年(令和5年)9月、兵庫県三田市を訪れました。「三田市を訪れる」からの続きです。「三田市の映画館」に続きます。
1. 三田市立図書館を訪れる
1.1 図書館の歴史
三田市は兵庫県北摂地域の端にある人口約10万人の自治体。1980年代以降に北摂三田ニュータウンが開発され、自治体人口の半分がニュータウンに住んでいます。1987年(昭和63年)から1996年(平成8年)まで、10年連続で人口増加率が日本一を記録。自治体の様相が激変する最中、1990年(平成2年)に三田市初の公共図書館として開館したのが三田市立図書館です。
(写真)三田市の人口の推移。1980年代後半から90年代後半の人口増加が著しい。三田市人口ビジョン。
愛知県では刈谷市中央図書館や犬山市立図書館が三田市立図書館と同じ1990年(平成2年)の開館。三田市のように大都市のベットタウンとしての宅地化が激しかった自治体では、2年後の1992年(平成4年)に長久手町中央図書館(現・長久手市中央図書館)が開館しています。三田市立図書館の本館は旧市街地に建てられましたが、2005年(平成17年)にはニュータウンに分館も開館しています。
(写真)三田市立図書館と同年に開館した図書館。(左)刈谷市中央図書館の郷土参考資料室。(右)犬山市立図書館。
1.2 図書館の館内
三田は三田城の城下町として発展した町であり、旧武家地には擬洋風建築の旧九鬼家住宅など歴史を感じさせる建物が残っています。三田市立図書館は鉄筋コンクリート像ですが、屋根は寄棟で和風建築をイメージしているようです。
館内の入口近く、雑誌・新聞・視聴覚の各コーナーの上部は吹き抜けになっていて開放感があります。2階を見上げるとラウンジという名前の学習エリアがあります。1階は書架や閲覧席、2階は学習エリアというすみ分けがなされていますが、学習者を学習室に押し込める形にしなかったのは好みです。
展示コーナーの奥には公衆電話ボックスがありました。公衆電話を設置している公共図書館はどんどん減っているのではないでしょうか。名古屋市図書館の公式サイトを見たところ、名古屋市では全21館中4館に設置されているだけのようです。
(写真)公衆電話ボックス。
1990年(平成2年)に開館した際の新聞記事によると、三田市立図書館は兵庫県で初めてCDの貸し出しサービスを導入したとのこと。CDの書架はカウンター前の一等地にあり、開館時から動かされていないと思われます。ジャンル分けのラベルは新しく、現在もCDの利用は多いのでしょうか。一度も公共図書館でCDを借りたことがないのですが、年代によってはまだ利用されているのかな。
(写真)CDの書架。
(写真)CDの書架。
児童書の書架と一般書の書架の間にはきちんとした区切りがないのですが、調査相談室は扉こそないものの壁で仕切られています。前述の刈谷市中央図書館は郷土参考資料室を別フロアに配置しており、明確な用事がないと入りづらい雰囲気になってしまっている。三田市立図書館のフロアの使い方は好きです。なお、三田市立図書館は1991年(平成3年)に日本図書館協会建築賞 - Wikipediaを受賞しています。
図書館公式サイトでPDFが公開されている『図書館年報 令和4年度』には様々な統計が載っていますが、2022年度の調査相談室の入室者は4231人、レファレンス総数は271件、うち郷土に関するものは50件ということで、郷土に関するレファレンス数を集計している点が目につきました。