2022年(令和4年)4月、三重県桑名市多度町(旧・桑名郡多度町)を訪れました。なお、多度町に映画館はありませんでした。
1. 多度町を訪れる
1.1 多度駅周辺
多度駅前
多度町は多度大社の鳥居前町として栄えた町であり、2004年(平成16年)に(旧)桑名市と合併して(新)桑名市となっています。伊勢国二宮・名神大社である多度大社は、「お伊勢参らばお多度もかけよ、お多度かけねば片参り」と言われるほどであり、伊勢神宮の参拝者の多くが立ち寄ったようです。東海道の宿場だった桑名宿からは約8km北にあり、揖斐川西岸(右岸)を通る美濃街道で結ばれていました。
1895年(明治28年)には関西鉄道(現・JR関西本線)桑名駅が開業し、1919年(大正8年)には美濃街道沿いに養老鉄道多度駅が開業。多度駅は多度大社から約1.5km離れており、新たに多度駅前商店街も形成されました。
(写真)多度駅前商店街。中央は寝具店のカサイ本店。
(写真)多度駅前商店街。中央は寝具店のカサイ本店。
(写真)ヤマザキショップの看板があるビル。
多度郷土館
多度川沿いには近代建築の多度郷土館があります。1933年(昭和8年)に多度村立多度尋常高等小学校として竣工した建物ですが、崖下の窮屈な敷地にあることに違和感を覚えます。見学には教育委員会の許可がいる施設であり、文化財指定・登録などもなされていません。
(写真)多度郷土館。
(左・右)多度郷土館。
1.2 多度大社の門前通り
(写真)ふるさと多度文学館などがある高台から見た多度山。
多度道
美濃街道から分岐して多度大社に至る道路は多度道と呼ばれているようで、多度大社の参詣者をあてにした土産物店などが並んでいます。門前には料理店の紅葉屋や和菓子屋の丸繁が、多度道の中間付近には鯉料理屋の大黒屋や豆菓子屋の桔梗屋などがありました。
(写真)紅葉屋付近。
(左)紅葉屋。(右)紅葉屋の正面にある建物。
(写真)紅葉屋の東にある建物。
(写真)紅葉屋の東にある建物。
(写真)桔梗屋。
(写真)西大黒屋など。
(写真)桔梗屋や西大黒屋付近。
(写真)桔梗屋の正面にある建物。
大黒屋
鯉料理店の大黒屋 (桑名市) - Wikipediaは享保年間(1710年~1736年)創業という老舗。多数の著名人が訪れており、食通で知られる作家の池波正太郎は『食卓の情景』で以下のように書いています。
私もずいぶん、鯉料理を食べてきたが、これほどに多彩な料理ができようとは思ってもいなかった。おそらく、この『大黒屋』にしてはじめて出来得る『芸』なのではあるまいか。こころみに、献立をしるしておこう。すべてが鯉料理である。まず、鯉の皮をそぎとり、はるさめと共に酢の物にした前菜が出た。鯉の皮が、これほど脂濃いものとは知らなかった。うまい。…
2017年(平成29年)のTBS系ドラマ『LEADERS 2』や2019年(令和元年)の映画『アルキメデスの大戦』でロケ地となっています。2019年(令和元年)の『ミシュランガイド東海版・愛知(名古屋)2019』ではミシュランプレート(ミシュランの基準を満たした料理)に選定されています。
(写真)大黒屋。
(左・右)大黒屋。
1.3 ふるさと多度文学館
桑名市は(旧)桑名市・多度町・長島町の1市2町が合併してできた自治体であり、多度町と長島町はそれぞれ立派な図書館を有しています。多度町の分館は複合施設のような名称ですが、実質的には図書館単独施設です。郷土資料は多度町/桑名市/三重県のものがひとまとめにされており、多度大社に由来する歴史ある自治体としてはやや残念でした。
カウンター前には北村けんじコーナーがありました。児童文学作家の北村けんじは長らく多度町に住んで教員生活を送っており、多度町立多度中(たどなか)小学校でも校長を務めたそうです。桑名市立中央図書館の「歴史の蔵」(郷土資料室)には北村から寄贈された児童文学関連書などを集めた北村文庫があります。
(写真)ふるさと多度文学館。
(左)入口前にある花時計。(右)敷地内にある三重塔。