(写真)那智勝浦町立図書館。
2021年(令和3年)10月、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町の紀伊勝浦を訪れました。「紀伊勝浦を訪れる」からの続きです。「紀伊勝浦の映画館」に続きます。
1. 那智勝浦町立図書館
1.1 図書館の歴史
那智勝浦町立図書館は1979年(昭和54年)4月17日に開館した図書館です。和歌山県の郡部では1908年(明治41年)創立(注)の湯浅町立図書館 - Wikipediaが際立って古く、次いで1977年(昭和52年)創立の白浜町立図書館、1979年(昭和54年)創立の那智勝浦町立図書館、1980年(昭和55年)創立の上富田町立図書館と続きますが、図書館条例制定では那智勝浦町立図書館が2番目となります。
坂の上にある建物の延床面積は530m2。2018年度末の蔵書冊数は約4万2000冊、2018年度の貸出冊数は約3万4000冊。1人あたり貸出冊数は2.6冊/年であり、和歌山県の平均とくらべてもかなり低い数値だと思われます。
(注)『和歌山県の公共図書館・図書室』では湯浅町立図書館の創立年は1954年とされている。
(写真)那智勝浦町立図書館の入口。右側の『考える人』は公式サイトにも登場する。
那智勝浦町立図書館は2018年(平成30年)4月に図書館システムを導入し、コンピュータを用いた蔵書検索などが利用可能となりました。カメレオンコード(二次元カラーコード)による蔵書管理システムを全面的に導入したのは全国の図書館で3番目とのこと。カメレオンコードはICタグとどう異なるのか気になります。
(写真)那智勝浦町立図書館公式サイトにおけるカメレオンコードの説明。
それまではブックカードを用いた貸出が行われていたようですが、2021年(令和3年)現在の公共図書館でカード目録書架やブックカードを見る機会は少ないので新鮮でした。
(写真)2018年で止まっているブックカード。
(写真)2018年以後は使用されていないカード目録書架。
1.2 図書館の館内
図書館の1階は児童開架室や郷土資料室や事務室であり、複数の小さな部屋からなります。2階は一般開架室であり、大きな空間の南側半分は自習もできる閲覧席となっています。雑誌と新聞の双方を収められる書架は初めて見ましたが、狭い館内を有効活用できるいい書架だと思いました。
(写真)2階の閲覧席。
(写真)1階の新聞・雑誌コーナー。
テーマ展示としては「2021 本屋大賞」や「実は和歌山」などがありました。テーマ展示「実は和歌山」には、郷土資料とするほどではないけれど和歌山県に関する文章が掲載されている本が集められています。
(写真)テーマ展示「2021 本屋大賞」。
(写真)テーマ展示「実は和歌山」。
ラベルの最上部には十進分類法に基づく数字などが割り当てられているのは他の図書館と同じですが、ラベルの中段には著者それぞれに割り当てられたアルファベット・数字が記されているようです。例えば村上春樹は「M 69」、宮本輝は「M 70」というアルファベット・数字が割り当てられており、"むらかみ" より "みやもと"のほうが後ろというのはちょっとややこしい。
(写真)著者ごとに異なる数字が付けられたラベル。文芸書。ラベル下部に貼られているのはカメレオンコード。
(写真)著者ごとに異なる数字が付けられたラベル。図書館に関する文献。ラベル下部に貼られているのはカメレオンコード。
1.3 郷土資料
熊野の象徴としてヤタガラス(八咫烏)があり、那智勝浦町では2019年(令和元年)に日本ヤタガラス学会の設立総会が開催されています。日本サッカー協会のシンボルマークもヤタガラスですが、これは日本にサッカーを広めた中村覚之助が那智町出身であることに由来するそうです。このため、熊野那智大社ではことあるごとに日本サッカー協会(JFA)関係者による必勝祈願が行われています。
郷土資料室にはサッカーに関する展示ケースがあり、2002年FIFAワールドカップ時の釜本邦茂JFA副会長のサインボール、2010年FIFAワールドカップ時の岡田武史監督のサインボール、2011年アジアカップ優勝時のトロフィーのレプリカ、2015年FIFA女子ワールドカップ時の佐々木則夫監督のサインボール、同大会優勝後に澤穂希主将が熊野那智大社を参拝した際の写真などが展示されていました。
(写真)郷土資料室。
(写真)サッカーに関する展示ケース。
(左)熊野那智大社などに関する書架。(右)漁業などに関する書架。