振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

石川県立図書館を訪れる

(写真)円形に配置された書架。

2022年7月16日(土)、石川県金沢市小立野の新・石川県立図書館を訪れました。

 

1. 石川県立図書館

1.1 旧館と新館

1966年(昭和41年)竣工の旧館は金沢21世紀美術館の近くにありました。階段が多い建物にはそれなりに古さを感じるものの、閲覧室には新しい書架が並んでいました。

(写真)本多町にあった旧館。2018年5月。(左)外観。(右)閲覧室。

(写真)本多町にあった旧館。2018年5月。(左)1階ロビー。(右)新聞コーナー。

(写真)本多町にあった旧館。2018年5月。(左)新着図書や蔵書検索機。(右)郷土資料。

 

旧館の老朽化や狭隘化が著しいことから移転が検討され、金沢大学工学部跡地の郊外に新館を建設。新館はこの7月16日に開館しました。

開館日の7月16日、開館翌日の7月17日のいずれも、北國新聞の1面トップは県立図書館の新館について。北國新聞には4ページに及ぶ全面広告が掲載されたほか、記事でもまず資料総合検索システム「SHOSHO」について言及しており、県立図書館への期待の高さがうかがえます。北陸中日新聞や全国紙も閲覧しましたが、北國新聞と比べると県立図書館への言及が控え目。北國新聞は毎日の1面トップに地域ネタを持ってくる新聞のようです。

(左)開館翌日の7月17日の北國新聞1面。(右)新館の開館を伝えるチラシ。

 

1.2 特色

旧館時代の県立図書館には3度訪れて郷土資料の調査を行いましたが、いずれの日も館内は閑散としており、金沢21世紀美術館兼六園がすぐ近くにあるのが嘘のようでした。

新館の円形の部分はあらゆるメディアに取り上げられており、これまで県立図書館を利用しなかった層に対して強い印象を与えています。開館日の新館を訪れていたのは親子連れや若者が多く、旧館とは利用者層ががらっと変わっているのではないかと思います。

(写真)石川県立図書館の外観。

(左)円形の吹き抜けが見えるフロアマップ。(右)利用案内。

 

建物の設計は仙田満代表の環境デザイン研究所。円形劇場をモチーフとした中心部が最大の特徴であり、吹き抜けの周囲に円形に配置された書架が並んでいます。30万冊という開架冊数も売りのようで、福井県立図書館や金沢市立泉野図書館と同等だそう。水戸市立西部図書館などとは違って箱形の建物なので、多くの書架は吹き抜け部分から見えない空間に並んでいます。

(写真)円形に並べられた書架。

 

「世界に飛び出す」「文学に触れる」「子どもを育てる」などといった独自分類が売りらしく、書架が円形に配置された部分には独自分類による12のテーマが並んでいます。ただし、独自分類が活きるのは小規模館であると感じているし、また、都道府県立図書館が独自分類を採用することには疑問もあります。

(写真)独自分類「好奇心を抱く」で並べられた部分の書架。

(写真)複雑なラベルとなった独自分類部分の図書。

 

1.3 書架・閲覧席

書架が円形に配置されている点で雰囲気が似ているのは国際教養大学中嶋記念図書館ですが、あちらは円形ではなく半円形。完全な円形の図書館としては水戸市立西部図書館がありますが、石川県立図書館水戸市立西部図書館と同様に、自分のいる場所がわかりにくいと感じます。天井からは東西南北を示す幕が吊り下げられており、東西南北でテーマカラーを変えているとのことですが、それでもわかりにくい。

(写真)3階の書架。

(写真)吹き抜けの周囲にある閲覧席。

 

(写真)236 スペインの書架。市町村立図書館とはどう違うだろう。

(写真)館内に多数並べられている伝統工芸品。左は石川コレクション。

(写真)蔵書検索機や座席予約機があるセルフステーション。

(写真)閲覧席。

(写真)閲覧席。

(左・右)閲覧席。

(写真)吹き抜け部分の天井。東西南北を示す幕がある。

 

1.4 郷土資料

開館当初の都道府県立図書館を訪れたのは初めてです。開架冊数を考えると開架の郷土資料が少なく見えたし、その他の書架を見ても県立図書館の新館なのか金沢市立図書館の新館なのかわからないように思えました。

蔵書検索機で表示される蔵書の位置表示は改善の余地があります。START(現在地)とGOAL(目的の書架の位置)で蔵書の位置が示されていますが、そもそも表示が小さい上に、立体感のないマップなのが分かりづらさに拍車をかけています。

住宅地図は旧館時代から変わらず開架にありますが、中部地方都道府県立図書館としては石川県立図書館だけではないでしょうか。中部地方都道府県立図書館では住宅地図はすべて閉架近畿地方都道府県立図書館では開架というのが多い。

(写真)蔵書検索機における書架の位置表示。

(左)開架にある住宅地図。(右)データベースコーナー。

(写真)面展示が並ぶ「ここも石川」。

 

都道府県立図書館は書架を眺めただけでは評価できません。石川県立図書館の売りのひとつである「SHOSHO」は、県内の様々な機関が作成したデータベースを一括検索できるシステムだそう。北國新聞によると、「文字資料にとどまらず、写真や絵図など画像も一括で探せる、全国に比類ないデジタルアーカイブ」だそうです。試しに”映画館”というキーワードを入れてみると322件がヒットし、かほく市立中央図書館がデータを入力した新聞記事見出しなどがヒットしました。

(写真)SHOSHO。

 

1.5 施設

(左)食文化体験スペース。(右)だんだん広場。

(左)モノづくり体験スペース。(右)サイレントルーム。

(左)対面朗読室。(右)資料調査室。

 

(写真)大型遊具があるこどもエリア。

(左・右)こどもエリア。

(写真)カフェ「ハムアンドゴー」。