振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

海老名市の映画館

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(写真)海老名市立中央図書館。2016年11月。

2021年(令和3年)4月、神奈川県海老名市を訪れました。

現在の海老名市には「TOHOシネマズ海老名」と「イオンシネマ海老名」という2つのシネコンがあります。かつて海老名市には映画館「大塚劇場」がありました。

 

1. 海老名市の映画館

1.1 相模座(1926年11月頃-1934年頃)

所在地 : 神奈川県高座郡海老名村中新田(1930年)、神奈川県高座郡海老名村河原口347(1936年)
開館年 : 1926年11月頃
閉館年 : 1933年または1934年頃
1930年・1936年の映画館名簿では「相模座」。1930年の映画館名簿では経営者・支配人ともに清水光雄、定員は記載なし。1936年の映画館名簿では興業主・支配人ともに石川たけ、上映系統は記載なし。

1926年(大正15年)に神中鉄道(現在の相模鉄道)と相模鉄道(現在のJR相模線)が共同で使用する厚木駅が開業。厚木駅周辺は厚木町との経済圏の一体化が進み、「東厚木」と呼ばれて栄えた厚木駅近くに開館したのが、映画を中心に興行を行っていた「相模座」です。現在の海老名市街地の規模を考えると、戦前の海老名に劇場があったのは意外。1930年や1936年の映画館名簿には海老名町の相模座のほかに、厚木町の厚木キネマも掲載されています。

「相模座」に言及している雑誌論文として飯田孝「昭和初期における海老名市河原口の変貌 『東厚木』の呼称と劇場『相模座』を中心に」『えびなの歴史』、2005年、第15号があります。

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(写真)相模座が掲載されている1930年の映画館名簿。『日本映画事業総覧(昭和5年版)』 国際映画通信社、1930年。国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開。

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(写真)相模座が掲載されている1936年の映画館名簿。『全国映画館録 昭和11年度』キネマ旬報社、1935年。国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開。

 

1.2 大塚劇場(1972年頃-1976年頃)

所在地 : 神奈川県海老名市(1976年)
開館年 : 1972年頃
閉館年 : 1976年頃
1971年の映画館名簿には掲載されていない。1973年・1974年・1975年・1976年の映画館名簿では「大塚劇場」。1975年の映画館名簿では経営者・支配人ともに小金井伝次郎、木造1階、260席、邦画を上映。1977年の映画館名簿には掲載されていない。跡地は「平塚信用金庫海老名支店」。最寄駅は相鉄本線さがみ野駅

昭和30年代の映画黄金期の高座郡海老名町(現・海老名市)には映画館がありませんでしたが、映画館名簿を見ると1970年代の短期間だけ「大塚劇場」という映画館が掲載されています。なお、高座郡海老名町は1971年(昭和46年)に市制施行して海老名市となっていますが、1973年(昭和48年)から1976年(昭和51年)の映画館名簿ではいずれも所在地が「高座郡海老名町」と誤記されています。

海老名市立中央図書館にレファレンスしたところ、海老名市立歴史資料収蔵館と郷土史家の方に連絡してくださり、郷土史家の方は「大塚劇場」があったことを知っていたようです。その所在地は現在の「海老名市東柏ケ谷2丁目2-11」とのことで、大塚本町交差点に近いこの場所には平塚信用金庫海老名支店があります。

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(写真)大塚劇場が掲載されている1974年の映画館名簿。『映画年鑑 1974年版別冊 映画館名簿』時事映画通信社、1973年。

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(地図)大塚劇場の位置。

 

1.3 イオンシネマ海老名(1993年4月24日-営業中)

所在地 : 神奈川県海老名市中央2-4-1 イオン海老名店2階(2020年)
開館年 : 1993年4月24日
閉館年 : 営業中
1990年の映画館名簿には掲載されていない。1995年・2000年・2005年・2010年の映画館名簿では「ワーナー・マイカル・シネマズ海老名1-7」(7館)。2015年・2020年の映画館名簿では「イオンシネマ海老名1-7」(7館)。

2021年(令和3年)、神奈川県厚木市大和市を訪れました。厚木市大和市はいずれも人口20万人強の特例市ですが、両市内にシネコンはなく、両市の間にある海老名市に「イオンシネマ海老名」と「TOHOシネマズ海老名」があります。イオンシネマ海老名の前身はワーナー・マイカル・シネマズ海老名であり、1993年(平成5年)4月24日に「日本初の本格的シネコン」として開館した歴史ある映画館です。

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(写真)イオンシネマ海老名に改称する直前のワーナー・マイカル・シネマズ海老名。Thirteen-fri - CC BY=SA 3.0 - Wikimedia Commons

 

1.4 TOHOシネマズ海老名(2002年4月19日-営業中)

所在地 : 神奈川県海老名市中央1-18-1 ビナウォーク内(2020年)
開館年 : 2002年4月19日
閉館年 : 営業中
2000年の映画館名簿には掲載されていない。2005年・2010年・2015年・2020年の映画館名簿では「TOHOシネマズ海老名1-10(10館)。

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(写真)TOHOシネマズ海老名があるビナウォークretropolis - PD - Wikimedia Commons

 

海老名市の映画館について調べたことは「神奈川県の映画館 - 消えた映画館の記憶」にまとめており、跡地については「消えた映画館の記憶地図(神奈川県版)」にマッピングしています。

hekikaicinema.memo.wiki

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