振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

佐賀市の映画館(3)

(写真)シアター・シエマ。

2022年(令和4年)3月、佐賀県佐賀市を訪れました。

かつて佐賀市には多数の映画館がありました。「佐賀市の映画館(1)」と「佐賀市の映画館(2)」からの続きです。

 

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2. 佐賀市の映画館

2.13 佐賀東宝劇場(1939年10月-1996年頃)

所在地 : 佐賀県佐賀市松原2-14-16(1996年)
開館年 : 1939年10月
閉館年 : 1996年頃
『全国映画館総覧 1955』によると1939年10月開館。1943年・1950年・1953年の映画館名簿では「東宝映画劇場」。1955年・1958年・1960年・1963年の映画館名簿では「佐賀東宝映劇」。1966年・1969年の映画館名簿では「佐賀東宝映画劇場」。1973年・1980年・1985年・1990年の映画館名簿では「佐賀東宝劇場」。1995年の映画館名簿では「佐賀セントラル劇場」。後継施設はセントラルプラザ。

佐賀東宝劇場は松原地区に初めて開館した映画館です。1996年(平成8年)頃に取り壊され、跡地には3階建てビルのセントラルプラザが建ちました。セントラルプラザでは2006年(平成18年)まで有楽商事の佐賀セントラル(3スクリーン)が営業していましたが、2007年(平成19年)からはコミュニティシネマのシアター・シエマ(2スクリーン)が営業しています。

(地図)『大日本職業別明細図之内 佐賀県』1928年。佐賀県立図書館古地図・絵図データベース

(地図)『最新佐賀市内地図』日本警察新聞佐賀支局、1948年。佐賀県立図書館古地図・絵図データベース

(左)1957年の佐賀東宝劇場。(下)1955年の佐賀東宝劇場。いずれも『佐賀・小城・多久の今昔』郷土出版社、2012年。佐賀県立図書館所蔵。

(写真)セントラルプラザ。

2.14 セントラルシネマ(1959年3月15日-2000年頃)

所在地 : 佐賀県佐賀市中央本町10-1(2000年)
開館年 : 1959年3月15日
閉館年 : 2000年頃
1958年の映画館名簿には掲載されていない。1960年・1963年の映画館名簿では「佐賀日活」。1966年・1969年・1973年・1975年の映画館名簿では「佐賀日活劇場」。1980年の映画館名簿では「佐賀にっかつ」。1985年の映画館名簿では「佐賀にっかつ劇場」。1990年の映画館名簿では「ロッポニカ佐賀」。1995年・2000年の映画館名簿では「佐賀セントラルシネマ」。2001年の映画館名簿には掲載されていない。建物名はセントラルパレス。跡地は商業ビル「セントラルパレス」。

1959年には松原地区に日活直営館の佐賀日活劇場が開館し、日活の変遷に合わせて1978年(昭和53年)頃には佐賀にっかつ、1988年(昭和63年)頃にはロッポニカ佐賀と名を変えます。1990年代前半には有楽商事の経営に変わり、2000年(平成12年)頃に閉館しました。

(写真)佐賀日活劇場が開館する際の短報。『キネマ旬報』1959年4月1日、229号。愛知県図書館所蔵。

(写真)1960年の佐賀日活劇場。『佐賀・小城・多久の今昔』郷土出版社、2012年。佐賀県立図書館所蔵。

(写真)『ゼンリンの住宅地図』ゼンリン、1985年。佐賀県立図書館所蔵。

(写真)『ゼンリンの住宅地図』ゼンリン、1995年。佐賀県立図書館所蔵。

(写真)『ゼンリンの住宅地図』ゼンリン、2005年。佐賀県立図書館所蔵。

(写真)セントラルシネマ跡地のセントラルパレス。

(写真)セントラルシネマ跡地のセントラルパレス。

2.15 セントラル会館(1985年-2006年8月31日)

所在地 : 佐賀県佐賀市松原2-11-6(2006年)
開館年 : 1985年
閉館年 : 2006年8月31日
1986年の映画館名簿では「佐賀有楽会館・佐賀オスカー・佐賀スカラ座・佐賀セントラル劇場」(4館)。1990年の映画館名簿では「佐賀東映劇場・佐賀有楽劇場・佐賀スカラ座・佐賀セントラル劇場」(4館)。1995年の映画館名簿では「佐賀東映劇場・佐賀東宝劇場・佐賀有楽劇場・佐賀スカラ座」(4館)。2000年の映画館名簿では「佐賀東宝劇場・佐賀有楽劇場・佐賀スカラ座・佐賀スカラ座2」(4館)。2005年・2006年の映画館名簿では「佐賀有楽劇場・佐賀スカラ座・佐賀スカラ座2」(3館)。2008年の映画館名簿には掲載されていない。建物名はセントラル会館。建物のセントラル会館は現存。

1955年(昭和30年)頃に建てられた佐賀有楽会館を有楽商事が建て替える形で、1985年(昭和60年)には7階建てのセントラル会館が開館します。1階・3階・5階・7階に映画館が入る計4スクリーンの映画館ビルであり、それぞれ240席~300席を有していました。

有楽商事が経営する映画館の他には、隣接地にあった東映直営館の佐賀東映劇場もセントラル会館に移転しています。2006年(平成18年)には有楽商事が経営するセントラル会館とセントラルプラザが揃って閉館し、松原地区から映画館がなくなります。

(左)『ゼンリンの住宅地図』ゼンリン、1985年。(右)『ゼンリンの住宅地図』ゼンリン、1985年。いずれも佐賀県立図書館所蔵。

(写真)セントラル会館。

(左)セントラル会館のエレベーター。(右)セントラル会館5階。

(写真)セントラル会館5階のスカラ座1跡地。

(写真)セントラル会館5階のスカラ座1跡地。

2.16 セントラルプラザ(1996年7月-2006年8月31日)

所在地 : 佐賀県佐賀市松原2-14-16(2006年)
開館年 : 1996年7月
閉館年 : 2006年8月31日
1998年・2000年・2002年・2005年・2006年の映画館名簿では「佐賀セントラル1・2・3」(3館)。建物のセントラルプラザはシアター シエマとして現存。

戦前の1939年(昭和14年)に開館した東宝映画劇場(後の佐賀東宝劇場)を建て替え、1996年(平成8年)に3階建てビルとして開館したのがセントラルプラザです。建て替え前は252席の1スクリーンでしたが、建て替えによって124席・125席・80席の3スクリーンとなっています。2006年(平成18年)には有楽商事による経営が終了しますが、2007年(平成19年)には有限会社69'nersFILMによるシアター・シエマとして復活することになります。

(左)『ゼンリンの住宅地図』ゼンリン、1985年。(右)『ゼンリンの住宅地図』ゼンリン、1995年。いずれも佐賀県立図書館所蔵。

(写真)『ゼンリンの住宅地図』ゼンリン、2005年。佐賀県立図書館所蔵。

(写真)セントラルプラザ。

 

2.17 イオンシネマ佐賀大和(2001年7月20日-営業中)

所在地 : 佐賀県佐賀市大和町尼寺2965番 イオンモール佐賀大和内(2020年)
開館年 : 2001年7月20日
閉館年 : 営業中
2000年の映画館名簿には掲載されていない。2002年・2005年・2010年の映画館名簿では「イオンシネマ佐賀大和1-8」(8館)。2015年・2020年の映画館名簿では「イオンシネマ佐賀大和 シネマ1-8」(8館)。

佐賀県で初めて開館したシネコンは、1996年(平成8年)9月に開館したワーナー・マイカル・シネマズ上峰です。同年4月に開館した福岡市のAMCキャナルシティ13(現・ユナイテッド・シネマ)について九州2番目のシネコンであり、福岡県久留米市なども含めた筑紫平野全域を商圏としていました。佐賀県で2番目のシネコンイオンシネマ佐賀大和であり、開館時の住所は佐賀市ではなく佐賀郡大和町です。

WMC上峰は『タイタニック』(1997年)や『もののけ姫』(1997年)などの大作を "シネコンで" 観る文化を定着させた映画館だと思われますが、より新しいシネコンに証券を奪われ続けた結果、2010年(平成22年)に閉館しています。

(写真)イオンモール佐賀大和。Pekachu - Wikimedia Commons

2.18 109シネマズ佐賀(2006年11月-営業中)

所在地 : 佐賀県佐賀市巨勢町牛島717 モラージュ佐賀2階(2020年)
開館年 : 2006年11月
閉館年 : 営業中
2006年の映画館名簿には掲載されていない。2008年・2010年・2015年・2020年の映画館名簿では「109シネマズ佐賀1-10」(10館)。

イオンシネマ佐賀大和は佐賀市中心市街地の北5kmにありますが、中心市街地の東2kmにあるのが109シネマズ佐賀です。佐賀市だけではなく、福岡県大川市柳川市から最も近いシネコンでもあるようです。

(写真)モラージュ佐賀。STA3816 - Wikimedia Commons

2.19 シアター・シエマ(2007年12月15日-営業中)

所在地 : 佐賀県佐賀市松原2-14-16 セントラルプラザ3階(2020年)
開館年 : 2007年12月15日
閉館年 : 営業中
2008年・2010年・2015年・2020年の映画館名簿では「シアター・シエマ1・2」(2館)。

1939年(昭和14年)にはこの場所に東宝映画劇場(後の佐賀東宝劇場)が開館し、後の松原地区の映画館街化の礎となりました。1940年(昭和15年)6月には南側の隣接地に松竹世界館(後の佐賀松竹劇場)が開館、戦後には有楽映劇(後の佐賀有楽会館)と佐賀東映劇場も開館しています。

1996年(平成8年)には有楽商事によって佐賀東宝劇場が3階建てビルに建て替えられ、3スクリーンの佐賀セントラルが開館しました。シネコンの台頭の結果として2006年(平成18年)9月に閉館しますが、2007年(平成19年)12月、佐賀セントラルの施設を用いてミニシアターとして開館したのがシアター・シエマです。有限会社69'nersFILMが運営者となり、3スクリーンだった施設は2スクリーン+カフェスペースとなっています。

(左・右)セントラルプラザの建物入口。

(写真)シエマのカフェスペース。

(写真)シエマのカフェスペース。

(写真)シエマのカフェスペース。

(左・右)シエマのカフェスペース。

 

カフェスペースやソファ席の存在からわかるように、観客同士や観客と映画館の交流場としての機能を意識したタイプのミニシアターであり、優れた映画作品を観客に観させることだけに特化したミニシアターとは大きく異なります。開館した時から一度は訪れてみたい映画館でしたが、開館から15年が経ってようやく念願がかないました。なお、この2022年(令和4年)4月には「シアター・シエマ - Wikipedia」を作成しました。

(写真)シエマのスクリーン。

(写真)シエマの座席。