(写真)Denkikan。
2023年(令和5年)2月、熊本県熊本市を訪れました。熊本市街地にはミニシアター「Denkikan」、成人映画館「桃劇場」、シネコン「TOHOシネマズ熊本サクラマチ」があります。「桃劇場を訪れる」に続きます。
1. 熊本市街地を訪れる
熊本市の人口は約74万人であり、九州では福岡市と北九州市に次いで第3位。路面電車が走っていたり、中心繁華街とJRの拠点駅にふたつの核があるのは鹿児島市と同じですが、繁華街が面的に広がっている鹿児島市と比べると、熊本市は線的に広がっている印象です。
約200mのサンロード新市街、約500mの下通、約300mの上通と、3本計1000mの全蓋式アーケードが逆「L」字型に連なっています。どの全蓋式アーケードも幅員が広く、九州中部の拠点と呼ぶのにふさわしい規模です。
(写真)サンロード新市街。
(写真)下通。
(写真)航空写真における桃劇場とDenkikanの位置関係。
2. 熊本市街地の映画館
2.1 Denkikan(1995年12月23日-営業中)
所在地 : 熊本県熊本市中央区新市街8-2(2020年)
開館年 : 1995年12月23日(建て替え)
閉館年 : 営業中
Wikipedia : Denkikan
1995年12月23日開館。1998年・2000年・2005年の映画館名簿では「熊本松竹1・熊本松竹2・Dennkikan」(3館)。2010年・2015年・2020年の映画館名簿では「Denkikan 1・2・3」(3館)。電気館ビル。最寄駅は熊本市電辛島町電停。
1911年(明治44年)には弁士の窪寺喜之助(窪寺霞山)によって、熊本市初の常設活動写真館として電気館が創業。東京の浅草電気館に倣って全国各地に "電気館" という名称の映画館が開館している時代でした。2年後の1913年(大正2年)には窪寺喜之助によって、福岡市の博多にも電気館が開館しています。
1914年(大正3年)には新市街の現在地に移転。1928年(昭和3年)には3代目のビルに建て替えていますが、このビルは映画館のほかに各種テナントを有し、エレベーターまで備える近代的なビルだったようです。
(写真)電気館が掲載されている1930年の映画館名簿。内外映画事業調査研究所『日本映画事業総覧 昭和5年版』国際映画通信社、1930年。国立国会図書館デジタルコレクション。
(写真)松竹キネマ封切場時代の電気館。『図説 熊本・わが街』熊本日日新聞情報文化センター、1988年。
(地図)大正・昭和戦前期の中心市街地の娯楽施設。『図説 熊本・わが街』熊本日日新聞情報文化センター、1988年。
新市街は映画館街としての性格を強めていき、1979年(昭和54年)に全蓋式アーケードが設置された時点では、熊本市の15館中11館もの映画館が新市街にありました。
(写真)昭和30年代の新市街。中央右奥に電気館が見える。『熊本市の昭和』樹林舎、2017年。
(地図)電気館や熊本東映が描かれている1966年の住宅地図。
(写真)1982年のサンロード新市街。『熊本市の昭和』樹林舎、2017年。
1995年(平成7年)には同一地点で建て替え、現在も電気館ビルの3館が営業中です。経営者は窪寺喜之助のひ孫にあたる窪寺洋一であり、100年以上同一経営体で継続しているのが凄い。2023年(令和5年)2月にはDenkikan - Wikipediaを加筆しました。
(写真)Denkikanが入る電気館ビル。
(写真)Denkikanの入口。
2.2 TOHOシネマズ熊本サクラマチ(2019年9月14日-営業中)
所在地 : 熊本県熊本市中央区桜町3-10 サクラマチクマモト4階(2022年)
開館年 : 2019年9月14日
閉館年 : 営業中
2015年の映画館名簿には掲載されていない。2020年・2022年の映画館名簿では「TOHOシネマズ熊本サクラマチ1-9」(9館)。最寄駅は熊本市電辛島町電停。
熊本都市圏におけるシネコンの立地場所と時期を見ると、2004年(平成16年)6月には北部郊外の菊池郡菊陽町にTOHOシネマズ光の森が、同年12月には熊本市街地にシネプレックス熊本(→ユナイテッド・シネマ熊本)が開館。2005年(平成17年)4月には熊本市郊外にTOHOシネマズはませんが、同年10月には南部郊外の上益城郡嘉島町にワーナー・マイカル・シネマズ熊本クレア(→イオンシネマ熊本)が開館。2004年以後の約2年間で4サイトものシネコンが開館しており、一機にシネコン激戦区となっています。
2019年(令和元年)には中心市街地にTOHOシネマズ熊本サクラマチが、2021年(令和3年)にはJR熊本駅のアミュプラザくまもとに熊本ピカデリーが開館し、中心市街地における映画館環境も劇的に向上しました。かつてあった新市街の映画館街に最も近いのがTOHOシネマズ熊本サクラマチであり、中心市街地のにぎわい向上にもつながりそう。
なお、サクラマチクマモトには熊本桜町バスターミナルという高速バスの拠点もあるため、夜行バスに乗車するまでの時間調整として映画鑑賞することもできます。
(写真)TOHOシネマズ熊本サクラマチ。
(写真)サクラマチクマモト。