振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

東京都府中市の映画館

(写真)府中市立中央図書館が入るルミエール府中。

2022年(令和4年)5月、東京都府中市府中市立中央図書館を訪れました。

かつて府中市には「新映座」「府中国際劇場」「府中東映」「府中コニー劇場」がありました。現在はシネコン「TOHOシネマズ府中」があります。

 

1. 府中市立中央図書館

府中市立中央図書館については2018年(平成30年)の初訪問時にもブログ記事を書いています。

ayc.hatenablog.com

 

1.1 図書館の施設
現行館は2007年(平成19年)に開館。巨大な複合施設であるルミエール府中の3階と4階(と5階)が図書館となっており、秩序だった配置でフロアを埋めている書架が壮観。
私の地元では2008年開館の岡崎市図書館交流プラザ/岡崎市立中央図書館によく似た印象であり、これらの複合施設/図書館は2000年代における典型なのかもしれません。
1990年代にはこれほど大きな複合施設型の図書館は少ない。2010年代になると書架の配置がもっとゆったりしてくるし、意図的に死角や小部屋を作ります。
 
日本で初めて導入されたという無線ICタグRFID)が気になります。書籍には専用ICタグが貼付され、予約本と返却本の書架に読取用アンテナが内蔵されていることで、目的の書籍が館内のどの位置にあるか把握できるシステムです。私の地元では2017年開館の安城市図書情報館(アンフォーレ)がRFIDを導入していますが、府中市立中央図書館の書架とは少し見た目が異なり、仕切りを多くすることで読み取り精度を上げているようです。

(写真)無線ICタグ

 

1.2 郷土資料
江戸時代から府中では馬市が開かれており、昭和初期には市域に東京競馬場が開場したことなどもあって、郷土資料の中でも「馬」に関する重点収集資料は存在感があります。重点収集資料にある「けやき並木」はウィキペディアタウン向きだと思いましたが、Wikipedia「馬場大門のケヤキ並木」という記事は既にさかおりさんによって加筆されていました。

(写真)特別コレクションの馬。

(写真)特別コレクションのけやき並木と甲州街道

(左)特別コレクションの大賀一郎博士とハス。(右)撮影許可証。

 

 

2. 府中市の映画館

かつて府中市には4館の映画館がありました。うち新映座、府中国際劇場、府中東映の3館は1970~80年代まで営業していたので住宅地図にも掲載されていますが、1960年代初頭に閉館した府中コニー劇場だけは住宅地図では跡地がわかりません。それでも1964年版まで遡れる住宅地図の所蔵状況は秀逸です。

 

『映画年鑑 昭和18年』日本映画協会、1943年

1943年(昭和18年)の映画館名簿を見ると、後の府中東映と思われる映画館が府中松竹館として掲載されています。

 

『映画便覧 1961』時事通信社、1961年

日本の映画人口(観客数)は1958年(昭和33年)にピークを迎え、映画館数は1960年(昭和35年)にピークを迎えます。1961年(昭和36年)の映画館名簿は府中市に4館掲載されている最後の年です。

 

『映画館名簿 1978』時事映画通信社、1978年

1978年(昭和53年)の映画館名簿は府中市に3館掲載されている最後の年です。1978年(昭和53年)12月に府中東映が、1980年(昭和55年)頃に府中国際劇場が、1986年(昭和61年)頃に新映座が閉館し、府中市から映画館がなくなります。

 

2.1 府中コニー劇場(1958年頃-1961年頃)

所在地 : 東京都府中市並木通9126(1961年)
開館年 : 1958年頃
閉館年 : 1961年頃
1958年の映画館名簿には掲載されていない。1959年・1960年・1961年の映画館名簿では「府中コニー劇場」。1962年の映画館名簿には掲載されていない。跡地は商業施設「武蔵府中ル・シーニュ」建物南西部。最寄駅は京王線府中駅

住宅地図ではわからなかった府中コニー劇場の跡地ですが、府中市立中央図書館にレファレンスしたら見つけ出してくださいました。『府中史談』府中市史談会、第13号、1987年によると後のみどりや百貨店(緑屋百貨店)の場所だそうです。京王線府中駅のすぐ南、武蔵府中ル・シーニュの建物南西部にあったようです。

(地図)中央左に府中コニー劇場跡地の緑屋百貨店が描かれてる『府中市商工住宅名鑑』1964年。府中市立中央図書館所蔵。

 

2.2 府中東映(1940年-1978年12月)

所在地 : 東京都府中市宮町1-20-5(1979年)
開館年 : 1940年
閉館年 : 1978年12月
『全国映画館総覧 1955』によると1940年開館。1943年の映画館名簿では「府中松竹館」。1949年の映画館名簿では「府中松竹座」。1950年の映画館名簿では「府中松竹館」。1953年・1955年の映画館名簿では「府中文化劇場」。1958年の映画館名簿では「府中東映劇場」。1960年の映画館名簿には掲載されていない。1963年・1966年・1969年の映画館名簿では「府中東映劇場」。1973年・1976年・1978年・1979年の映画館名簿では「府中東映」。1980年の映画館名簿には掲載されていない。跡地は「ファミリーマート中宮町店」が入る「大津ビル」。最寄駅は京王線府中駅

戦前に開館した府中唯一の映画館が府中東映であり、1950年頃までは府中松竹館として映画館名簿に掲載されており、1959年(昭和34年)に府中文化劇場から府中東映に改称しました。TOHOシネマズ府中が入るくるるがあるブロックの南東角、大津ビルの場所にありました。

(地図)右下に府中東映が描かれてる『府中市商工住宅名鑑』1964年。府中市立中央図書館所蔵。

(地図)右下に府中東映が描かれている『ゼンリン住宅地図』ゼンリン、1978年。府中市立中央図書館所蔵。

 

2.3 府中国際劇場(1953年12月-1980年頃)

所在地 : 東京都府中市宮西町1-16-2(1980年)
開館年 : 1953年12月
閉館年 : 1980年頃
『全国映画館総覧 1955』によると1953年12月開館。1955年・1958年・1960年・1963年・1966年・1969年・1973年・1976年・1980年の映画館名簿では「府中国際劇場」。1981年の映画館名簿には掲載されていない。跡地はマンション「府中グリーンハイツ」。最寄駅は京王線府中駅

(写真)府中国際劇場。『キネマ旬報』1976年4月15日、681号。愛知県図書館所蔵。

(地図)左上に国際映画劇場が描かれてる『府中市商工住宅名鑑』1964年。府中市立中央図書館所蔵。

(地図)中央上に国際映画劇場が描かれている『ゼンリン住宅地図』ゼンリン、1978年。府中市立中央図書館所蔵。

(上・下)「われらの映画館 府中国際劇場」『キネマ旬報』1976年4月15日、681号。愛知県図書館所蔵。

 

2.4 新映座(1957年頃-1986年頃)

所在地 : 東京都府中市宮西町5-25(1986年)
開館年 : 1957年頃
閉館年 : 1986年頃
1957年の映画館名簿には掲載されていない。1958年・1960年・1963年・1966年・1969年・1973年・1976年・1980年・1985年・1986年の映画館名簿では「府中新映座」。1987年の映画館名簿には掲載されていない。府中市最後の従来型映画館。跡地はマンション「ボヌール府中」。最寄駅は京王線府中駅

 

(地図)中央下に新映座が描かれてる『府中市商工住宅名鑑』1964年。府中市立中央図書館所蔵。

(地図)中央上に新映座が描かれている『ゼンリン住宅地図』ゼンリン、1978年。府中市立中央図書館所蔵。

(左・右)新映座の地図が掲載されている『ぴあmap 82'』ぴあ、1982年。個人所蔵物。

 

2.5 TOHOシネマズ府中(2005年3月17日-営業中)

所在地 : 東京都府中市宮町1-50 くるる5階(2020年)
開館年 : 2005年3月17日
閉館年 : 営業中
2005年の映画館名簿には掲載されていない。2006年・2010年・2015年・2020年の映画館名簿では「TOHOシネマズ府中1-8・プレミアスクリーン」(9館)。

(写真)TOHOシネマズ府中が入るくるる。Fuchu - Wikimedia Commons

府中市にあった映画館について調べたことは「東京都の映画館 - 消えた映画館の記憶」に掲載しており、その所在地については「消えた映画館の記憶地図(東京都版)」にマッピングしています。

hekikaicinema.memo.wiki

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