(写真)須成祭の車楽船行事。2018年8月。Wikimedia Commons - CC BY-SA 4.0 - 秘密結社水曜日
2018年(平成30年)から2020年(令和2年)にかけて、何度か愛知県海部郡蟹江町を訪れました。関連記事に「蟹江町の映画館」や「蟹江町図書館を訪れる」があります。
1. 蟹江町を訪れる
蟹江町は愛知県尾張地方にある人口3万7000人の自治体。濃尾平野南部の津島・海部地域(海部郡)にあり、町域の大半が海抜ゼロメートル地帯。地理院地図の色別標高図を見ても、標高が海抜を超える場所がほとんどありません。
蟹江町には近鉄名古屋線とJR関西本線が通っており、近鉄蟹江駅から近鉄名古屋駅までは急行で1区間約10分の近さ。人口はまだ緩やかに増加しているようです。
(地図)愛知県における蟹江町の位置。©OpenStreetMap contributors
(地図)蟹江町の色別標高図。水色(標高0m-1m)や黄緑色(標高1m-2m)すらほとんどなく、大部分は海抜以下。地理院地図
2. 蟹江町の商店街
JR関西本線蟹江駅の開業は1895年(明治28年)、近鉄名古屋線近鉄蟹江駅の開業は1938年(昭和13年)ですが、蟹江町の中心駅は近鉄蟹江駅です。近鉄蟹江駅からは北・西・南に商店街が伸びており、北に延びる一番街商店街はより古い商店街(本町通り、五の町商店街、中の町商店街)に接続しています。
1960年代の航空写真を見ると、近鉄蟹江駅周辺にはまだ市街地が発展していなかったのが興味深い。当時は蟹江川以外にも多数の水路や池があり、現在は埋め立てられて道路や公共施設に代わっています。2018年(平成30年)6月16日には愛知県主催の街歩きイベント「ブラアイチ in 蟹江」が開催されていますが、このあたりの説明もあったのでしょうか。
2.1 一番街通り商店街
近鉄蟹江駅から北に延びる商店街は一番街通り商店街。蟹江町で商店の密度が最も濃い商店街であり、三菱UFJ銀行や三重銀行などの銀行、佐鳴予備校や個別教室のトライなどの学習塾などが集まっています。
(写真)一番街通り商店街。2020年8月。
(写真)一番街通り商店街。2020年8月。
2.2 本町通り(中の町商店街)
高度経済成長期の前半まで(?)は蟹江町のメインストリートだったのが本町通り。「L」字型の中の町商店街の一部でもあります。本町通りの中央部には目立つ4階建てのアパート「丸庄ビル」があり、このビルは映画館「オデオン劇場」の跡地です。
(写真)本町通り。左はオデオン劇場跡地の丸庄ビル、右は上田医院。2020年8月。
(写真)本町通り。左はきもの処まるい、右は佛兵仏壇店。2020年8月。
(地図)1967年の住宅地図における本町通り。
2.3 五の町商店街
(左)本町通りと五の町通りの交差点。右は廃業していると思われるみたらし たこやき みき。(右)五の町通り。左は御料理 丸河。いずれも2020年8月。
2.4 蟹江銀座
(写真)蟹江銀座。(左)県道103号の西に並行する通り。右は黒川時計舗。(右)県道103号。右は蟹江時計店。いずれも2020年8月。
3. 甘強酒造
蟹江市街地を流れる蟹江川沿いには、みりんや日本酒で知られる甘強酒造(かんきょうしゅぞう)があります。2005年(平成17年)には旧本社事務所など4軒が登録有形文化財に登録されました。和風建築の主屋は1923年(大正12年)、近代建築の旧本社事務所は1937年(昭和12年)の建築であり、時代の異なる2つの建物が隣り合っている不思議な景観が見られます。
かつて蟹江町には甘強酒造以外にもみりんを生産する醸造企業があったようです。蟹江町でみりんの生産が盛んになった背景には、「周辺で良質なもち米が取れたこと」、「運搬に便利な河川や鉄道があったこと」などもありますが、『蟹江町史』を読んでいると「手ごろな商売を探していた旧家が、対外的な評判のいい醸造業に目を付けた」などという記述も出てきて面白い。
(写真)蟹江川と甘強味醂旧本社事務所。登録有形文化財。2020年8月。
(左)甘強味醂旧本社事務所と住宅主屋。(中)甘強味醂住宅主屋。登録有形文化財。(右)甘強味醂住宅土蔵と工場。登録有形文化財。いずれも2020年8月。
蟹江町の中心市街地にあるスーパーマーケットのYストア蟹江食品館を訪れました。みりんコーナーには上段に甘強酒造のみりんが陳列されていたほか、甘強酒造の商品しかない甘強酒造コーナーもありました。
Yストア蟹江食品館が甘強酒造を強く推している一方で、蟹江町に本店を置くヤオキスーパー本店には甘強酒造の商品が見あたりません。Wikipediaによると甘強酒造は「料理店などで販路の80%以上を占める」とのことであり、価格帯がやや高めということもあって、小規模なスーパーチェーンは取り扱わないのかもしれません。
(写真)Yストア蟹江食品館の甘強酒造コーナーにある高級みりん。いずれも2020年8月。
(左)(写真)Yストア蟹江食品館のみりんコーナー。(右)Yストア蟹江食品館の甘強酒造コーナー。いずれも2020年8月。
4. 須成祭
4.1 須成祭の歴史
甘強酒造から蟹江川に沿って約2km上流には、赤色の塗装が鮮やかな御葭橋(みよし橋)があります。2018年(平成30年)に訪れた際には塗り直し(?)工事中だった御葭橋は跳開橋であり、毎年8月第1土曜・日曜に開催される須成祭の2日間のみ可動して橋桁が跳ね上がります。
冨吉建速神社・八剱社(とみよしたけはやじんじゃ・はちけんしゃ)の祭礼である須成祭は国の重要無形民俗文化財であり、ユネスコの無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」の構成遺産でもあります。祭礼は「神葭の神事」(みよしのしんじ)と「車楽船の川祭」(だんじりぶねのかわまつり)の2つからなり、冨吉建速神社・八剱社の脇を流れる蟹江川が双方の行事で重要な役割を果たすようです。西三河地方在住者には川祭はなじみがなく、コロナ禍がなければ須成祭か尾張津島天王祭(津島市)のどちらかを見物したかったのですが、2020年(令和2年)の須成祭は神事以外の行事は中止となったようです。
2019年(令和元年)には須成祭 - Wikipediaを加筆し、また冨吉建速神社・八剱社 - Wikipediaを新規作成しました。
(左)通常時の御葭橋。2019年5月。(右)須成祭の車楽船行事。跳ね上がった御葭橋を川船が通行している。2015年8月。Wikimedia Commons - CC BY-SA 4.0 - Bariston
4.2 蟹江町観光交流センター「祭人」
(写真)蟹江町観光交流センター「祭人」。2019年1月。
(写真)蟹江町観光交流センター「祭人」の館内。須成祭に関する常設展示。いずれも2019年1月。