振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

沼田市を訪れる

(写真)旧土岐家住宅洋館。

2024年(令和6年)1月、群馬県沼田市を訪れました。「沼田市の映画館」に続きます。

 

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1. 大正ロマンエリア

沼田市上之町(かみのちょう)には大正ロマンエリアという一角があり、移築された4棟の近代建築を中心として観光スポット化が図られています。

 

1.1 旧土岐家住宅洋館(国登録)

旧土岐家住宅洋館。1924年大正13年)に子爵の土岐章によって東京市麻布区広尾(現・渋谷区)に竣工した西洋館であり、1988年(昭和63年)までは土岐章と妻が暮らしていました。土岐家は江戸時代に沼田藩主を務めた家系である縁から、1990年(平成2年)に沼田市が取得して沼田公園に移築されました。

2020年(令和2年)に大正ロマンエリアに再移築され、大正ロマンエリアにおける目玉の展示施設という位置づけがなされています。登録有形文化財

(写真)旧土岐家住宅洋館。

(写真)旧土岐家住宅洋館。玄関周辺。

(写真)旧土岐家住宅洋館。玄関周辺。

(写真)旧土岐家住宅洋館。ステンドグラス。

 

(写真)旧土岐家住宅洋館。1階の洋室。

(写真)旧土岐家住宅洋館。1階の洋室。暖炉とカーテン。

(写真)旧土岐家住宅洋館。1階の和室。

(写真)旧土岐家住宅洋館。2階の洋室。

 

1.2 旧沼田貯蓄銀行(県指定)

旧沼田貯蓄銀行大正ロマンエリアに初めて移築された近代建築です。1908年(明治41年)頃に沼田市街地に建てられ、2016年(平成28年)に移築されています。大正ロマンエリアという名称がついていますが、旧沼田貯蓄銀行は大正建築ではなく明治建築です。群馬県指定文化財

(写真)旧沼田貯蓄銀行

(写真)旧沼田貯蓄銀行。客溜まりとカウンター。

(写真)旧沼田貯蓄銀行。天井。

(写真)1920年代後半の利根銀行本店時代。

 

1.3 旧日本基督教団沼田教会紀念会堂(国登録)

日本基督教団沼田教会紀念会堂。1914年(大正3年)に沼田市街地に建てられ、1988年(昭和63年)に沼田公園に移築されました。旧沼田貯蓄銀行の移築から4年後、2020年(令和2年)に大正ロマンエリアに再移築されています。登録有形文化財

(写真)旧日本基督教団沼田教会紀念会堂。

(写真)旧日本基督教団沼田教会紀念会堂と大正ロマンエリア。中央奥は旧久米家住宅洋館。

 

1.4 旧久米家住宅洋館(未登録)

旧久米家住宅洋館(旧久米邸洋館)。大正初期、東京府豊多摩郡の上原(代々木上原)に建てられ、代々木御殿とも呼ばれていたようです。沼田出身の久米民之助が暮らしていましたが、1923年(大正12年)の関東大震災後に売却されて紀州徳川家本宅となります。1938年(昭和13年)には目黒蒲田電鉄が土地を購入し、区画整理して分割した後に分譲しました。

かつての代々木御殿の建物は解体されることなく残され、戦後には岩佐多聞邸となりました。解体が決定した際に沼田市が建物を取得し、2023年(令和5年)に大正ロマンエリアに移築されました。2024年(令和6年)1月現在は公開されておらず、準備でき次第公開される予定だそうです。現時点では文化財指定/登録されていませんが、いずれ登録有形文化財に登録されるものと思われます。

(写真)旧久米家住宅洋館。

(写真)旧久米家住宅洋館。

(写真)旧久米家住宅洋館の説明看板。

 

1.5 沼田高等学校管理教室棟(国登録)

大正ロマンエリアから沼高通りを東に400m歩くと群馬県立沼田高校があります。通りから見える校舎は1928年(昭和3年)竣工のモダニズム建築であり、「沼田高等学校管理教室棟(旧沼田中学校校舎)」として登録有形文化財に登録されています。装飾性の高い大正建築との対比が面白い。

(写真)群馬県立沼田高校。1928年竣工のモダニズム建築が登録有形文化財

 

2. 沼田公園

2.1 旧生方家住宅(国重文)

(写真)旧生方家住宅。

(写真)ミセ(下店)。

(写真)ミセ(上店)。

(写真)板の間。

(写真)「かどふぢ薬局」の看板。

(写真)かどふぢ薬局時代の1924年の写真。『大正12年上越南線沼田町駅開通記念』1924年

(写真)建物入口の薬看板。

(写真)建物内部に置かれている薬看板。

(写真)鬼板。瓦ではなく銅板で作った鬼瓦。

2.2 久米民之助

土木技師・実業家・政治家を務めた久米民之助は、荒廃していた沼田城址を購入して沼田公園を整備、沼田市に寄付した人物です。沼田公園には久米民之助の胸像があるほか、石碑「久米先生遺徳顕彰碑」も建立されています。

(写真)沼田公園にある久米民之助の胸像。

(写真)沼田公園にある「久米先生遺徳顕彰碑」。

 

正覚寺には久米民之助の墓がありました。

(写真)正覚寺にある久米民之助の墓。

 

3. 沼田市の図書館・博物館

3.1 沼田市立図書館

1993年(平成5年)には沼田市中心市街地に、8階建ての巨大な再開発ビル「グリーンベル21」が竣工し、沼田サティを核テナントとしていました。グリーンベル21の北隣に沼田市立図書館が入る5階建てビルが竣工したのは1994年(平成6年)のことです。一般的に図書館が郊外に立地することが多い地方都市としては珍しく、沼田市では中心市街地に複数フロア型の図書館を有しています。

その後、グリーンベル21はエーコープと長崎屋を核テナントとする時代がありましたが、2010年(平成22年)以後は核テナントが存在しない廃墟のような状態になっていたようです。2015年(平成27年)には沼田市が建物を取得し、2019年(令和元年)には沼田市役所や沼田市歴史資料館が入る「テラス沼田」としてリニューアル開館しました。

(写真)沼田市立図書館。

 

郷土資料コーナーには「真田氏を題材にした文学作品」という立派な書架がありました。沼田市は「天空の城下町 真田の里 沼田」というキャッチコピーで真田氏に関する史跡を推しているようです。

公式サイトの館内案内には「5階に尾瀬森林文化資料室(郷土資料室)がある」とありますが、5階は一般利用者立入禁止でした。郷土資料の書庫出納では所蔵場所が「5階」となっている文献が何冊かありましたが、かつて開架だったスペースを閉架書庫扱いしているのでしょうか。

(写真)郷土資料コーナーの「真田氏を題材にした文学作品」。

(写真)沼田市の各映画館も収録されている『利根沼田歴史民俗事典』上毛新聞社、2013年。

 

3.2 沼田市歴史資料館

(写真)古墳時代の出土物。

(写真)沼田市街地の河岸段丘がよくわかる大型ジオラマ

(写真)沼田市街地の河岸段丘がよくわかる大型ジオラマ

(写真)寛永11年(1634年)に鋳造された沼田城の梵鐘。群馬県指定文化財

(写真)寛永11年(1634年)に鋳造された沼田城の梵鐘。群馬県指定文化財