振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

中川運河しおりのアトリエを訪れる

(写真)「映画と演劇のしおり展」。

2023年(令和5年)12月、愛知県名古屋市中川区石場町にある「中川運河しおりのアトリエ」を訪れました。2023年11月6日(月)から12月27日(水)まで「映画と演劇のしおり展」を開催中です。

 

1. 「映画と演劇のしおり展」

中川運河しおりのアトリエ(2022年までの名称は中川運河しおりギャラリー)は近藤印刷株式会社が運営する私設美術館。元教員の豊嶋利雄さん(72)が収集した国内外のしおりを展示するスペースとして開館しました。

(写真)中川運河しおりのアトリエ。

 

1.1 野口久光のしおり

最も入口に近い場所には多数の映画ポスターの図案を製作した 野口久光 - Wikipedia の絵を用いたしおりがありました。野口久光の作品の展覧会自体は珍しくないですが、しおりに特化したものは初では。

(写真)野口久光のしおり。

 

戦前・戦後の映画興行についての知識は少ないのですが、映画黄金期頃までは邦画ファンと洋画ファンがはっきり分かれている印象があります。特に戦前はこの傾向が顕著だったのでは。

洋画ファンの典型例として思い浮かぶのは、(当時はまだ珍しかった)大学生/高校生やサラリーマンであり、これらのインテリ層に書店で洋画のしおりを配布するのは効果的だったのかもしれません。

(左)1938年のフランス・ドイツ合作『仏蘭西座』。(右)1936年のドイツ映画『青春』。

 

1.2 戦後の映画のしおり

(写真)「映画と演劇のしおり展」。

(左)1936年の松竹映画『大尉の娘』。水谷八重子主演。(右)1957年の東宝映画『雪国』。

 

しおりの中には映画館名が入っているものもありました。東京や名古屋などの大都市の封切館では、洋画話題作の上映時にしおりを配布していたようです。

(中央の2枚)東京・日比谷の(?)スカラ座でロードショー公開される『白夜』。1957年のイタリア・フランス合作。東京・有楽町の丸の内東宝でロードショー公開される『ローン・レンジャー』。1956年の西部劇。

(左)名古屋の丸栄ピカデリーの「開場3周年記念ロードショー」とある『ホフマン物語』。1952年のイギリス映画。(右)名古屋の名宝文化劇場と広小路劇場で封切られる『レベッカ』。1940年のアメリカ映画。

(左)『武器よさらば』。1957年のアメリカ映画。(右)名古屋の広小路劇場でロードショー公開される『嵐が丘』。1939年のアメリカ映画。

(左)観音寺新映館の「開館1周年記念興行」とある『ジャンヌ・ダーク』。1948年のアメリカ映画。(右)テアトル東京の開業興行である『七年目の浮気』。1955年のアメリカ映画。

 

1.3 映画関連のその他のしおり

時代劇のしおり

(写真)時代劇のしおり。東千代之介大川橋蔵中村錦之助

 

宮崎祐治が描いたキネマ旬報のしおり

(写真)キネマ旬報でイラストを手掛ける宮崎祐治のしおり。

 

スペインの書店のしおり

「スペインの小さな映画しおり」として、ガリシア州サンティアゴ・デ・コンポステーラの書店「フォリャス・ノバス」で配布されたしおりが展示されていました。説明書きによると書店は1971年(昭和46年)創業とのことですが、しおりに印刷された作品は戦前などのものです。著作権の問題かな。

(左)1939年のアメリカ映画『風と共に去りぬ』。(中)1928年のアメリカ映画『街の天使』。1946年のアメリカ映画『素晴らしき哉、人生!』。

 

1.4 演劇のしおり

宝塚歌劇団のしおり

 

(写真)常設展示「イギリスのしおり展」。