振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

秦野市を訪れる

(写真)葉たばこ「秦野葉」。はだの歴史博物館。

2023年(令和5年)3月、神奈川県秦野市を訪れました。「秦野市の映画館」に続きます。

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1. 秦野市を訪れる

秦野市は神奈川県湘南地域にある人口約16万人の都市。小田急小田原線の沿線にはあまりなじみがないのですが、想像よりも人口が多い。

 

1.1 秦野市地場産業

近代の秦野は関東最大の葉たばこの産地となり、秦野葉は水府煙草(茨城県水戸市など)や国分煙草(鹿児島県)とともに「三大銘葉」の一つに挙げられます。戦後には急速に葉たばこの栽培面積を減らし、1984年(昭和59年)にはすべての畑で栽培が終了しました。葉たばこ畑は住宅地と工業用地に転用されたとのことです。

1948年(昭和23年)に初回が開催された秦野たばこ祭は2023年(令和5年)現在も開催されています。2020年(令和2年)にリニューアル開館したはだの歴史博物館にはたばこ産業に関する常設展示が多数あるほか、『秦野市史』にはたばこ産業のみを扱う別巻があります。

(写真)はだの歴史博物館。秦野たばこの展示。

 

1.1 秦野市の近代建築

秦野市のメインストリートは片町通りであり、複数の近代建築が存在感を示しています。1923年(大正12年)9月の関東大震災後、1925年(大正14年)には2階建てで五十嵐商店の店舗が竣工し、1928年(昭和3年)11月には現行の3階建てに改築されました。鉄筋コンクリート造ではなく木造ですが、王道の古典主義風近代建築に見えます。

(写真)五十嵐商店。登録有形文化財

(写真)五十嵐商店。1928年11月10日の店舗落成記念写真。

 

片町通りには五十嵐商店のほかに、1927年(昭和2年)竣工とされる竣工の保全堂薬局、1928年(昭和3年)竣工とされる旧枡屋陶器店(枡屋ビル)、戦前竣工の日本聖公会秦野聖ルカ教会などがあります。

(写真)旧枡屋陶器店(枡屋ビル)。

(写真)保全堂薬局。

(写真)日本聖公会秦野聖ルカ教会。

 

2. 秦野市の劇場

2.1 秦野座(明治時代-昭和30年代)

所在地 : 神奈川県中郡秦野町(1936年)
開館年 : 明治時代
閉館年 : 昭和30年代
1930年の映画館名簿には掲載されていない。1936年の映画館名簿では「秦野座」。1943年の映画館名簿には掲載されていない。映画館ではなく劇場。跡地は「ファミリーマート秦野本町二丁目店」北東40mにある2023年竣工のアパート「オーブ」。最寄駅は小田急小田原線秦野駅。

(写真)秦野座や初音館が掲載されている一覧。『秦野誌並に震災復興誌』落合政一、1925年。秦野市立図書館所蔵。

(地図)1967年の秦野座アパート周辺。『秦野市明細地図』明細地図社、1967年。秦野市立図書館所蔵。

(地図)1982年の秦野座アパート周辺。『秦野市明細地図』明細地図社、1982年。秦野市立図書館所蔵。

(写真)解体前の1985年の秦野座アパート。『ふるさと秦野・伊勢原』郷土出版社、2011年。秦野市立図書館所蔵。

(写真)秦野座跡地のアパートと三体地蔵。