振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

「高田知文氏像」を訪れる

(写真)銅像「高田知文氏像」と石碑「高田知文翁之碑」。

2023年(令和5年)4月、愛知県北名古屋市沖村を訪れました。沖村には郷土の功労者として高田知文がいます。

 

1. 第3回東海遊里史研究会

1.1 大須旭廓の楼主

2023年(令和5年)4月に刊行された『東海遊里史研究 3』では、ことぶきさんによって大須遊郭「旭廓」(しんち、あさひくるわ)が紹介されており、4月26日に開催された「第3回東海遊里史研究会」では『東海遊里史研究 3』に書かれた内容の発表がありました。この書籍/発表の中に高田知文が登場します。

『東海遊里史研究 3』によると、高田知文は旭廓にあった貸座敷兼芸妓置屋である金波楼(きんぱろう)の楼主です。もともと金波楼の経営者は高田金七であり、高田金七は1894年(明治27年)開業の名古屋ホテルの創業者でもありました。大正時代には養子の高田知文が金波楼の楼主となり、1923年(大正12年)の遊廓移転時には中村遊廓に移転せずに芸妓置屋を専業としたようです。

 

1.2 高田知文の経歴

後述する石碑「高田知文翁之碑」の内容を要約します。

 

文久3年(1863年)11月14日、後の高田知文は尾張国西春日井郡沖村の松林寺に生まれました。父は松林寺22世の加藤寿法師であり、知文は次男です。1885年(明治18年)に名古屋市花園町の高田金七の養子となりました。

高田知文は社会公益事業に熱心であり、1919年(大正8年)から1928年(昭和3年)には故郷の西春村沖に忠魂碑や公会堂を建設。さらに、西春村沖と分家のある西春村九之坪を結ぶ幅二間の高田街道を建設しています。

(左)高田知文が建設した沖村と九之坪を結ぶ高田街道。1937年頃。今昔マップ。(右)現在の西春市街地における高田街道。地理院地図

 

1930年(昭和5年)には帝国水難救済会に対する寄付によって紺綬褒章を授与されています。「我が身をつめ 人のため世のため国のために尽くし そして 親子夫婦兄弟親族 一同仲よく働く」という信念を有していました。1944年(昭和19年)2月12日に死去し、死後には財団法人高田知文法恩会が設立されています。

(写真)1921年に高田知文が建立した忠魂碑。

(写真)高田知文が建設した沖村と九之坪を結ぶ道路。

2. 「高田知文氏像」「高田知文翁之碑」

高田知文の生家である松林寺のすぐ南側には、銅像「高田知文氏像」と石碑「高田知文翁之碑」があります。「高田知文翁之碑」の裏面に書かれている文章は以下の通り。

高田知文翁略歴

高田知文翁ハ文久三年十一月十四日 沖松林寺二十二世加藤寿法師二男トシテ出生 明治十八年名古屋市花園町高田金七氏ノ後継ニ入籍以来 ソノ遺業を継ギ 誠心誠意 ヒタスラ 高田家ノタメ 勤倹力行 寺門出ノ財界人トシテ一代ノ富ヲカチ得ラレタノデアリマス

翁ハ生前 社会公益事業ニ対シ 深ク関心ヲイダキ 大正八年カラ昭和三年ニワタリ 当村ニ忠魂碑 公会堂ヲ建設シ ソノ基金ヲ備エ 又 九之坪分家宅カラ沖ヘ通スル二間道路ヲ十数町開キ 十七箇ノ橋梁ヲ架ケ 或ハ 昭和五年 当時ノ帝国水難救済会ニ多額ノ金員ヲ喜捨紺綬褒章金杯下附ノ光栄ヲ得ラレマシタ ソノ他 県市公益事業 軍人後援会 連区学校 及ビ 親族ソレゾレニ経済的援助ヲシ 数十万円ノ私財ヲ投ズル美挙ヲサレタノデアリマス

翁ノカネテノ主張ハ 「我ガ身ヲツメ 人ノタメ世ノタメ国ノタメニ尽クシ ソシテ 親子夫婦兄弟親族 一同仲ヨク働ク」 トイウコトデアリマシタ

数々ノ功績ヲ遺シ 昭和十九年二月十二日 惜シクモ他界サレマシタガ ソノ 遺言ニヨリ「財団法人高田知文法恩会」ガ 文部省ノ認可監督ノモトニ設立サレ 育英 学術 仏教文化助成ノ一端ヲナシソノ遺志ヲ継イデイル次第デアリマス

サキニ 西春村々民諸氏ノ努力ニヨリ 翁ノ銅像ガセメント材ニテ復旧シマシタガ 今回更ニ翁生前ノ遺徳ヲシノビ ソノ功績ヲ顕彰スルタメ 沖村区ト親戚一同協議ノ上 翁ノ記念碑ヲ建立シ 永久ニ 在リシ日ノ翁 並ビニソノ業績ヲ 追慕スル次第デアリマス

 

辞世 「人のためちからのかぎり働きて石に刻むも知る人のため」

昭和三十三年四月吉日 藤井制心撰文 加藤梅香書 石工井上清春刻

建碑発起人 沖村区民一同 藤井制心 星野耕太郎 加藤弘道 服部利一 服部英治 服部親良 星野益一郎 加藤努 他知文有志




 

3. 光明山 松林寺

(写真)松林寺。

(写真)松林寺の亀甲竹。北名古屋市天然記念物。

(写真)松林寺のイチョウ北名古屋市天然記念物。

(写真)松林寺のイブキ。北名古屋市天然記念物。