(写真)日向湖と日向の街並み。
2022年(令和4年)8月、福井県三方郡美浜町日向(ひるが)を訪れました。「美浜町早瀬を訪れる」からの続きです。
1. 日向を訪れる
三方五湖の北端部、日向湖と若狭湾に挟まれた場所にある集落が日向(ひるが)です。日向運河(日向川)に架かる日向橋を中心点とし、日向橋の南東には"東ン所"、日向橋の南西には"西ン所"と、日向湖の湖岸に沿って集落が形成されています。湖と海に挟まれている点は東隣の早瀬と同じなのですが、集落の形はかなり異なります。
1985年(昭和60年)の映画『夜叉』(降旗康男監督、高倉健主演)の舞台は日向であり、日向橋は作中で重要な役割を果たしたようです。日向を訪れて『夜叉』に言及している方も多いだけに、説明看板でも立てておけばいいのに。
(写真)日向橋。
毎年1月には日向運河で「日向の水中綱引き」(選択無形民俗文化財)が開催されます。若者が日向運河に入り、両岸から大綱を引き合って豊漁を祈願するとのこと。水中で綱を引いても動きが少なそう。
(写真)日向の水中綱引き行事。国の選択無形民俗文化財。photo:TR15336300101 - Wikimedia Commons
日向湖の湖岸に沿って路地が通っており、その山側と海側に民家が建ち並んでいます。かつては最も海側に船小屋が並んでいたようですが、現在は漁船を着ける護岸と道路になっています。
(写真)"東ン所"(日向橋の南東側)の街並み。
(写真)"西ン所"(日向橋の南西側)の街並み。宮下酒店付近。
(左)東ン所にいたねこ。(右)西ン所にある宮下酒店。三宅彦右衛門酒造の旧銘柄「澤の井」が見える。
若狭湾に面した場所には本来の日向漁港がありますが、漁船の大部分は日向湖に停泊しており、日向漁港はもっぱら釣り堀のためのエリアになっていました。日向湖の南側にも複数の釣り堀があり、「福井」「滋賀」「岐阜」などのナンバープレートの車でにぎわっていました。
(写真)日向漁港。若狭湾に面した釣り堀。
(写真)フィッシングランド日向。日向湖にある釣り堀。奥は日向の街並み。
日向の漁業は夏と冬の大敷網(大型定置網)が中心であり、住民の大半が出資した日向定置網漁業組合によって定置網が運営されているようです。定置網用の漁船のほかには、釣り客向けのイカ釣り漁船なども停泊していました。
(写真)釣り客向けのイカ釣り漁船。
(左)蛸壺。(右)日向湖岸に並ぶ漁船と街並み。
日向橋の西には稲荷大明神がありますが、早瀬の日吉神社と比べると規模が小さいし場所もよくない。寺院としては曹洞宗の長久寺がありますが、集落の南東端と言える場所であり、日向橋の西側には寺院がありません。
(写真)稲荷大明神。
(写真)長久寺。
日向と早瀬の中間地点には美浜町立美浜北小学校があり、2014年度(平成26年度)の児童数は26人だったようです。2015年(平成27年)4月には美浜町の7小学校がすべて廃校となり、新たに3校が設置される学校統廃合が行われています。美浜北小学校はこの際に閉校となり、跡地には校舎だけが残っています。
(写真)2015年に閉校した美浜町立美浜北小学校。