振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

紀北町紀伊長島図書室を訪れる

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(写真)JR紀勢本線紀伊長島駅。

2020年(令和2年)12月、三重県南部の北牟婁郡紀北町にある紀伊長島地区を訪れました。

 

1. 紀伊長島を歩く

尾鷲市や熊野市を中心とする三重県南部は東紀州地域と呼ばれ、律令国紀伊国の最東端に位置する地域です。JR紀勢本線はトンネルの連続する山間部を通って東紀州地域に入りますが、紀伊長島に到着すると「平野の三重」から「海と森の三重」に入った感覚があります。

2005年(平成17年)に北牟婁郡紀伊長島町と海山町が合併して発足したのが紀北町であり、紀伊長島地区には紀北町役場が置かれています。古くからカツオの一本釣漁業で栄えた漁師町であり、長島ショッピー中州店にも長島産カツオのパックが並んでいました。

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(写真)紀伊長島市街地。地理院地図

 

1.1 魚まち

JR紀勢本線紀伊長島駅に隣接するふれあい広場マンドロでレンタサイクルを借り、魚まち散策マップを片手に紀伊長島の町をめぐりました。ふれあい広場マンドロの建物東側は天井高が10m近くありそうな作業場となっていますが、1928年(昭和3年)から続くきほく燈籠祭で用いる巨大灯籠の製作や展示を行っている施設とのこと。

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(写真)「磯の香に誘われ鄙びた港町を行く 長島浦」『おくまの』みえ熊野学研究会、2016年5月、第7号

 

紀伊長島の旧市街地をざっくりと「魚まち」と呼ぶようです。江ノ浦大橋の外側には広大な埋め立て地があり、水産加工市場や漁業センターなどの漁港関連施設があります。しかし、漁船の大半は旧来からの漁港である江ノ浦湾内にあり、江ノ浦大橋や江ノ浦橋と絡めると漁業町らしい写真が撮れました。江ノ浦橋は中央部が真上に持ち上がる昇開橋だそうです。江ノ浦大橋と江ノ浦橋を結ぶ海沿いの道路は干物通りと呼ばれるそうで、干物屋の店先にはさんまが干されていました。

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(左)江ノ浦湾の漁船と江ノ浦大橋。(中)歩行者専用の江ノ浦橋。(右)江ノ浦湾の漁船と江ノ浦橋。

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(左)江ノ浦湾に面する干物通り。(右)店先で干されるさんま。まる芳。

 

1.2 長島ショッピー中州店

JR紀伊長島駅から「魚まち」に向かう途中には海産物の品ぞろえに定評があるという長島ショッピー中州店がありました。並んでいる海産物の大半は長島産であり、東紀州地域では珍しくないというマンボウなどもありました。

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(左)長島産の干物。ムツ開き、アジ丸干、沖キス丸干、アジ開き、赤ムロ開き、さんま開き。(中)長島産さざえ。(右)長島産日帰りかつお

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(左)長島産マンボウのコワタ、イナダ切身。(中)長島産アカハタマス。(右)長島産ガシ(カサゴ)。

 

 

2. 紀北町紀伊長島図書室を訪れる

2.1 図書館の歴史

紀北町図書館 - Wikipedia(組織名)は紀北町紀伊長島図書室と紀北町海山図書室の2室からなります。2005年(平成17年)に紀北町が発足する前には両町に公共図書館は存在せず、2016年(平成28年)に紀北町図書館条例が制定されています。条例制定の際に紀北町多目的会館図書室が紀伊長島図書室に改称され、2017年(平成29年)3月11日には紀伊長島図書室が紀北町地域振興会館2階に移転しています。

あえて「図書館」ではなく「図書室」という名称を維持したのには理由があるのでしょうか。中央図書館の建設計画があるようには思えませんでした。図書館設置自治体でありながら「図書館」という名称の施設が存在しない珍しい自治体だと思われます。

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(左)紀伊長島図書室が入る紀北町地域振興会館。(右)紀伊長島図書室の入口。

 

紀北町地域振興会館は1971年(昭和46年)に紀伊長島町役場として建てられた建物であり、建物の外観には相応の古さを感じます。紀伊長島図書室には地域振興会館の正面入口ではなく"裏口"から入る必要があり、利用案内には「12時から13時までは閉室」という公民館図書室のような注意書きがありました。

このようなこともあって図書館の中身には期待していなかったのですが、図書館ではなく図書室と名乗っている理由がよくわからないほど図書館という言葉がふさわしい施設でした。フロア全体が図書室であり、床面積は406m2とのこと。

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(左)紀伊長島図書室の入口。(右)フロアマップ。

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(写真)窓の外に江ノ浦湾が見える閲覧席。

 

2.2 図書館の郷土資料

同一施設の3階には紀伊長島郷土資料室がありますが、2階の一部も郷土資料室の展示コーナーになっており、紀伊長島の歩みや古い写真などが展示されていました。

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郷土資料室の展示コーナーの手前には郷土資料コーナーがあり、ジャーナリストの北村博司、科学者の宮原章次、著作家大久保房男 - Wikipedia、児童文学者の小倉肇  - Wikipediaと、4人の紀伊長島町出身者の著書などが紹介されていました。

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(写真)紀伊長島出身者の著書など。

 

三重県図書館による図書館紹介によると、「漁業の町なので、水産関係の資料や魚類の図鑑などが充実しています」とのこと。保育社の原色図鑑、恒星社厚生閣の水産学シリーズ、水産業に関係する専門書などがありました。Wikipedia記事には「図書充実委員会を立ち上げて町民への募金活動を展開し、図書の寄贈を受けて所蔵冊数を増やしていった」とあり、町民から寄贈を受けた文献だと思われます。

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紀伊長島の映画館」に続きます。

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