振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

「ウィキペディアにゃウンvol.4 峯山海軍航空隊」に参加する

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(写真)河辺飛行場第4格納庫の遺構。

2021年(令和3年)10月31日、京都府京丹後市で開催された「ウィキペディアにゃウンvol.4 峯山海軍航空隊」に参加しました。

 

1. イベント概要

京丹後市では2016年(平成28年)から、金刀比羅神社狛猫 - Wikipediaを軸とした地域おこしイベントとしてこまねこまつり - Wikipediaが開催されています。

丹後地域の情報をオンライン上で発信することを目的とするプロジェクト「edit Tango」(エディットタンゴ、エディタン)によって、2018年(平成30年)からはこまねこまつりに関連するWikipedia記事を作成する「ウィキペディアにゃウン」も開催されています。今回は4回目の「ウィキペディアにゃウン」です。

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(写真)こまねこまつり

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(写真)edit Tango

 

1.1 スケジュール

午前中には河辺飛行場をテーマとするまちあるきイベント「こまねこウォーク・てくてくわがまち」、2020年(令和2年)に創業300年だった丹後ちりめん - Wikipediaをテーマとする「丹後ちりめんデジタルアーカイブ成果発表会」に参加し、午後からは金刀比羅神社会館を会場にWikipedia編集を行いました。

 

午前:まちあるき

09:00~11:00 「こまねこウォーク・てくてくわがまち」

11:00~12:00 「丹後ちりめんデジタルアーカイブ成果発表会」
(移動・昼休み)
 
午後:Wikipedia「河辺飛行場」作成
13:00-13:10 Wikipedia説明
13:10-16:40 文献調査・Wikipedia編集
16:40-16:55 成果発表・講評

 

 

2. まちあるき

2.0 峯山海軍航空基地 河辺飛行場

京丹後市峰山町と大宮町にまたがって峰山盆地(中郡平野)があり、国道312号沿いにロードサイド店舗が集積しています。大雑把にはショッピングセンターマインを北端、ドラッグコスモス大宮店を南端として、太平洋戦争中には長さ800m・幅80mの峯山海軍航空基地 河辺飛行場がありました。西端は国道312号、東端はその東側の道路です。

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(写真)現在の航空写真における滑走路の位置と河辺飛行場の遺構。Google マップ

 

かつて滑走路の北東側には、誘導路、格納庫、掩体壕、弾薬庫、燃料庫などがありました。第4格納庫、燃料庫、弾薬庫などの建物、飛行場の敷地と民間用地を隔てる軍民境界壁が現存しており、まちあるきではこれらの遺構をめぐりました。

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(写真)現在の航空写真における滑走路の位置と河辺飛行場の遺構。Google マップ

 

1945年(昭和20年)8月の終戦後には滑走路のアスファルトが剥がされ、もとの水田に戻す作業が行われました。1947年(昭和22年)11月1日の航空写真ではすでに水田となっているようですが、滑走路の痕跡も見えます。

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(写真)1947年11月1日の航空写真における滑走路の痕跡。地図・空中写真閲覧サービス

 

1975年(昭和50年)の航空写真には国道312号が見えますが、まだ国道の両側は水田ばかりです。集落からやや離れた場所にぽつんぽつんとある第4格納庫・燃料庫・弾薬庫の建物が目立ちます。

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(写真)1975年の航空写真における遺構。地理院地図

 

2.1 河辺飛行場の遺構巡り

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(写真)「こまねこウォーク・てくてくわがまち」のガイドを務める小山元孝さん。

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(写真)弾薬庫。

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(写真)弾薬庫。

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(写真)燃料庫。

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(写真)軍民境界壁。コンクリート構造物の右が飛行場敷地。

 

河辺飛行場に4棟あった格納庫の中で第4格納庫のみが現存しています。戦後には吉村機業の保税工場新町工場に転用され、1980年代後半まで丹後ちりめんの工場として使用されていました。

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(写真)第4格納庫。

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(左)第4格納庫で整列する隊員。(右)河辺飛行場で使用されていた九三式中間練習機「赤とんぼ」。

 

第4格納庫は上部と下部で勾配が異なる腰折れ屋根が特徴です。本来は鉄骨造とするべき大きさの屋根ですが、戦時中で鉄骨が不足していたことで「新興木構造」という構造が採用され、木材のみを用いて柱のない大空間を生み出しています。

戦時中に建てられた同様の構造の格納庫や体育館はしばしばあるようですが、『京丹後市のまちなみ・建築』(京丹後市役所、2017年)では近代建築の筆頭として第4格納庫が紹介されています。

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(写真)新興木構造と呼ばれる小屋組。

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(左・右)ちりめん工場の機械が残る第4格納庫内部。

 

800mという滑走路の長さを確保するために、竹野川支流の大谷川は河辺飛行場の建設時に河道が変更され、直線的に竹野川に合流する流路となりました。

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(写真)大谷川。

 

峯山海軍航空隊の本部や兵舎があったのは、現在の京都府営住宅口大野団地の場所。隊員は兵舎を出ると三ツ橋で竹野川を渡り、さらに海軍橋で大谷川を渡って河辺飛行場に入りました。海軍橋は当時のまま残っており、橋の北側にはモニュメントなどがある峯空園(みねくうえん)が整備されています。

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(写真)海軍橋。

 

1.2 丹後ちりめんデジタルアーカイブ

この日の午後には丹後織物工業組合中央加工場で京都府立大学による丹後ちりめんデジタルアーカイブ成果発表会が行われ、Zoomでオンライン配信されました。午前中にはデジタル化を行った『丹後縮緬同業組合公報』の展示会が行われ、アーカイブ事業に取り組んだ院生から事業の説明を聞きました。

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(写真)丹後織物工業組合中央加工場。

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(左)『丹後縮緬同業組合公報』丹後縮緬同業組合、第1号、1922年。(右)展示された公報類。

 

同じく丹後織物工業組合中央加工場で開催されていた丹後ちりめんの品評会である「TANGO TEXTILE EXHIBITION」(第72回丹後織物求評会)を見学しました。

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(左・右)「TANGO TEXTILE EXHIBITION」(第72回丹後織物求評会)。

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(写真)限定販売された「たんちょすBOX」。

 

 

3. Wikipedia「河辺飛行場」作成

午後には金刀比羅神社会館に移動して、河辺飛行場 - Wikipediaを作成しました。Wikipedia編集熟練者が骨格を作った記事を投稿したうえで、歴史節、施設節、遺構節、峯空園節などのセクション(節)ごとに分担を決めて編集に取り組んでいます。

関連する峯山海軍航空隊 - Wikipediaなどにも手を加えていますが、今回の編集対象記事は基本的に1記事だけということで、全員の進捗状況を把握しやすかった。また、何度もWikipediaイベントに参加したことがある方ばかりだったことで、成果(文章量)に大きな差が出ることもありませんでした。作成された記事はWikipedia日本語版内の推薦・投票を経て、2021年(令和3年)11月4日にメインページに掲載されています。

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(写真)Wikipedia編集の説明。

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(写真)編集中の参加者。

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(写真)編集中の参加者。