振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

焼津市を訪れる

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(写真)多数の遠洋漁船が停泊する焼津漁港。2020年4月。

2020年(令和2年)4月と2021年(令和3年)6月、静岡県焼津市を訪れました。「焼津市歴史民俗資料館を訪れる」や「焼津市の映画館」に続きます。

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1. 焼津市を歩く

焼津市静岡県中部にある自治体。駿河湾に面しており、カツオやマグロなどを水揚げする遠洋漁業の町として知られています。焼津漁港の水揚げ額は2016年(平成28年)から2020年(令和2年)まで全国1位だそうで、水揚げ量が全国1位の銚子漁港とともに日本一の漁港です。

 

1.1 駅前通

焼津周辺で古くからの町といえば藤枝(江戸時代の東海道藤枝宿)がありますが、藤枝における線路敷設反対運動(鉄道忌避)の結果として焼津駅が設置されたと言われることもあるようで、1889年(明治22年)の東海道線焼津駅設置が焼津の発展に寄与したことは間違いないようです。ただし、現在のJR焼津駅周辺は閑散としており、約13万人(静岡県第6位)という人口の多さや駅前のマンションの多さとのギャップが気になりました。

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(写真)JR焼津駅。2021年6月。

 

焼津駅前に立つと南西に伸びる静岡県道30号が目につきますが、実はペデストリアンデッキの奥に駅前通りという名称の通りが存在します。駅前通りの交通量は少ないものの、片側式アーケードがあって店舗数は多い。

2015年(平成27年)には静岡福祉大学のサテライトキャンパス(しずふく駅キャン)が開設されています。2020年(令和2年)には私設図書館「みんなの図書館さんかく」が開館し、さんかくは焼津市におけるコミュニティ活動の拠点となっているようです。この2021年(令和3年)7月4日には、駅前通りの突き当りにこども図書館とおもちゃ美術館を併せ持つターントクルこども館が開館予定。駅前通りにも親子連れが流れてくることが期待されます。

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(写真)駅前通り。2020年4月。

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(写真)駅前通り。奥は2021年7月4日開館予定のターントクルこども館。2021年6月。

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(写真)私設図書館「みんなの図書館さんかく」。いずれも2021年6月。

 

駅前通りと昭和通りの間には焼津市役所があり、隣接地に新庁舎の建設が進められています。2020年(令和2年)4月に訪れた際にはまだ躯体が立ち上がっていませんでしたが、この2021年(令和3年)6月にはすでに内装工事の段階にあり、9月に開庁する予定です。

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(写真)右は焼津市役所の現行庁舎。左は新庁舎。2021年6月。

 

1.2 昭和通り

明治時代以前の焼津で最も栄えていたのは浜通り(八雲通り)。1910年(明治43年)の大洪水後には内陸部に砂利が入れられて大正町が整備され、大正時代には繁栄の中心が大正町に移ります。1913年(大正2年)または1918年(大正7年)には劇場の「湊座」(港座)が開館し、大正町の発展の最大の要因になったそうです。

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(地図)明治時代の焼津の地形図。大正町の整備前今昔マップ on the web

 

昭和に入ると大正町は昭和通りに改称。戦後の1959年(昭和34年)には全蓋式アーケードが設置され、静岡県では比較的珍しい全蓋式アーケードの商店街となります。現在の静岡県中部の5市2町において、全蓋式アーケードの商店街は静岡市清水駅前銀座商店街のみだと思われます。

日本の映画人口がピークを迎えたのは1958年(昭和33年)、日本の映画館数がピークを迎えたのは1960年(昭和35年)ですが、湊座は1961年(昭和36年)にはもう閉館します。商店街の繁栄に対して早すぎる閉館が奇妙にも感じます。『焼津・藤枝の昭和』(いき出版、2017年)にはアーケード時代の昭和通りの写真が多数掲載されています。

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(写真)アーケードがない昭和20年代昭和通りや全蓋式アーケードがある2001年の昭和通りが掲載された文献。『やきつべ 明治・大正・昭和焼津の情景』焼津市、2001年。

 

2001年(平成13年)には老朽化していた全蓋式アーケードが撤去されました。下の写真は商店が多い場所で撮影していますが、実際には建物の歯抜けがひどい上に人通りがほとんどなく、スピーカーから絶えず流れてくる音楽が空疎に感じます。

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(写真)昭和通りの2丁目。奥は焼津市役所。2021年6月。

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(左)昭和通りの1丁目。(右)昭和通りの4丁目。いずれも2021年6月。

 

1.3 神武通り

昭和通りの南側に接続しているのが神武通り。神武通り商店街の竣工を祝う1971年(昭和46年)の写真がありますが、同時代に見える建物の多くが竣工したのがこの時なのでしょうか。1971年以前に創業している商店も多いようであり、目につく店舗では和菓子屋の御菓子司 角屋は1910年(明治43年)創業、正秀刃物店は1926年(大正15年)創業、喫茶店のキャノンは1956年(昭和31年)創業です。

1975年(昭和50年)から2013年(平成25年)まで、神武通りの西側には5階建ての商業ビルである焼津ビル(核テナントは西友焼津店→スーパーもちづき焼津店)があり、神武通りの個人商店群と共存していたようです。焼津ビルの跡地はディスカウントストアのドラッグコスモス焼津本町店。

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(写真)アーチがある神武通りの北端部。2021年6月。

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(写真)神武通りの南部。左は喫茶店のキャノン。右は港書店。 いずれも2021年6月。

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(左)神武通りのアーチと街路時計。(右)神武通り商店街が竣工した1971年の写真。いずれも2021年6月。

 

1.4 浅草通りなど

昭和通りや神武通りより内陸側に並行しているのが浅草通り。繁華街である昭和通りや神武通りに対して歓楽街の要素が強く、飲食店が多かったようです。東京の浅草六区を見本としており、1928年(昭和3年)には劇場の「浅草劇場」も開館します。浅草劇場跡地は静岡県道416号に面していますが、この県道が開通したのは戦後の1957年(昭和32年)のことであり、浅草劇場は浅草通りのほうを向いていました。

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(写真)浅草通り。2020年4月。

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(写真)個性的な形状の街路灯。2021年6月。

 

昭和通りと交差する浜ノ堀緑地、神武通りの南端部と交差する禅門グリーンロードなどは堀を埋め立てて開通した道路です。これらはいずれも黒石川に流入していましたが、黒石川の下流部は海岸線と並行して流れています。江戸時代に材木を運搬するために開削した堀(運河)だそうで、太平洋岸なのに南から北に流れる河川は珍しい。

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(左)かつては堀だった浜ノ堀緑地。2021年6月。(右)かつては堀だった禅門グリーンロード。2020年4月。

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(写真)黒石川。2020年4月。

 

1.5 焼津漁業資料館

焼津漁港を構成する焼津港の近くには焼津漁業資料館があります。1階では木造船や鰹漁船の実寸大ブリッジが目を引きます。2階では焼津の街を写した古い写真の展示を行っており、劇場の湊座の写真もありました。

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(写真)焼津漁業資料館の展示。2020年4月。

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(写真)焼津漁業資料館の展示。湊座の写真。 2020年4月。

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(写真)焼津漁協に加盟する船舶の組合が並ぶ商工案内。『焼津市』職業交通社、1953年。

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(写真)深層水ミュージアム。2020年4月。