振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

「ウィキペディアにゃウン vol.3」に参加する

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(写真)2018年に閉校となった京丹後市丹波小学校。

2020年(令和2年)9月20日京都府京丹後市峰山町で行われた「ウィキペディアにゃウン vol.3」に参加しました。この週末に開催された地域おこしイベント「こまねこまつり」の一企画として実施されています。

 

1. イベント概要

1.1 こまねこまつり

2016年(平成28年)から峰山町金刀比羅神社 (京丹後市) - Wikipedia周辺で毎年開催されている「こまねこまつり - Wikipedia」(公式サイト)。全国的に見て珍しい狛猫(狛犬の変種)の存在に着想を得た地域おこしイベントであり、「ねこ」「丹後ちりめん - Wikipedia」「現代アート」などがキーワードのようです。2018年(平成28年)にはこまねこまつりの一企画としてウィキペディア編集イベント「ウィキペディアにゃウン」が初開催され、ウィキペディアにゃウンの開催は今年で3回目です。

丹後地方における絹織物の歴史は享保5年(1720年)に遡るといい、2020年(令和2年)は丹後ちりめん創業300周年の年でした。本来ならばこまねこまつりにとって節目となる年であり、コロナ禍の影響で大々的な宣伝を行えなかったものの、感染症予防対策を入念に行った上で今年も開催されました。なお、2020年(令和2年)9月1日付で金刀比羅神社の狛猫が京丹後市指定文化財に指定されています。

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(左)2020年版こまねこまつりのポスター。(右)金刀比羅神社

 

1.2 参加者

参加者は約15人であり、京丹後市網野町弥栄町や大宮町の在住者、阪神間地域在住のウィキペディアンなどがいました。また、京都府立大学地域創生coc+プログラム(地域社会との連携強化による地域課題解決の取り組み)の一環で、京都府立大学の公共政策学部と文学部から学生3人がイベントに参加してくださいました。

 

2. 丹波区の街歩き

今回のイベントは京都丹後鉄道峰山駅に集合し、峰山市街地の北東にある丹波区を歩きました。集合場所の峰山駅から丹波区まで、丹波区から編集会場の金刀比羅神社までは1-2km離れているため、参加者の自家用車に分乗しています。

街歩きガイドはこまねこまつり実行委員会ウィキペディアにゃウン事務局の小山元孝さん。小山さんは丹後における神社の研究をされており、2016年度に編纂が完了した京丹後市史編さん事業にも深く関わっています。

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(写真)丹波小学校閉校之碑の前で説明する街歩きガイドの小山さん。 

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(左)丹波区を歩く参加者。(右)相光寺。

 

参加者は旧丹波小学校、相光寺、多久神社、湧田山古墳群、丹波の大溝の各スポットを歩きました。山裾にある多久神社は式内社であり、立派な彫物や女性画のある社殿内部を近くから鑑賞できる珍しい構造でした。拝殿の中央部を通行できる割拝殿という形式は京都府や丹後地方に多いようです。

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(写真)多久神社。(左)社名標と鳥居。(右)社殿。

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(写真)多久神社。(左)丹後地方に多い割拝殿。(中)社殿の立派な彫刻。(右)社殿の内部。

 

湧田山古墳群では比高40m分の山登りも行いました。地形のふくらみ全体が古墳となっている網野銚子山古墳と比べるとわかりにくい古墳ですが、張られているロープを支えにしながら墳墓の頂上まで登ったことで、全長約100mという規模感を確認できました。

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(写真)湧田山古墳群がある山を登る参加者。

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(左)丹後半島最大の河川である竹野川。(右)小西川と丹波の大溝の交差部。

 

3. ウィキペディア編集

3.1 文献

今回のイベントでは京丹後市立峰山図書館・京丹後市立あみの図書館、京都府立図書館、京都府久美浜高校図書館などから文献が集められています。峰山図書館や久美浜高校図書館は郷土に関する新聞記事のスクラップブックを作成しています。新聞記事は書籍での言及とは異なる視点で書かれているため、丹波小学校の記事などに役立ちました。

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(写真)準備された文献。(左)広報みねやまや峰山町制要覧。(右)京丹後市史など。

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(写真)峰山町に関するスクラップブック。丹波小学校の新聞記事。

 

3.2 編集記事

今回のイベントでは8記事が新規作成、2記事が加筆されました。大字、古墳、神社、郷土芸能、寺院、石造物、用水路、小学校、律令国、郡と、編集記事のジャンルはバラエティ豊かであり、峰山町丹波(や峰山町)について広い視点から情報を発信できたのではないかと思います。イベント終了後もしばらくは参加者によって編集が続けられました。新規作成された8記事のうち7記事は投票によって質が評価され、Wikipediaのメインページに掲載されています。

峰山町丹波 - Wikipedia(新規作成)

湧田山古墳群 - Wikipedia(新規作成)

多久神社 - Wikipedia(新規作成)

丹波の芝むくり - Wikipedia(新規作成)

縁城寺 - Wikipedia(新規作成)

狛猫 - Wikipedia(新規作成)

丹波の大溝 - Wikipedia(新規作成)

京丹後市立丹波小学校 - Wikipedia(新規作成)

丹波国 - Wikipedia(加筆)

中郡 (京都府) - Wikipedia(加筆)

 

4. 旧丹波小学校

私は峰山町丹波の地区記事と京丹後市丹波小学校の学校記事を新規作成しました。丹波区の中で特に興味を持った題材は丹波小学校です。児童数の減少によって2018年(平成30年)に閉校となり、組織としては廃止されたものの校舎が残っているという状況。Googleマップや最新の道路地図からは名前が消え、ウェブ検索でも情報が見えにくくなりつつある学校です。

当面は地域の施設として活用されるようですが、校舎が取り壊される日はいつか来ます。丹波小学校の記憶は地域住民の頭の中からも徐々に消えていくでしょうが、記憶が薄れたとしても記録が残っている世界がいいですね。

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 (左)丹波小学校の二宮金次郎像。(右)丹波小学校の遊具。