振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

西尾市立図書館を訪れる

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(写真)花時計と西尾市立図書館。2017年7月。マリーゴールドなど主体の夏仕様。

1. 西尾市を訪れる

愛知県西尾市は人口約17万人の自治体。矢作川の最下流部に位置する城下町であり、南側は三河湾に面しています。市北西部の丘陵には西尾茶の茶畑が広がっており、西尾線を運行する名鉄は抹茶スイーツを押し出したキャンペーンを張っています。

2011年には幡豆郡の3町(一色町吉良町幡豆町)を編入したことで、三河湾に浮かぶ佐久島西尾市域となりました。2018年9月には久々に佐久島を訪れ、レンタサイクルで島内を散策しました。

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(地図)愛知県における西尾市の位置。©OpenStreetMap contributor

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(地図)西尾市を構成する旧自治体と4図書館の位置。©OpenStreetMap contributor

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(写真)三河湾に浮かぶ佐久島のイメージ。

 

西尾市立一色学びの館、西尾市立吉良図書館、西尾市立幡豆図書館はいずれも訪問済み。館内では写真を撮らせてもらいました。開館年は1984年(吉良)、1988年(一色)、1992年(幡豆)とやや古いものの、一色学びの館は2018年4月にリニューアルオープンして館内が一新されています。撮影させてもらった館内の写真はWikimedia Commonsにアップロードしています。

Category:Isshiki Manabi No Yakata - Wikimedia Commons

Category:Nishio City Kira Library - Wikimedia Commons

Category:Nishio City Hazu Library - Wikimedia Commons

ayc.hatenablog.com

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(左)西尾市立一色学びの館。(中)西尾市立吉良図書館。(右)西尾市立幡豆図書館。

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(左)一色学びの館の「五感ゾーン」。(中)吉良図書館の郷土の作家コーナー。(右)幡豆図書館の特集展示。

2. 西尾市岩瀬文庫を訪れる

名鉄西尾線西尾駅から旧市街地を通って徒歩20分。鶴城公園内に西尾市岩瀬文庫 - Wikipedia西尾市立図書館 - Wikipediaがあります。1908年に実業家の岩瀬弥助私立図書館として開館させた岩瀬文庫は、明治時代の開館ながら古典籍が中心でした。左記のWikipedia記事2記事は加筆を行いましたが、岩瀬弥助 - Wikipediaの加筆はこれから。“公共図書館” という概念がなかった時代に、屋敷の使用人にも目的を告げずに古書をひたすら集め、蔵書数10万冊(!)という岩瀬文庫を開館させた人物。調べがいがあります。

1955年には岩瀬文庫の蔵書と建物が財団法人から西尾市に移管され、1983年まで市立図書館として使われました。1983年に西尾市立図書館の現行館が開館し、煉瓦造の旧書庫はお役御免。2000年代には新しい閲覧室が建設され、2003年に博物館としての西尾市岩瀬文庫が開館しています。

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(左)岩瀬文庫旧書庫。登録有形文化財。(右)西尾市岩瀬文庫。左が旧書庫、その奥が新書庫。

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(左)「岩瀬弥助翁之像」。(右)図書館脇の庭園。

 

3. 西尾市立図書館を訪れる

1階「幼児・児童・ヤングアダルト

西尾市立図書館は3階建てであり、1階が児童書、2階が一般書、3階がブラウジングコーナーや学習室となっています。1980年代前半の建物なので階段はやや急で、年配者は3階まで上がるのがつらいかも。

西尾市立図書館の建物入口脇には西尾市立図書館おもちゃ館 - Wikipedia(旧岩瀬文庫児童館)があり、1925年頃竣工のこの建物は「日本初の児童館」とされることもあるようです。現在は長期休館中とのことで、今後の活用方法が気になります。

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(左)絵本・紙芝居コーナー。(中)おはなし室。(右)児童テーマ展示「岩瀬弥助」。

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(左)学習漫画コーナー。いらすとやまみれ。(中)児童参考図書。ポプラディア多数。(右)ヤングアダルトコーナー。ドラゴン推し。

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(写真)西尾市立図書館おもちゃ館(旧岩瀬文庫児童館)。登録有形文化財

 

2階「一般開架・参考資料・郷土資料」

2階は西尾市立図書館のメインフロア。カウンターの左手が文芸書、カウンターの正面が一般書、カウンターの右手が参考図書・郷土資料です。

私が図書館を訪れる時には、その町の歴史や産業をざっくり調べてみることにしています。私にとって西尾市と言えば「西尾茶 - Wikipedia」や「佐久島 - Wikipedia」ですが、西尾茶にしても佐久島にしてもWikipedia記事が一番よくまとまっている印象。いちおう「茶」に関する書籍は別置されているのですが、見落としてしまいがちな棚にあるし、冊数は少ないです。このあたりは1980年代開館の古い図書館だということを強く感じます。

西尾市の郷土資料については掘り出し物が多い印象を受けました。近隣の同規模自治体、例えば安城市図書情報館や刈谷市中央図書館と比べても多いです。

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(写真)2階中央部。真ん中にカウンター。

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一般開架。(左・中)書架。(右)個人全集コーナー。

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一般開架。(左)書架。(中)テーマ展示「動物」。(右)自動貸出機。

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(左)参考資料。(右)郷土資料。



3階「新聞雑誌・視聴覚資料・学習室・会議室」

郷土出身の偉人として、小説家の尾崎士郎、詩人の茨木のり子、評論家の外山滋比古については目立つ展示コーナーが設けられています。茨木のり子の実家は旧一色町域、育ったのは旧西尾市域ということで、少女時代の日記には戦前の西尾市にあった映画館「松栄館」も登場します。なお、尾崎士郎については吉良図書館に隣接して尾崎士郎記念館があり、吉良図書館内にも特設コーナーが設けられています。

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(左)雑誌コーナー。(右)持ち込みパソコン室。

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(左)尾崎士郎コーナー、茨木のり子コーナー。(右)外山滋比古コーナー。

 

4. 西尾市立図書館のサル

西尾市立図書館の公式サイト、題字の横にはサルのイラストが描かれています。動物をアイコンに使う図書館は珍しくないですが、かつて西尾市立図書館には実際にサルがいたのだそうです。昭和初期の岩瀬文庫の絵葉書には鳥かごのような猿舎が見えます。猿舎があったのは現在は芝生広場となっている位置のようです。サルはいつ頃までいたのでしょうか。

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(写真)公式ウェブサイト。サルのイラストがある。(右)昭和初期の岩瀬文庫。鳥かごのような猿舎がある。1946年以前に撮影された写真であるため旧著作権法の規定により保護期間が満了している。パブリックドメイン

 

まずはサルが到着した頃について調べます。西尾市立図書館『図書館のあゆみ 平成29年度版』の「沿革」には、サルについての言及自体がいっさいありません。しかし、1994年刊行の『西尾の図書館10年誌』には「1955年にジャワ島産1つがい・台湾産1つがいのサルがやってきた」こと、「1991年10月に猿舎が改築され、ニホンザル7匹に入れ替えられた」ことが書かれていました。1990年代の事業年報にもこの2点は掲載されていましたが、いつサルがいなくなったのかはわかりませんでした。

1955年頃の『広報西尾』を読んでみると、「さっそく愛嬌をふりまいて市民の皆様に可愛がって戴くんだと張切っています」と書かれていました。また「鯉、鮒、あひる、草花等も現物寄託として受付ける」とも書かれており、動物の現物寄託という現代ではありえないことが行われていたようです。

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『広報西尾』1955年7月10日号。公表後50年が経過した団体名義の著作物であるため保護期間が満了している。パブリックドメイン。(左)「市立図書館 岩瀬文庫 庭園 設備を充実する市民運動」。(右)「図書館にお猿さん着く 名前をつけて下さい」。

 

サルがいなくなったのはいつ頃でしょうか。2階のメインカウンターでレファレンスしてみると、最初に対応してくださった20代の職員は「図書館に来たばかりなのでわからない」とのことでしたが、40代(?)の係長さん(?)を経由して館長さんから直接話を聞くことができました。館長さんによると、「サルは1955年からおり、何度か世代交代を繰り返した。近所のおばさんが世話をしていたが、公園の改修のために猿舎を取り壊す必要があり、ニホンザルに入れ替えられてからわずか1年後の1992年に日本モンキーセンターに移された」とのことだそうです。

専任の飼育員がいなかったのはもちろん、図書館職員ではなく “近所のおばさん” が世話をしていたとは驚き。“近所のおばさん” が世話をできない日はどうしてたんでしょう。なお、サルがいなくなった経緯について『広報にしお』などでは確認できておらず、今のところ “館長さんの記憶” のみしかないので、Wikipediaには記載できません。

館長さんの話については文献で裏付けを取りたいです。西尾市立図書館側の資料だけでなく、日本モンキーセンター側の資料も探れば、このニホンザル7匹がどうなったのかわかるかもしれません。

 

5. 西尾市立図書館関連のWikipedia記事

西尾市立図書館に関連して新規作成/加筆したWikipedia記事は以下の通り。

 

西尾市立図書館 - Wikipedia - 大幅加筆

西尾市立一色学びの館 - Wikipedia - 新規作成

西尾市立吉良図書館 - Wikipedia - 新規作成

西尾市立幡豆図書館 - Wikipedia - 新規作成

西尾市岩瀬文庫 - Wikipedia - 加筆

西尾市立図書館おもちゃ館 - Wikipedia - 新規作成

西原吉治郎 - Wikipedia - 新規作成

岩瀬弥助 - Wikipedia - 今後加筆予定

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(写真)西尾市立図書館。2018年12月。ハボタンとパンジー主体の冬仕様。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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