振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

福智町図書館・歴史資料館「ふくちのち」を訪れる(1)

台風5号が去った2017年8月9日と8月10日には九州北部を小旅行。8月9日には長崎市立図書館、諫早市諫早図書館、武雄市図書館を訪れ、8月10日には福智町図書館・歴史資料館「ふくちのち」を訪れました。館内については広報ふくちのフロアガイドも参照してください。

http://www.town.fukuchi.lg.jp/pdf/kouhou/170401/p02_09.pdf

 

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このブログにおける写真は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 3.0 非移植 ライセンスの下に提供されています。撮影者は「Asturio Cantabrio」です。ただしオリジナルサイズの写真の多くはCategory:Fukuchinochi - Wikimedia Commonsにアップロードしています。

 

 

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福智町の概要

福岡県を4地域に分けると筑豊地方に含まれる田川郡福智町は、平成の大合併で3町が合併して発足した町。田川市直方市の中間付近に位置し、都市圏では田川都市圏または北九州都市圏に含まれるようです。

福智町の人口は約22,000人。旧赤池町(合併時9,500人)、旧金田町(合併時8,000人)、旧方城町(合併時8,000人)は規模が似通っており、郡名を冠する自治体(田川市)がすでにあったため、町の北西端に位置する福智山から福智町という名称が採用されたようです。地形図を見ると旧金田町と旧方城町にはベタ塗りの集落がありますが、旧赤池町にはベタ塗り部分がなく、ふくちのちの西方にある赤池ニュータウンが人口を押し上げていたようです。福智町役場は旧金田町に置かれています。

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 (写真)これが福智山らしい。平成筑豊鉄道の車窓からはもっと優美な姿が見えた。

 

 

ふくちのちを訪れる

 福智町は福岡市からも北九州市からもほどほどに遠い。この日の朝は鳥栖駅から博多駅を経由し、直方駅平成筑豊鉄道に乗り換えるルートで福智町に向かいました。平成筑豊鉄道では前々日に通った長崎本線との快適さの違いを感じます。単行の気動車ではありますが、全線複線で線形がよく、1時間に2本走っています。直方駅から赤池駅までわずか8.5kmの距離に7駅があり、多くは第3セクター転換後に設置された駅だそうです。

 旧赤池町域では堀割の中を進み、ふくちのちからほぼ同じくらいの距離にふれあい生力駅赤池駅があります。行きは赤池駅で降りて図書館まで歩き、帰りはふれあい生力駅から乗りました。

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(左)平成筑豊鉄道気動車直方駅。(右)ふくちのち最寄駅のふれあい生力駅。直方方面は森の中に突っ込んでいく、雰囲気のある駅。

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(写真)ふくちのち。

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 (写真)入口から奥を見渡す。

 

 

カフェ「としょパン」、キオスク

 まず気になるのは入って左側にあるカフェ「としょパン」。図書館部分とのあいだにはこれといった仕切りがない。これだけ開放的な図書館カフェははじめてです。蓋つきの飲み物は館内の持ち歩き自由。パンなどの食べ物はカフェ部分で食べる必要があります。

 このカフェのメニューは通常料金でも良心的な価格設定ですが、図書カードを持っているとジュースが200円、ソフトクリームが150円。これは安い。焼き直ししてもらったベーグルとアイスコーヒーを注文しました。ひととおり館内を歩いた後にはこのカフェで鳥越館長を見つけました。

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 カフェの手前にある「キオスク」(オリジナルグッズなどの売店)、逆サイドにある大型モニターも目につきます。キオスクではふくちのちオリジナルのトートバッグやクリアファイルやてぬぐい、地元産のジャムなどが販売されていましたが、備前焼のカップを販売している瀬戸内市民図書館「もみわ広場」とは違って、福智町名産の上野焼はみつけられなかった。図書館で本を売っているのは珍しいです。大型モニターでは館長の姿がちらりと写りました。

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 (左)「キオスク」。(右)大型モニター。

 

 

写真撮影に対する対応

 ふくちのちは写真撮影可能な図書館です。「無許可撮影禁止」(≠許可を得れば撮影できる)という表示をしている館は珍しい。1階奥にあるカウンターで名前と所属を書くと、シール式の撮影許可証がもらえます。これまで140館弱で写真撮影の可否を尋ねましたが、シールを渡された館は記憶がありません。「撮影許可申請書への記入&ネックストラップor腕章」な館よりも敷居が低く、「(撮影許可申請書などがなく)自由に撮影可能」な館よりも敷居が高いのですが、許可を得てからでないと撮影させないところには好感が持てます。個人的な好みかもしれませんが、なんの許可もなく自由に写真撮影させる館には不安を覚えます。

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 (右)シール式の撮影許可証。

 

 

新聞・雑誌コーナー

 カフェの隣は新聞・雑誌コーナー。新聞は1週間分が並べて置かれています。なかなか見ない形態。雑誌の中には雑誌スポンサーが提供しているものもあり、鳥越館長がスポンサーになっている雑誌もありました。もしかして個人でもスポンサーになれるのかな。新聞・雑誌コーナーは南面にあり、建物南側にある芝生の広場が見えます。

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歴史資料館部分

  図書館部分と歴史資料館部分の境界を感じさせないフロアの構造は瀬戸内市民図書館「もみわ広場」に似ている。どちらが先ということはないと思うけれど。瀬戸内市福智町は名産として焼き物があるのも似ています。館内に入って正面の壁には旧赤池町役場時代から上野焼が飾られています。

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 実は建物入口とカフェの間には影の薄い企画展示室があります。この時は「福智町と戦争」に関する展示を行っていました。

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こどもひろば(児童書)

 1階の左手奥は児童書です。奥側の書架や机・椅子はカラフルで楽しげ。手前側は死角が多く取られていて隠れ家的な雰囲気があります。

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(写真)手前側の書架。円形部分は「おはなしのへや」。

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(写真)奥側の書架。

 

各種ラボ

 ふくちのちの1階には「ものづくりラボ」と「クッキングラボ」が、2階には音ラボが、計3つのラボがあります。この中では特に「ものづくりラボ」が印象に残りました(※ただし写真は撮り忘れた)。3Dプリンターレーザー加工機、ミリングマシンなどが置いてあるこのラボは入口からすぐの場所にあり、ガラス張りのため中がよく見えます。一般的な図書館利用者が気付かないような奥まった場所にある安城市図書情報館とはまったく考え方が異なるのでしょう。

 3Dプリンターにしてもレーザー加工機にしても、専門知識がないと使いこなせない設備です。この町の規模や特性を考えると過剰な設備、ほとんど使われないままホコリを被ってしまう設備ではないかと思っていたのですが、実際に図書館を訪れてみるとまったく違う印象に変わりました。ものづくりラボは子ども向けのイベントで頻繁に利用されており、容易にこれらの設備を眺めたり触ったりできます。子どもだけでは使いこなせないけれど、身近な場所にでーんと置いてあるだけで想像力を育めそうな気がしてきます。勉強して知識を付ければ使えるようになる、ということに気付く道具にもなります。館内の一等地にこのようなラボを設置するのは勇気がいりますが、このふくちのちから他館に真似されていくような設備である気がします。

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(写真)クッキングラボ。

 

 

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その2につづきます。

ayc.hatenablog.com