振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

美濃白鳥の映画館

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(写真)郡上市図書館が入る白鳥ふれあい創造館。

 

2019年夏、岐阜県郡上市の美濃白鳥(旧郡上郡白鳥町)を訪れました。美濃白鳥には郡上市図書館本館があり、かつては「白鳥劇場」「スワン劇場」「大島座」という3館の映画館がありました。

美濃白鳥の映画館について調べたことは「岐阜県の映画館 - 消えた映画館の記憶」に掲載しており、また映画館の所在地については「消えた映画館の記憶地図(全国版) - Google My Maps」にマッピングしています。

hekikaicinema.memo.wiki

www.google.com

 

私は美濃加茂市美濃太田駅から長良川鉄道郡上市を訪れましたが、鉄道で郡上市を訪れる観光客はそれほど多くないと思われます。東海地方と北陸地方を結ぶルートとして東海北陸自動車道があり、白鳥インターチェンジを降りればすぐ美濃白鳥市街地だからです。長良川鉄道で美濃白鳥に向かう列車はわずか11-12往復/日であり、1-2時間に1本という運行頻度はスケジュールの制約が大きいです。

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(左)長良川鉄道越美南線美濃白鳥駅。(右)美濃白鳥駅前広場にある白鳥おどりの像。

 

1. 郡上市図書館(本館)

1.1 郡上市の図書館

郡上市図書館は美濃白鳥駅の北東にある白鳥ふれあい創造館にあります。郡上市図書館は郡上市発足前の1994年(平成6年)に開館した図書館であり、当時は白鳥町立図書館という名称でした。緑色の屋根とピンク色/ベージュ色の壁は1990年代の図書館によくみられる色彩。人口1万5000人弱の町としては大きな施設であり、この時代だからこそ建設できた施設であるとも感じました。

組織としての郡上市図書館は、施設としての郡上市図書館(本館)を含む7施設(1本館1分館5分室)からなります。総称としての組織名と単独の施設名は分けてほしい。本館の蔵書数は約11万冊、はちまん分館の蔵書数は約6万冊。延床面積でも本館のほうが広いと思われますが、規模にそれほど大きな差があるわけではありません。「郡上市しろとり図書館」と「郡上市はちまん図書館」の並列ではダメだったのか気になりました。

 

郡上市図書館(組織)を構成する7施設

本館 郡上市図書館・・・・・・・・旧白鳥町(郡上市第2の町)

分館 郡上市図書館はちまん分館・・旧八幡町(郡上市最大の町、郡上市役所所在地)

分室 郡上市図書館やまと分室・・・旧大和町

分室 郡上市図書館たかす分室・・・旧高鷲村

分室 郡上市図書館みなみ分室・・・旧美並村

分室 郡上市図書館めいほう分室・・旧明宝村

分室 郡上市図書館わら分室・・・・旧和良村

 

1.2 福井県境に近い図書館

私が乗車した長良川鉄道越美南線は、岐阜県福井県を結ぶ越美線の一部として建設された路線です。美濃白鳥市街地から岐阜県福井県境までの距離はわずか3km。長良川鉄道の終着点である北濃駅はさらに福井県に近く、岐阜県庁までの距離と福井県庁までの距離がほぼ等しい(約60km)。結局越美線は全通せずに終わりましたが、郡上市図書館は福井県奥越地方の『大野市史』や『勝山市史』などを所蔵しており、私が訪れた際にも司書と一緒に福井県に関する文献を探している方がいました。

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(左)郡上市図書館が入る白鳥ふれあい創造館。(右)郡上市図書館の入口。

 

2. 美濃白鳥を歩く

2.1 美濃白鳥市街地の現況

図書館を訪れた後には美濃白鳥市街地を歩きました。長良川鉄道の西200mに閉校する上本町商店街と栄町商店街が美濃白鳥のメインストリートであり、メインストリートに並行する形で新栄町商店街が、メインストリートに直行する形で駅前通りや橋本町商店街があります。これらの旧市街地には古い町屋や商店が残っており、メインストリートながら車はほとんど通りません。市街地の西側には長良川が流れ、その西側には国道156号があります。車はメインストリートを迂回して国道156号を通ってしまうようであり、国道156号沿いにはいくつもロードサイド店舗が並んでいるようです。

長良川鉄道の東側には岐阜県立郡上北高校がありますが、定員は3クラス120人と少なく、岐阜県によって高校再編統合の検討対象になっています。郡上北高校は郡上市以外からの入学者がほぼいない高校だそうで、2019年度には進学コース、観光・ビジネスコース、福祉・介護コース、地域産業コースという多様なコースを設置して、高校生の市外への流出を食い止めようとしているようです。

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(地図)国土地理院 地理院地図に加筆

 

2.2 橋本町通り・駅前通

旧市街地北端の橋本町通りには料理旅館「浅野屋」が健在です。推理小説作家の内田康夫は浅野屋で執筆したことがあり、浅見光彦シリーズの『白鳥殺人事件』(1989年)には浅野屋も登場するようです。

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(写真)橋本町通り。右は浅野屋旅館。

 

美濃白鳥の旧市街地でいちばん店舗密度が濃いと思われるのが駅前通り。駅前通りには寺田書店がありますが、訪れたのが日曜日だったせいか閉店していました。土産物店「とおやま」には数多くの人形が展示された別棟がありま、館長の遠山一男が収集した日本各地の郷土玩具・土人形・土鈴を展示している日本土鈴館 - Wikipediaと関連があるのかもしれません。なお、橋本町通りも駅前通りも歩いている観光客などはいません。

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(左)美濃白鳥駅から見た駅前通り。(右)駅前通りから見た美濃白鳥駅。

 

2.3 上本町通り

メインストリートの北側半分が上本町通りであり、南側半分が栄町通りです。メインストリートには袖壁のある木造の民家が多く、郡上八幡ほどではありませんが見ごたえがありました。

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(写真)上本町通り。(左)南を向いて撮影。(右)北を向いて撮影。正面奥は来通寺。

 

上本町通りにある布屋 原酒造場は元文5年(1740年)創業の酒蔵。公式サイトでは「布屋」という屋号の由来について長々と説明しており、要するに "源平時代に伊東左近衛権藤原勝が白布を買い求めた逸話に因んでいる" ということだと思います。もっとざっくり言えば、元文5年の創業時の当主がこの昔話に共感したから名づけただけのようです。

上本町通理に面した主屋は1923年(大正12年)竣工ですが、文化財指定・登録はされていません。原酒造場の40m北には1907年(明治40年)竣工の原邸があり、原酒造場に関連した邸宅だと思われますが、やはり文化財指定・登録はされていません。

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 (写真)上本町通り。(左)北を向いて撮影。左は布屋 原酒造場。正面奥は来通寺。(右)原邸。

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(写真)布屋 原酒造場。

 

2.4 栄町通り

メインストリートの南側半分は栄町通り。目立つ建物として3階建ての角忠旅館があります。"ひるがの高原" と "郡上八幡" という観光地に挟まれているせいか、美濃白鳥に宿泊施設は多くありません。

栄町通りの道路上には白鳥おどり - Wikipediaの横断幕がかかっていました。郡上おどり - Wikipedia(32夜)と同じように夏の間ずっと続けられる盆踊りであり、各町が持ち回りで会場となります。この日の夜は浅野屋がある橋本町が会場になるようです。

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(写真)栄町通り。(左)右は角忠旅館。(右)鉢植えの緑が目に優しい、袖壁のある民家。

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(写真)栄町通り。(左)白鳥おどりの横断幕。(右)右はそば屋「更科」。

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(写真)郡上市役所白鳥庁舎。

 

3. 美濃白鳥の映画館

映画館名簿によると、郡上郡白鳥町にはかつて3館の映画館があり、うち2館が美濃白鳥市街地にありました。旧市街地で50年以上営業していそうな店舗を探しましたが、メインストリートには気軽に入れる店舗が見あたらなかったため、新栄町商店街にある「白鳥まんじゅう」(店名)に入り、70歳になるという店主に話を聞きました。

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(写真)新栄町通り。中央左が「白鳥まんじゅう」(店名)。

 

3.1 白鳥劇場(-1960年代後半)

所在地 : 岐阜県郡上郡白鳥町1055
開館年 : 1950年以前
閉館年 : 1966年以後1969年以前
1950年の映画館名簿では「白鳥劇場」。1953年・1955年の映画館名簿には掲載されていない。1960年・1963年・1966年の映画館名簿では「白鳥劇場」。1969年の映画館名簿には掲載されていない。

 

1966年の映画館名簿には白鳥劇場の所在地として、「郡上郡白鳥町1055」と番地まで掲載されています。Google mapsでこの番地が指し示す地点は角忠旅館の裏手であり、現在はサンテック株式会社の敷地や道路(私道?)用地になっているようです。白鳥まんじゅうの店主によるとこの地点で間違いないとのことで、店主は白鳥劇場のことを「ハクゲキ」(白劇)と呼びました。

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(左)手前が白鳥劇場跡地と思われる地点。中央奥に角忠旅館。(右)白鳥劇場の東側を流れる水路。

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(写真)西側奥に白鳥劇場があった角忠旅館。

 

3.2 スワン劇場(-1960年代前半)

所在地 : 岐阜県郡上郡白鳥町大字白鳥
開館年 : 1955年以後1958年以前
閉館年 : 1963年以後1966年以前
1955年の映画館名簿には掲載されていない。1958年・1960年・1963年の映画館名簿では「スワン劇場」。1966年の映画館名簿には掲載されていない。

 

映画館名簿ではスワン劇場の所在地は「白鳥町大字白鳥」としかわかりませんでしたが、郡上市図書館での文献調査では「美濃白鳥駅前」にまで範囲を絞ることができました。白鳥まんじゅうの店主は「スワン」と呼び、新栄町商店街の山田薬局の位置にあったようです。白鳥まんじゅうのおかみさんは美濃白鳥出身ではないそうですがスワン劇場の所在地を知っており、道路に出て場所を説明してくださいました。白鳥まんじゅうからの距離はわずか70mであり、白鳥まんじゅうからも山田薬局の緑色の看板が見えます。

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3.3 大島座(-1960年代初頭)

所在地 : 岐阜県郡上郡白鳥町大島
開館年 : 1958年以後1960年以前
閉館年 : 1960年以後1963年以前
1955年・1958年の映画館名簿には掲載されていない。1960年の映画館名簿では「大島座」。1963年の映画館名簿には掲載されていない。

 

美濃白鳥市街地から2km南の大島地区には大島座があったようですが、白鳥町にあった3館の中ではもっともはやく閉館しています。今回は大島地区を訪れていません。

 

 

4. 長良川鉄道「川風号」

午後には長良川鉄道郡上八幡市街地に移動しましたが、乗車した普通列車の2両目は観光列車「ながら」の第2弾「川風号」でした。2018年(平成30年)4月に運行開始した車両で、デザインは例のごとく水戸岡鋭治です。ただし乗客は1両目に集中しており、「川風号」はまったく人気がなかったのが印象的でした。

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(写真)長良川鉄道「川風号」。

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(写真)長良川鉄道「川風号」。