振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

坂井市立三国図書館を訪れる

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(写真)みくに龍翔館。明治・大正期の三国にあった龍翔小学校のデザインを模した郷土資料館。

2019年(令和元年)5月末、福井県坂井市三国町(旧・福井県坂井郡三国町)を訪れました。「三国町の映画館」に続きます。

 

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1. 三国町を訪れる

坂井市福井市の北側に隣接する町。2006年(平成18年)に坂井郡三国町丸岡町春江町、坂井町が合併して発足した市であり、三国町坂井市の北西端にあります。坂井郡6町のうち4町は坂井市としてまとまりましたが、2町は坂井市発足2年前の2004年(平成16年)にあわら市となりました。坂井市となった4町の中で三国町だけが離れた位置にあります。

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(地図)福井県における坂井市の位置。©OpenStreetMap contributors

 

1.1 三国駅周辺

福井市街地から三国市街地までえちぜん鉄道三国芦原線に乗りました。運転士のほかにはこの記事に登場するアテンダントの方も乗車していました。三国駅の木造駅舎は2018年(平成30年)3月26日に竣工したばかり。建物内には観光案内所やカフェが併設されており、三国観光の起点という雰囲気があります。

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 (写真)えちぜん鉄道三国芦原線の電車。

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 (写真)三国駅駅前通り。

 

1.2 旧市街地

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 (写真)かつての三国湊周辺。

 

三国町の古くからの中心市街地には、正面が朱色に塗られた三国湊町屋館という観光案内所があります。三国湊町屋館の西側には旧岸名家という展示施設があり、さらに西側にはマチノクラという展示施設があります。2016年3月にオープンしたマチノクラでは、竹下景子三国町を歩く動画などで歴史や産業を学べるようになっています。

明治時代の三国港は、小浜港や敦賀港を抑えて福井県最大の商業港であり、1879年(明治11年)時点の港湾移出額を見ると福井県全体の62%を占めていました。福井県立三国中学校(現・福井県三国高校)は、福井中学校(現・藤島高校)、大野中学校(現・大野高校)、武生中学校(現・武生高校)、小浜中学校(現・若狭高校)に続いて福井県で5番目の旧制中学校。明治・大正期には坂井郡域で中心的な地位にあったことがわかります。

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 (写真)見学施設の旧岸名家。左側は三国湊町屋館。

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 (写真)展示施設のマチノクラ。

 

三国湊町屋館から東を見ると見学施設の旧森田銀行本店 - Wikipediaがありますが、この建物は福井県に現存するもっとも古い鉄筋コンクリート造の建築物だそうです。

1920年大正9年)の竣工時、三国の経済は衰退しつつあったようで、10年後には福井銀行に吸収されています。周囲の民家群からはやや浮いた印象。三国湊町屋館と旧森田銀行本店の間には1本の大きなタブノキが植わっていますが、この場所は岸名家とともに三国有数の豪商だった内田家の邸宅跡だそう。

これまでの中心市街地には、建物内をただ見学するだけの施設(旧岸名家と旧森田銀行本店)しかありませんでしたが、三国町の歴史や産業を概観できる展示施設(マチノクラ)がオープンしたのは大きい。自動車で東尋坊越前松島水族館芝政ワールドを回るだけだった観光客を中心市街地にひきつけることができるのでは。

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 (写真)見学施設の旧森田銀行本店。


三国の中心市街地と瀧谷寺三國神社はやや離れているので、三国湊町屋館でレンタサイクルを借りました。

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(写真)三国湊町屋館で借りたレンタサイクル。

 

三国祭りの山車蔵

三國神社の例祭である三国祭は、私が訪れる1週間前(5月19日-21日)に開催されたばかり。坂井市は三国祭が 「北陸三大祭のひとつである」と謳っています。三国の中心市街地にはいたるところに山車蔵があり、どの山車蔵も新しいです。

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 (左)下新区山車蔵。(右)上八町山車蔵。

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(左)元新区山車蔵と旧森田銀行本店。(右)四日市区山車蔵。

 

三国町の街並み

三国町の旧市街地には戦前に建てられた民家が多く残っており、また街並みに溶け込む外観で新築された建物も多いので、歩いているだけで楽しい。坂井市による建築物の新築や修復の際の補助制度はあるようですが、古い民家が取り壊されずにここまで残っているのには驚きます。三国町といえば東尋坊 - Wikipediaという全国区の観光地がありますが、私にとってはこの街並みを歩いているほうがずっと楽しい。

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(写真)見返り橋。

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(写真)思案橋

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(写真)遊郭跡地にある坂道。

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 (写真)三国町神明一丁目。いずれも屋根が特徴的。

 

1.3 瀧谷寺三國神社

瀧谷寺 - Wikipedia(たきだんじ)は真言宗智山派の寺院。本堂、観音堂、方丈及び庫裏、開山堂、鎮守堂、山門と、建造物だけで重要文化財が6棟もあります。 庭園は国指定名勝であるし、宝物殿にある「金銅宝相華文磬」(こんどうほうそうげもんけい)は国宝です。磬 - Wikipedia(けい)とは中国起源の打楽器の一種だそう。

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(写真)瀧谷寺山門。重要文化財

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 (写真)瀧谷寺庭園。国指定名勝。

 

三國神社 - Wikipedia式内社であり、旧社格は県社。例祭の三国祭が福井県指定無形民俗文化財に、随身門が福井県指定有形文化財に指定されています。なお、三国駅前には村社の氷川神社があります。

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(写真)三國神社鳥居。銅板を巻き付けた銅製鳥居。

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 (写真)三國神社随身門。福井県指定文化財

 

2. 坂井市立三国図書館を訪れる

2.1 図書館の歴史

三国町立三国北小学校は京福電鉄三国芦原線南側の橋本区にありましたが、1988年に三国芦原線北側に移転。三国町は小学校跡地に公共図書館と公共ホールの複合施設の建設を計画し、1993年(平成5年)にみくに文化未来館が開館しました。2006年(平成18年)に坂井市が発足したことで、三国町立図書館は坂井市立三国図書館に改称しています。

三国町は港町だけあって建物が密集しており、中心市街地に大規模な公共施設を建設するのは難しい。小学校の移転という好機を活かしました。小学校跡地に建設されたため、建物内も敷地も広々としています。総蔵書数は坂井市立の4館の中で3番目だそうですが、1階の開架室は広々としていて居心地がいいです。

みくに文化未来館の図書館は2代目であり、初代三国町立図書館は1960年(昭和35年)に開館したようです。町立図書館としてはかなり早い時期の開館であり、三国町の歴史の古さを物語っています。

 

2.2 図書館の郷土資料

郷土資料室は2階にありますが、1階のカウンターで使用申請書を書かないと入室できないし、2階に上る階段は郷土資料室の使用者がいるとき以外は封鎖されています。郷土資料室をこのように運用している図書館の場合、1階の開架室にも郷土資料コーナーがあることが多いのですが、三国図書館にはそのようなコーナーも見当たらず、三国町の歴史や産業についての理解が深まる施設にはなっていません。建物は新しいのにこのような運用がなされているのは残念です。

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(写真)坂井市立三国図書館。