振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

浦安市の映画館

(写真)浦安市郷土博物館

2022年(令和4年)6月、千葉県浦安市を訪れました。2000年(平成12年)以後の浦安市にはシネコン「シネマイクスピアリ」があります。1990年(平成2年)から2006年(平成18年)にはビデオシアター「浦安ポケットシネマ」がありました。映画黄金期の昭和30年代には「浦安映画劇場」「浦安シネマ」がありました。

 

1. 浦安市を訪れる

漁業で栄えていた時代に浦安の中心だったのは、東京メトロ東西線浦安駅の南500mにあるフラワー通り(浦安銀座)です。旧江戸川につながる境川の南側にあります。

(写真)浦安市堀江を流れる境川

(写真)1940年代後半頃の浦安町と23区東部。南東端に浦安町。浦安市郷土博物館

 

1.1 フラワー通り(浦安銀座)

かつて浦安銀座と呼ばれたフラワー通りを歩くと、旧宇田川家住宅(浦安市指定文化財)、旧大塚家住宅(千葉県指定文化財)、旧濱野医院(文化財指定なし)という3棟の建築物が目立ちます。銭湯の末広湯(2021年後半解体)や米の湯(2021年後半解体)、看板建築の光誠堂時計店(2020年以後解体)など近年に取り壊された建築物も多いが仕方ないか。浦安市としてはこの3棟は存続させたいはずですが、旧濱野医院の文化財登録/指定は行わないのかな。

(左・右)旧宇田川家住宅。浦安市指定文化財

(写真)旧大塚家住宅。千葉県指定文化財

(左・右)旧大塚家住宅。千葉県指定文化財

(左・右)旧濱野医院。1929年竣工。浦安初の洋風建築。

(左・右)1931年の「千葉県浦安町商工庶家案内」。「千葉県浦安町鳥瞰」の裏面。旧濱野医院。

 

1.2 浦安市立中央図書館

浦安市は猫実(ねこざね)1丁目を文化ゾーンとして整備しており、浦安公園を中心として浦安市役所、浦安市文化会館、浦安市立中央図書館、浦安市郷土博物館が集まっています。浦安市立中央図書館の開館は1983年(昭和58年)であり、浦安市内に巨大テーマパークが開園したのと同年。浦安市が巨大テーマパークを誘致したわけではないものの、自治体としての未来を模索する際に図書館にも投資したのは優れた判断でした。

浦安市立中央図書館は図書館業界で高く評価されている図書館であり、特に開館当初は貸出冊数を大きな指標とした図書館運営を行っていたようです。1983年度(昭和58年度)の貸出数は約90万冊で11.4冊/人、ピーク時の2010年度(平成22年度)の約235万冊で14.3冊/人。その後は減少傾向にあるものの、現在でも浦安市は全国屈指の貸出密度を誇っています。『図書館の街 浦安 新任館長奮戦記』(未来社、1985年)、『浦安の図書館と共に』(未来社、1989年)、『浦安図書館にできること』(勁草書房、2003年)、 『浦安図書館を支える人びと』(日本図書館協会、2004年)など、浦安市立中央図書館を主題とする書籍も複数出版されています。

(写真)浦安市立中央図書館。

(写真)浦安市立中央図書館の開館を伝える「図書館の読み方」『グラフ浦安』第12号、1983年1月。

(写真)浦安市立中央図書館。(左)開架書架。(右)図書館情報学に関する書籍。

(写真)浦安市立中央図書館と同年に開園した巨大テーマパーク。

 

1.3 浦安市郷土博物館

浦安市郷土博物館は屋外展示場「浦安のまち」が興味深い博物館でした。1952年(昭和27年)頃の浦安が再現されており、境川沿いの堀江から移築された建物も多い。文化財指定されている建築物だけでも、浦安の三軒長屋(千葉県指定文化財、旧所在地は堀江3-18-15)、旧本澤家住宅(たばこ屋、浦安市指定文化財、旧所在地は浦安市猫実5-4-8)、旧吉田家住宅(漁師の家、浦安市指定文化財、旧所在地は堀江2丁目)、旧太田家住宅(魚屋、浦安市指定文化財、旧所在地は現在のフラワー通り公園)があります。

(写真)浦安市郷土博物館。旧本澤家住宅(たばこ屋)。

(写真)浦安市郷土博物館。(左)「浦安映画館」のポスターを模した展示。(右)モニターによる浦安の映画館の説明。

 

 

2. 浦安市の映画館

2.1 浦安シネマ(1938年6月-1963年頃)

所在地 : 千葉県東葛飾郡浦安町堀江23(1963年)
開館年 : 1911年12月、1938年6月
閉館年 : 1963年頃
『全国映画館総覧 1955』によると1938年6月開館。1936年の映画館名簿には掲載されていない。1943年・1947年・1950年・1953年の映画館名簿では「浦安映画劇場」。1955年の映画館名簿では「浦安映劇」。1958年・1960年・1963年の映画館名簿では「浦安シネマ」。1964年の映画館名簿には掲載されていない。跡地は「旧濱野医院」西隣の「堀江三丁目自治会集会所」。最寄駅は東京メトロ東西線浦安駅

漁村だった浦安では浪曲浪花節の人気が高かったといい、明治末期の浦安銀座には浦安亭と演技館という2館の寄席小屋が開館します。境橋南詰にあった浦安亭は浦安で初めて活動写真を上映した小屋であり、戦後の1965年(昭和40年)まで存続しています。

1928年(昭和3年)に演技館が焼失した後、1938年(昭和13年)に浦安初の映画館として開館したのが浦安映画劇場です。経営者の山崎清太郎は1955年(昭和30年)に新たな浦安映画劇場を開館させており、それまでの浦安映画劇場は浦安シネマに改称しています。

(写真)『映画年鑑 昭和18年』日本映画協会、1943年。

(写真)1963年の航空写真における浦安の映画館。地図・空中写真閲覧サービス

(写真)浦安シネマ跡地にある集会所。Googleストリートビュー

 

2.2 浦安映画劇場(1955年-1974年3月)

所在地 : 千葉県東葛飾郡浦安町堀江108(1974年)
開館年 : 1955年
閉館年 : 1974年3月
1956年の映画館名簿には掲載されていない。1957年・1958年の映画館名簿では「浦安映画劇場」。1960年・1963年の映画館名簿では「浦安映劇」。1966年・1969年・1973年・1974年の映画館名簿では「浦安映画劇場」。1975年の映画館名簿には掲載されていない。跡地はマンション「FREA堀江」。最寄駅は東京メトロ東西線浦安駅

1955年(昭和30年)には浦安町2番目の映画館として浦安映画劇場が開館。経営者は浦安シネマと同じく山崎清太郎であり、浦安シネマよりもやや定員の多い映画館でした。

(写真)『映画便覧 1963』時事通信社、1963年。

(写真)1967年頃の浦安映画劇場。『浦安市史 生活編』浦安市、1999年。

 

浦安市立中央図書館が所蔵する『浦安町住宅案内図 1969年度』(浦安町役場、1969年)には浦安映画劇場も描かれています。跡地はスーパーマーケットとなった後、現在は2007年(平成19年)竣工のマンションが建っています。

(地図)左下に浦安映画劇場。中央のパチンコ大宝は浦安シネマ跡地。『浦安町住宅案内図 1969年度』浦安町役場、1969年。浦安市立中央図書館所蔵。

(写真)『浦安町住宅案内図 1969年度』浦安町役場、1969年。浦安市立中央図書館所蔵。

(写真)浦安映画劇場跡地のマンション。

 

2.3 浦安ポケットシネマ(1990年7月2日-2006年3月31日)

所在地 : 千葉県浦安市入船1-4-1(2006年)
開館年 : 1990年7月2日
閉館年 : 2006年3月31日
1990年の映画館名簿には掲載されていない。1991年・1992年・1995年・2000年・2005年・2006年の映画館名簿では「浦安ポケットシネマ1・2」(2館)。2007年の映画館名簿には掲載されていない。ビデオシアター。

1990年(平成2年)にはJR京葉線新浦安駅前のショッパーズプラザ新浦安にビデオシアターの浦安ポケットシネマが開館。浦安市施設利用振興公社が運営、東宝が運営を委託された映画館であり、"全国初の公営常設映画館" とされています。日本初のビデオシアターは船橋市のコミュニティシアター船橋(1983年開館)とされ、若い世代の新住民が多い地域の大型商業施設に設置される傾向がありました。

2000年(平成12年)にシネコンのAMCイクスピアリ16が開館してからも営業を続けていましたが、2005年(平成17年)には独占的にビデオシアター用ソフトを製作していたソニー・シネマチックがソフトの生産を終了したため、全国のビデオシアターと同時期に閉館しています。

(写真)浦安ポケットシネマが掲載されている『映画年鑑 2006年版別冊 映画館名簿』時事映画通信社、2005年。

(写真)浦安ポケットシネマが入っていたイオンスタイル新浦安。Googleストリートビュー

 

2.4 シネマイクスピアリ(2000年7月8日-営業中)

所在地 : 千葉県浦安市舞浜1-4-270 イクスピアリ(2020年)
開館年 : 2000年7月8日
閉館年 : 営業中
2000年の映画館名簿には掲載されていない。2001年・2002年・2005年の映画館名簿では「AMCイクスピアリ16シアター1-16」(16館)。2008年・2010年・2015年・2020年の映画館名簿では「シネマイクスピアリ1-16」(16館)。

2000年(平成12年)には日本AMCシアターズによって、東京ディズニーリゾート内の商業施設であるイクスピアリにAMCイクスピアリ16が開館。16スクリーンを有するシネコンであり、2022年(令和4年)現在も営業中です。

1998年(平成10年)開館のAMCなかま16 (福岡県中間市)、1999年(平成11年)開館のAMCホリディ・スクエア18 (愛知県豊橋市)、2000年(平成12年)開館のAMCリバーサイドモール16 (岐阜県本巣市)とともに4サイトのみ展開されたAMCによるシネコン外資シネコンに特有のスクリーン数の多さが特徴です。日本最大のスクリーン数を有するシネコンは18スクリーンのAMCホリディ・スクエア18ですが、AMCイクスピアリ16の総座席数はAMCホリディ・スクエア18を上回る3,504席です。

2005年(平成17年)にはAMCが日本での事業から撤退し、他の3サイトはユナイテッド・シネマに運営譲渡されていますが、イクスピアリオリエンタルランドに運営譲渡されました。

 

AMCによるシネコン

1998年 AMCなかま16 (福岡県中間市

    16スクリーン計2,654席

1999年 AMCホリディ・スクエア18 (愛知県豊橋市

    18スクリーン計3,310席 - スクリーン数日本最多

2000年 AMCリバーサイドモール16 (岐阜県本巣市

    16スクリーン計3,108席

2000年 AMCイクスピアリ16(千葉県浦安市

    16スクリーン計3,504席

(写真)AMCイクスピアリ16が掲載されている『映画年鑑 2006年版別冊 映画館名簿』時事映画通信社、2005年。

(写真)イクスピアリphoto : 掬茶 - Wikimedia Commons

 

浦安市にあった映画館について調べたことは「千葉県の映画館 - 消えた映画館の記憶」に掲載しており、その所在地については「消えた映画館の記憶地図(千葉県版)」にマッピングしています。

hekikaicinema.memo.wiki

www.google.com