振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

尾張旭市の映画館

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(写真)尾張旭市立図書館。

2020年(令和2年)8月、愛知県尾張旭市にあった映画館「MY劇場」跡地を訪れました。

  

1. 尾張旭市を訪れる

尾張旭市名古屋市の東側に隣接する人口約8万人の自治体。名古屋市ベッドタウン化が進んだ町という印象ですが、市域の南側は水田の中を矢田川が流れ、市域の北側は愛知県森林公園があるなど、名古屋都心からの近さの良さの割には自然豊かで住みやすい自治体なのかもしれません。

普段は瀬戸市を訪れる際に "通過する" だけの町ですが、今回は名鉄瀬戸線尾張旭駅から尾張旭市立図書館を経由して、映画館「MY劇場」の跡地を探しながら三郷駅まで1駅分歩いてみました。

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(地図)愛知県における尾張旭市の位置。©OpenStreetMap contributors

 

 

2. 尾張旭市立図書館

2.1 茶色ハコ型図書館

2018年(平成30年)4月には尾張旭市立図書館 - Wikipediaを作成しました。1981年(昭和56年)に開館した現行館が尾張旭市にとって初の図書館であり、1970年代末から1980年代前半の典型と言える "茶色の外壁" かつ "ハコ型" の図書館です。尾張旭市立図書館は外観同様に中身も保守的な図書館に見えました。

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(写真)尾張旭市立図書館の入口。

 

同時期の愛知県では高浜市立図書館 - Wikipedia(1979年)や豊明市立図書館 - Wikipedia(1980年)や知多市立中央図書館 - Wikipedia(1980年)や一宮市立尾西図書館 - Wikipedia(1981年)が開館しており、どこか一面が大きなガラス窓になっている図書館が多い。とはいえ、1970年代前半に開館した図書館のほうが外観が変化に富んでいるように思えます。

愛知県の茶色ハコ型図書館

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(左)1977年開館の東海市立中央図書館。(中)1979年開館の高浜市立図書館。(右)1980年開館の知多市立中央図書館。

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(左)1980年開館の一宮市尾西図書館。(中)1983年開館の西尾市立図書館。(右)1984年開館の半田市立図書館。

 

1973年(昭和48年)から1981年(昭和56年)まで図書室が置かれていた尾張旭市民会館の外観は印象的でした。入口の両側にある2本の塔の内部には何があったのでしょうか。老朽化のために2015年度から閉鎖されていたらしく、2018年度には取り壊されてしまいました。

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(写真)2018年度に取り壊された尾張旭市民会館。

 

 

3. 尾張旭市の映画館

3.1 MY劇場(1958年頃-1965年頃)

所在地 : 愛知県東春日井郡旭町新居新町230(1965年)
開館年 : 1958年頃
閉館年 : 1965年頃
1955年・1957年の映画館名簿には掲載されていない。1958年・1960年・1963年の映画館名簿では「MY劇場」。1965年の映画館名簿では「旭劇場」。1965年の住宅地図には掲載されていない。1966年の映画館名簿には掲載されていない。跡地はマンション「ラビデンス三郷北原山」。

手持ちの映画館名簿によると、尾張旭市唯一の映画館として「MY劇場」があり、その住所は年によって「東春日井郡旭町三郷」または「東春日井郡旭町新居新町230」です。

まずは郷土資料にあたります。愛知県図書館にある東春日井郡旭町最古の住宅地図は1965年版ですが、この住宅地図ではMY劇場は発見できませんでした。MY劇場に関する文献としては、『あさひ歳時記』(尾張旭市、1981年)と、ほぼ同一の記述の『尾張旭市誌現代史編』(尾張旭市、2011年)があります。正確な跡地がどこかは記されていませんが、映画館名簿より詳しい「東春日井郡旭町北原山町大久保見」という住所が掲載されています。

地理院地図で1960年代の航空写真も確認します。現在の尾張旭市北原山町大久保見の範囲は狭く、現在のマンション「ラビデンス三郷北原山」の場所に1棟だけ巨大な建物があるのが目につきました。1965年版の住宅地図と現在の住宅地図を照らし合わせ、マンションの隣接地で「水野ふとん店」が当時から営業していることを確認。水野ふとん店を直接訪れて主人(70代?)に話を伺いました。1965年版の住宅地図における表記は水野製綿所です。

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(左)旧瀬戸街道とMY劇場跡地。(右)MY劇場跡地にあるマンション ラビデンス三郷北原山。

 

(MY劇場は)すぐ東側のマンションの場所にあった。MY劇場の読み方は「マイ劇場」ではなく「エムワイ劇場」。映画館の閉館後はアパートになり、その後現在のマンションが建った。尾張旭市唯一の映画館だった

読み方が「マイ劇場」ではなく「エムワイ劇場」ということで、経営者の山田稔(Minoru Yamada)のイニシャルを館名にしたのだと思われます。山田稔瀬戸市の映画館を経営していた人物で、請われてMY劇場を開館させたようです。また、1963年以前の映画館名簿に掲載されているMY劇場と1965年の映画館名簿に掲載されている旭劇場が同一施設であることがほぼ確定しました。経営者が山田稔から水野清男に交代した際に改称したのでしょう。

名鉄瀬戸線三郷駅周辺は近年の市街地化が著しく、ショッピングセンターSUNGOなどの大規模商業施設が相次いで開店しています。Google mapやYahoo! 地図に掲載されている個人商店のいくつかは更地になっており、周辺で話を聞けそうな唯一の商店が水野ふとん店でした。MY劇場があったのは街道沿いではあるものの、発展していた商店街にあったとは言い難い。こんな場所に映画館があったのかと疑問を持ちながら歩いていたため、水野ふとん店の店主から話を聞けたのは大きな収穫でした。

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(写真)現在のMY劇場跡地周辺。地理院地図

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(写真)1960年代のMY劇場周辺。地理院地図

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(左)1888年-1889年の三郷村付近。(右)1920年三郷村付近。いずれも今昔マップ on the web

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(地図)1963年の住宅地図におけるMY劇場。『瀬戸市付旭町住宅地図』中部善隣出版、1963年。瀬戸市立図書館所蔵。

 

尾張旭市の映画館について調べたことは「尾張東部の映画館 - 消えた映画館の記憶」にまとめており、跡地については「消えた映画館の記憶地図(愛知県版)」にマッピングしています。

hekikaicinema.memo.wiki

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