振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

中産連ビルを訪れる

(写真)中産連ビル本館。2023年5月。

2023年(令和5年)11月4日、愛知県名古屋市東区白壁の中産連ビルで開催されたあいちのたてもの博覧会(あいたて博)の見学会に参加しました。11月6日には中産連ビル - Wikipedia も作成しています。

 

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1. 中産連ビルを訪れる

1.1 外観

中産連ビルの敷地は出来町通に面しています。1963年(昭和38年)、出来町通から30m奥まった場所に中産連ビル(現在の中産連ビル本館)が完成。1974年(昭和49年)には出来町通と中産連ビルの間の空間に新館が完成し、本館の南側ファサードは隠されてしまうことになります。新館の建設を見越していたのかは知りませんが、本館の入口は出来町通に面した南側ではなく東側にあります。

(写真)本館の外観。左端は新館。

 

外観でまず目を引くのは色むらのある緑色の大仏タイルです。京都・岩倉の株式会社大佛が製造しているタイルとのことで、『名古屋渋ビル手帖 中産連ビル特集号』では織部色と表現されています。2階・3階部分には形状も配置も不規則なポツ窓があり、白色の窓枠が緑色のタイルによく映えます。

(写真)外壁の大仏タイル。2023年5月。

(写真)外壁のポツ窓。2023年5月。

 

坂倉準三建築の要素としては、1階と4階がガラススクリーンとなっていることが挙げられます。1階の周囲にはピロティが設けられていますが、建物解説の川口亜稀子さんによると名古屋近鉄ビルも同様とのこと。耐震補強のために追加された白い柱がやや目障りですが仕方ありません。

地上からは見づらいのですが、屋上部分の反り上がった庇も坂倉準三建築によく見られる要素であり、旧羽島市庁舎の庇とそっくりです。

(写真)ガラススクリーンが用いられた1階。2023年5月。

 

私が参加したのはあいちのたてもの博覧会(あいたて博)の見学会です。2014年(平成26年)、愛知登文会 - Wikipediaの事業として登録有形文化財の特別公開イベントが開始され、2019年(令和元年)にあいたて博という名称になりました。

2023年(令和5年)には愛知登文会が中心となった実行委員会の事業となり、題材を登録有形文化財以外の建築物にも拡張。中産連ビルは登録有形文化財でも指定文化財でもありませんが、2023年(令和5年)からあいたて博に加わりました。見学会は申込開始当日に定員が埋まるほどの人気だったようです。

案内人はあいちヘリテージマネージャーで建築士でもある川口亜稀子さん。川口さんが勤務するLiv設計工房は近代建築の名古屋陶磁器会館 - Wikipediaにあり、普段から近代建築・現代建築を意識する環境にあったことでヘリテージングの活動に興味を抱いたそうです。

(写真)川口亜稀子さんによる解説。

(写真)川口亜稀子さんによる解説。

 

1.2 本館1階

1階床面には波模様を描く金色のラインが入っています。オフィスビルに必要かと言われれば疑問なのですが、優雅なラウンジを演出しています。

(写真)1階の床面。

(写真)1階の床面。改修部分(左下)と既存部分(右上)。

 

(写真)1階の喫茶店

 

1.3 本館階段

階段は中産連ビルの大きな見どころです。踊り場でぐにゃりと曲がる、手になじむ形状の手すりが坂倉準三らしさを感じさせるし、ラウンジの白い床面、階段部分の青い床面、黒い大理石の壁面、茶色い手すりの4色の組み合わせが印象に残ります。

地下1階から3階までの階段はワックスがけされてつるつるした床面ですが、3階から4階への階段のみはカーペットが敷かれており、貴賓室に向かう演出がなされています。1963年(昭和38年)竣工のビルではありますがエレベーターも設置されています。

(写真)階段。

(写真)階段。

(写真)階段。床の素材が異なる3階と4階。

(写真)階段。

(写真)階段。

 

トイレの壁面には白色のタイルが貼られています。1963年(昭和38年)竣工のビルとしてはトイレがかなり広く感じられるし、完璧に手入れされているタイルのおかげで古さを感じません。

(写真)トイレ。

 

1.4 本館4階

4階会議室の梁は湾曲しており、屋上の庇の形状がわかります。白壁の町は熱田台地の北端部にあり、中産連ビルの北100mの段丘崖で比高10m分の落差があるため、屋上庭園からは特に北側の見晴らしがよく、全国選抜名古屋大花火(1964年~2004年)もよく見えたそうです。

(写真)集会室4A。

(写真)集会室4A。

(写真)集会室4A。

 

(写真)屋上庭園。

(写真)屋上。

(写真)4階のフロアマップ。

 

1.5 本館3階

2階・3階は多様な会議室があるフロアであり、会議室内から見るポツ窓が新鮮でした。

(写真)集会室3A。

(写真)集会室3A。

(写真)集会室3A。

 

(写真)集会室3B。

(写真)集会室3E。

(写真)3階の受付。

(写真)3階のフロアマップ。

 

1.6 本館2階

(写真)集会室2C。

(写真)集会室2C。

(写真)2階のフロアマップ。