振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

松原市民松原図書館「読書の森」を訪れる

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(写真)松原市民松原図書館「読書の森」。

2021年(令和3年)9月、大阪府松原市松原市民松原図書館「読書の森」を訪れました。

 

1. 松原市民松原図書館「読書の森」

1.1 立地・建築

2020年(令和2年)1月26日に開館した新館は池に浮かんでいるような立地が特徴であり、コンクリートの外殻は古墳をイメージしているそうです。エントランスよりも約1m低い位置に一般開架室があり、その床面は水面の高さとほぼ同等。池に浮かぶ図書館としては愛知県の武豊町立図書館がありますが、松原市民図書館は窓から見える水面の存在を強く感じます。

参考画像:武豊町立図書館

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近年の図書館としては開口部が少ないことや、3階建てですが延床面積が約3000m2しかないことも特徴であり、まるでリスの巣穴の中にいるかのようです。

設計はマル・アーキテクチャ鴻池組であり、アカデミック・リソース・ガイド(ARG)が図書館コンサルタントとして関わっています。マル・アーキテクチャの図書館には高知県土佐市複合文化施設(2019年開館)があり、今後も高知県の南国市立図書館(2024年開館予定)や静岡県伊東市新図書館(2024年開館予定)などが控えています。

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(写真)図書館の建物と池。

 

1.2 歴史

松原市は人口約12万人の自治体ですが、1960年(昭和35年)からの15年間に人口が約3倍となっています。公共施設の設置が人口増加に追い付かず、1970年代に展開された市民による文庫活動が1980年(昭和55年)の図書館設置につながっています。

エントランス部分には松原市の図書館史を振り返るパネルがありました。家庭文庫活動の開始(1970年)、公民館図書室の開設(1973年)、移動図書館の開始(1974年)、図書館の開館(1980年)、分館の開館(1980年代)という流れは日本の図書館史を学んでいるようだし、自治体として図書館サービスに力を注いでいるという意志を感じます。

本館のほかに多数の分館が建設されますが、松原市の人口自体は1980年代後半から緩やかに減少しており、2010年代に複数の分館を廃止した過程に本館の建て替えがあります。

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(左)エントランスホールのパネル「松原市民図書館史」。(右)取材用名札。

1.3 館内

主に1階が主に一般書、3階が主に児童書であり、中2階や2階に新聞雑誌コーナー・閉架書庫・自習室などが置かれています。

児童書が下階、一般書が上階という常識を覆したことで、3階で子どもが騒いでも問題ありません。3階へのアクセスは基本的にエレベーター。見慣れない利用者以外がいると目立つのも、親にとっては安心かもしれません。

1階の書架はやや高く、奥まで見通せない構造もあって窮屈さを感じます。2階の閉架書庫がガラス張りとなっているのは圧迫感を軽減するためなのでしょう。

郷土資料の書架にはこれといった案内もなくて存在感が薄い。松原市民図書館の歴史を知るために閲覧した『松原の市民図書館』や『松原市民図書館活動報告 2019』が(郷土資料の書架ではなく)一般書の書架にあったのは登録ミスでしょうか。今後の工夫に期待です。

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(写真)2階から見た1階の一般開架室。

 

1階の写真

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(写真)一般開架室。

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(左)一般開架室の閲覧席。(右)スペイン文学。

 

2階の写真

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(写真)2階の閲覧席。奥は新聞雑誌コーナー。

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(写真)新聞雑誌コーナー。

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(左)屋外テラス。(右)自習室。

 

3階の写真

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(写真)くつろぎスペース。

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(写真)絵本。

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(写真)児童開架室。

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(写真)児童開架室。

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(左)児童用の自動貸出機。(右)児童開架室のサイン。

 

屋上の写真

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(写真)展望広場。

 

参考文献

松原市民松原図書館」『新建築』2020年5月号

「RCの外殻で風景の中に場をつくる 松原市民松原図書館」『GA Japan』2020年5月号、第164号

「池から立ち上がる打放し壁 松原市民松原図書館」『ディテール』2020年7月号、第225号