(写真)常滑市立図書館。2017年。
2021年(令和3年)9月、常滑市立図書館(常滑市立図書館本館)を訪れました。
本館は9月30日をもって閉館・廃止されています。10月4日の『中日新聞』には、「全国に3300強の公共図書館があるが、消滅したのは財政破綻した北海道夕張市に次いで二例目」という刺激的な内容の記事が掲載されました。
参考:「公共図書館 消滅の嘆き 愛知・常滑で全国2例目」『中日新聞』2021年10月4日
1. 常滑市立図書館を訪れる
1.1 図書館の歴史
先進的な図書館
知多半島にある常滑市は窯業で栄えた町であり、近代には土管の大量生産で愛知県を代表する工業都市となりました。戦後の1949年(昭和24年)には町立常滑図書館が開館し、図書館法が制定された1950年(昭和25年)には図書館条例を制定。知多半島では半田市立図書館と同じくらい歴史の古い図書館です。
1970年(昭和45年)10月には現行館が開館。『市民の図書館』(日本図書館協会、1970年)の理念に沿った図書館運営を行い、『図書館の発見 市民の新しい権利』(NHKブックス、1973年)、『市民の図書館 増補版』(日本図書館協会、1976年)で紹介されたため、その後図書館を設置する多数の自治体から視察を受けたようです。実践内容は『公共図書館サービス・運動の歴史2』(日本図書館協会、2006年)でも紹介されており、首都圏以外ではとても先進的な図書館だったと思われます。
常滑市立図書館の歴史については「常滑市立図書館 - Wikipedia」にまとめています。
(写真)常滑市立図書館。2017年。
(写真)常滑市立図書館。
図書館の廃止
『市民の図書館』に基づいて「陶業への発展に寄与」「視聴覚サービスの整備充実」「谷川徹三コーナーの整備」の3点を軸とした図書館運営を行っていたとのこと。開館当初は理想的な図書館だったかもしれませんが、「やきものコーナー」には新しい本がなく、「谷川徹三コーナー」は1970年の開館時から何も変わっていないように見えてしまいます。
2020年(令和2年)には現行館の開館から半世紀が経過。愛知県の公共図書館の中では名古屋市千種図書館(1968年)、蒲郡市立図書館(1969年)、瀬戸市立図書館(1970年6月)に次いで4番目に古い建物であり、耐震強度不足が判明していました。
2018年(平成30年)には新図書館を含む複合施設の建設計画が発表されましたが、財政難の常滑市は複合施設から図書館を除外。2021年(令和3年)9月30日をもって常滑市立図書館本館が閉館・廃止されました。同時に青海分館と南陵分館も長期休館に入っています。
現在は本館の蔵書を青海分館と南陵分館に移す作業の途中であり、2022年(令和4年)には新設されるこども図書室とともに青海分館と南陵分館が再開される予定ですが、2館の地位は分館から公民館図書室に格下げされるようです。
2021年(令和3年)の愛知県では、3月に愛西市立田図書館が、常滑市立図書館と同日の9月30日には北名古屋市西図書館が廃止されています。11月には豊橋市まちなか図書館が新設される予定ですが、現時点では前年比マイナス3館。2021年は図書館の廃止が始まった年として記憶されそうです。
(写真)フロアマップ。
1.2 図書館の館内
1階:児童開架室・新聞コーナー
(写真)ホール。
(写真)新聞コーナー。
(左・右)児童開架室。
2階:一般開架室・雑誌コーナー
(写真)一般開架室の入口。
(写真)一般開架室のカウンター付近。
(写真)一般書の書架。
(写真)文芸書の書架。
(写真)「やきものコーナー」。
2階:谷川徹三文庫
(写真)谷川徹三文庫。2017年。
(写真)谷川徹三文庫。2017年。
(写真)谷川徹三文庫の所蔵本紹介コーナー。
(写真)谷川徹三文庫の所蔵本紹介コーナー。昭和天皇からの昼食会の招待状。