(写真)桟敷窓がある町屋。
2022年(令和4年)2月27日、滋賀県蒲生郡日野町で開催された「ウィキペディアタウン IN 日野」に参加しました。
1. イベント概要
「ウィキペディアタウン IN 日野」は日野町立図書館が主催したイベントです。コロナ禍のために一般市民へのイベント告知は行わず、行政・教育・観光などの分野で活動している方が参加しています。私が話した方には小学校の教員、滋賀県立大学の方、地域おこし協力隊などがいました。日野町立図書館での編集中には、日野町の町長や教育長なども見学に来てくださったようです。
2019年(令和元年)12月8日には滋賀県草津市でCode for Kusatsuによって「まちの事典(ウィキペディア)を作ろう!&自由な地図を描こうオープンストリートマップ~草津市版~」というイベントが開催されています。日野町のイベントは草津市に次いで滋賀県で2番目のウィキペディアタウンだと思われます。
オープンデータに関するイベントを数多く開催しているCode for 山城の青木和人さん、ウィキペディア日本語版の元管理者でウィキペディア編集に長けたMiya.mさんが講師を務めました。まず青木さんから今回のイベントの意義などに関する説明を聞き、Miya.mさんからウィキペディアの特徴や編集時の注意に関する説明を聞きました。
その後、日野町立図書館の鑓さんから準備された文献についての説明を聞きました。「〇〇という文献にはこのような特徴がある。〇〇という記事を編集する場合はこの文献が役に立つ」という説明があり、後半の編集時に役立ちました。マイクロバスで近江日野商人ふるさと館「旧山中正吉邸」まで移動してからまちあるきに入りました。
スケジュール
10:00~10:30 ウィキペディアに関する説明(日野町立図書館)
10:30~11:00 準備文献についての説明(日野町立図書館)
11:00~12:00 まちあるき(ふるさと館)
12:00~13:00 昼食(まちかど感応館)
13:00~14:30 まちあるき(信楽院や馬見岡綿向神社など)
14:30~17:00 資料調査・ウィキペディア編集(日野町立図書館)
(写真)イベントのチラシ。
(写真)かんた氏の机。
(写真)準備した文献について説明する鑓さん。
2. まちあるき
2.1 近江日野商人ふるさと館「旧山中正吉邸」
まずは近江日野商人ふるさと館「旧山中正吉邸」を見学。2015年(平成27年)に開館した体験・交流・学習施設であり、幕末から約150年間は日野商人の山中正吉の邸宅でした。「八幡表に日野裏」(八幡商人は家の入口に金をかけるが、日野商人は奥座敷に金をかける)という言葉通りに、地味ですらある玄関や座敷と、来客にため息をつかせる新座敷や洋間の違いが印象的。
(写真)座敷。
(写真)新座敷。
(写真)洋間。
(写真)タイルが用いられたかまど。
(左)新座敷。照明。(中)ステンドグラスが用いられた風呂場。(右)新座敷。ふすまの引き手。
2.2 桟敷窓がある町屋
(写真)日野祭を見るための座敷窓がある町屋。
(写真)日野祭を見るための座敷窓がある町屋。
(写真)日野祭で用いられる曳山を収容する山倉。
2.3 信楽院
信楽院(しんぎょういん)は蒲生氏の菩提寺である浄土宗の寺院。元文4年(1739年)に建立された本堂は滋賀県指定文化財であり、高田敬輔による雲竜図を中心とした天井画が見所です。本堂は前面の一間分が土間という扱いになっていることが特徴のようですが、どういう意味があるのかきちんと説明を聞いておけばよかった。
(写真)信楽院の本堂に描かれた高田敬輔の天井画。
2.4 馬見岡綿向神社
馬見岡綿向神社(うまみおかわたむきじんじゃ)は日野町で最も大きな神社であり、奥宮は綿向山の山頂に祀られています。旧社格は県社。破風破風してる本殿が滋賀県指定文化財、馬見岡綿向神社祭礼渡御図絵馬が滋賀県指定有形民俗文化財。本殿・拝殿・境内入口の神木はいずれも巨大。悪霊退散を目的として架けられる勧請縄は湖東地方に多いとのことです。
(写真)馬見岡綿向神社の境内。
(左)本殿。滋賀県指定文化財。(右)馬見岡綿向神社祭礼渡御図絵馬。滋賀県指定有形民俗文化財。
3. ウィキペディア編集
参加者に編集記事の希望を取ったところ、以下の4記事が編集対象となりました。近江日野商人ふるさと館は当初の編集予定になかったようで、イベント中にも図書館側から文献が追加されています。
(写真)鯛そうめん。
3.1 編集記事
信楽院 (滋賀県日野町) - Wikipedia(新規作成)
近江日野商人館 - Wikipedia(新規作成)
近江日野商人ふるさと館「旧山中正吉邸」 - Wikipedia(新規作成)
信楽院以外の3グループは参加者が2人~3人ずつに分かれ、それぞれに青木さん・Miya.mさん・私が編集サポートとして入りました。漱石のねこさんは単独で信楽院の作成を行い、わずか2時間程度の編集時間でしたが充実した記事を作成しています。
近江日野商人館や近江日野商人ふるさと館は多くの観光客が訪れる施設ですが、これまではウィキペディアに記事すらなかった。ウィキペディアは "百科事典" であり、観光客向けの情報に特化した公式サイトとは異なる性質を持つため、より深い知識を得たい観光客に有益なページができたと思っています。
(写真)事前に準備された文献。
(写真)編集中の参加者。
3.2 イベント後の編集
日野町には立派な町屋や立派な寺院、立派な神社があります。それらは詳しい説明を受けなくても価値の高さが分かりやすいものでもありますが、特に "桟敷窓を持つ町屋" については「日野ひなまつり紀行」などの活動によって価値が再確認されたものではないかと思いました。桟敷窓から日野町の歴史や文化について興味を持ち、イベント後も編集を続けています。
編集対象となった4記事について、イベント後には約100枚の写真をWikimedia Commonsにアップロードしました。38枚を投稿した近江日野商人ふるさと館については、座敷・新座敷・洋間などの部屋を俯瞰して撮った写真と、照明・ふすまの引き手・釘隠し・ステンドグラスなどのディテールを撮った写真の両方を投稿することを心がけました。
(写真)Category:Former Yamanaka Shokichi House - Wikimedia Commons
(写真)Category:Former Yamanaka Shokichi House - Wikimedia Commons
イベント後にも文章の加筆を続けています。2020年(令和2年)に近江日野商人館を訪れた際には "現存最古の国産ワイン" の展示に興味を持って写真を撮影していました。今回は近江日野商人館に入館していませんが、2年前の写真が役立ちました。私以外にも漱石のねこさんやMiya.mさんが加筆を続けており、以下の3記事は着実に成長しています。
近江日野商人館
記事なし(イベント前)→約5,000バイト(イベント後)→約20,000バイト(3日後)。
近江日野商人ふるさと館
記事なし(イベント前)→約6,000バイト(イベント後)→約16,000バイト(3日後)。
信楽院
記事なし(イベント前)→約9,000バイト(イベント後)→約16,000バイト(3日後)。
朝日新聞(聞蔵)・読売新聞(ヨミダス)・毎日新聞(毎索)の各データベースで近江日野商人ふるさと館や近江日野商人館などについて検索し、歴史や展示に関する文章を加筆しています。施設の記事であれば新聞データベースが役に立つ場合が多い。自治体史などで記事の根幹がしっかりしているからこそ、新聞記事から肉付けする枝葉が活きます。国立国会図書館デジタルコレクションもチェックしましたが、今回の題材で活きる出典は少なそうでした。
(写真)近江日野商人館 - Wikipedia。新聞記事も用いた出典。