2020年(令和2年)3月21日(土)と3月22日(日)、静岡県沼津市戸田(へだ)の沼津市立戸田図書館で開催された「Wikipedia town 沼津 #16」に参加しました。
1. 沼津市戸田地区を訪れる
田方郡戸田村(へだむら)は2005年(平成17年)に沼津市に編入された自治体。沼津市街地から車でアクセスする際には基本的に峠越えが必要ですが、漁村である戸田村は歴史的に沼津港との交流が盛んだったことから合併に至ったようです。
(写真)静岡県における沼津市戸田地区の位置。©OpenStreetMap contribitors
戸田地区を流れる戸田大川は下流部で三角形の平地を形成し、この平地に戸田市街地が形成されています。戸田漁港の正面には砂州の御浜岬が延びているため湾口が狭く、戸田湾は波もなく穏やかに見えました。戸田地区は観光業の町であり、戸田漁港周辺は釣り客でにぎわい、食堂は水槽から逃げようとするタカアシガニでにぎわっていました。
2. 沼津市立戸田図書館を訪れる
沼津市立戸田図書館は沼津市立図書館とともに沼津市に2館ある図書館のひとつ。1991年(平成3年)4月6日に戸田村立図書館として開館した単独施設であり、沼津市立戸田小学校や沼津市立戸田中学校の裏手にあります。
1991年時点の日本に村立図書館は珍しかったと思われるし、この時代の町村立図書館で複合施設でないのも珍しいと思われます。2018年(平成30年)3月時点の写真を見ると壁面は茶色、柱はコンクリートむき出しであり、この2年の間に外壁が青緑色に塗られたようです。図書館としては斬新な色使いですが、明るい漁村の雰囲気に合っていました。
(写真)沼津市立戸田図書館。
(左)沼津市立戸田図書館と沼津市立戸田中学校。(右)2018年3月の戸田図書館。撮影者 : SigureU - CC BY-SA 4.0
図書館に入るとカウンター前に置かれた新着図書の書架が目立っていました。館内中央部が一般書の書架、入口から見て右側が児童書の書架です。
左奥に戸田村や沼津市に関する郷土資料があり、一般書の書架を挟んで反対側にその他の静岡県に関する郷土資料がありました。郷土資料の書架には鍵がかかっていますが、パンフレットなどを収めた多数のファイル、郷土史家による自費出版物などがあり、収集に力を入れていたことがわかります。戸田村が沼津市に編入された2005年(平成17年)以後には、伊豆新聞などに掲載された戸田村関連記事のスクラップブックも作成しているようです。
(左)戸田図書館のカウンター付近。(右)図書館奥の閲覧席。
(左)戸田村出身の佐藤雅彦 (メディアクリエーター) - Wikipediaに関する資料。(右)戸田村の郷土資料。
(左)「斉藤栄一氏収集 戸田村に関する資料」。(右)2005年以降のスクラップブック「新聞に掲載された戸田村関連記事」。
3. Wikipedia town 沼津 #16
3.1 Code for ふじのくに/Numazu
戸田図書館は1階に開架室が、2階が視聴覚室(会議室)があり、今回のイベントでは視聴覚室でノートパソコンを使った編集作業を行いました。
Code for ふじのくに/Numazuは日本各地にあるシビックテック団体のひとつであり、公式サイトのトップページには「ITを活用し、より良い社会を目指して地域の課題解決にあたります」とあります。Code for ふじのくに/Numazuが主催する静岡県東部でのウィキペディアタウンは今回が16回目であり、私は2018年1月に沼津市立図書館で開催されたイベント(第7回)と、2019年6月に沼津市明治史料館で開催されたイベント(第14回)の2回に参加しています。
(写真)Code for ふじのくにの活動理念。
(左)Code for ふじのくにの市川希美さん。(右)ウィキペディアタウンについての話を聞く参加者。
3.2 松城家住宅
今回のメインテーマは戸田大川の北側にある松城家住宅です。松城家住宅は国指定重要文化財でありながらWikipediaに記事がありませんでした。2017年(平成29年)3月から2022年(令和4年)3月まで、松城家住宅は5年間の計画で保存修理工事のさなか。ヘルメットを着けて松城家住宅を見学し、工事に携わっている文化財建造物保存技術協会の方の話を聞いたうえで、図書館の文献を使ってWikipediaに記事を新規作成しました。入江長八 - Wikipediaによるこて絵なども見せてもらいましたが、保存修理工事が終了して一般公開が開始されるまで、建物内部の写真の公開は不可とのことでした。
(写真)修復工事中の松城家住宅。
(左)松城家住宅の概要。(右)大正時代の松城家住宅。
3.3 沼津市戸田造船郷土資料博物館
参加者全体で松城家住宅の新規作成に取り組んだ一方で、私は沼津市戸田造船郷土資料博物館の加筆と戸田村の加筆も行っています。
沼津市戸田造船郷土資料博物館は1969年(昭和44年)に開館した博物館。1960年代に設置された村立の博物館という点に違和感を覚えますが、ソ連政府からの寄付(500万円)が建設費に用いられているという点も一般的ではないです。1970年(昭和45年)の大阪万博でソ連館に展示されていたヘダ号の模型などがあり、小規模な郷土資料館ではありますが見所がありました。
併設されている駿河湾深海生物館(ミュゼ ヘダビス)は2017年(平成29年)にリニューアル開館したばかりの施設。実物大のタカアシガニの展示、おろし金のようなオロシザメの標本などがあり、単純に見ていて楽しい博物館でした。
(左)沼津市戸田造船郷土資料博物館。(右)駿河湾深海生物館。
3.4 編集された記事
松城家住宅 - Wikipedia - 新規作成。
部田神社 - Wikipedia - 新規作成。
沼津市戸田造船郷土資料博物館 - Wikipedia - 加筆。
戸田村 (静岡県) - Wikipedia - 加筆。