(写真)笠岡市立図書館。
2021年(令和3年)8月、岡山県笠岡市の笠岡市立図書館を訪れました。「笠岡市の映画館」「笠岡諸島の映画館」に続きます。
1. 笠岡市立図書館
1.1 立地・建物
笠岡市から岡山市までは50km超の距離があり、最寄りの都市は県境を越えた広島県福山市。笠岡市と福山市の図書館は相互利用が可能です。この時期は福山市中央図書館が書架への立ち入りを不可とする中(※サービスは返却と予約本貸出のみ)、笠岡市立図書館は閲覧席の削減などを行いながら開館していました。
外から見ると「笠岡市立図書館」と「こども図書館」の2棟の建物からなりますが、一般書棟と児童書棟という感じで一体的に運営されています。
(写真)笠岡市立図書館の児童書棟(こども図書館)。
1.2 歴史
1954年(昭和29年)7月に中心市街地の遍照寺に笠岡市立図書館が開館。図書館条例が制定されたのもこの時です。慶長11年(1606年)建立で重要文化財の遍照寺多宝塔はこの場所に残っていますが、遍照寺自体は1977年(昭和52年)に土地区画整理事業によって移転しています。
1956年(昭和31年)9月には笠岡消防署だった建物の2階に移転。1966年(昭和41年)9月には笠岡医師会館だった建物に移転。1978年(昭和53年)4月に現在地に移転して現行館が開館しています。
1988年(昭和63年)から1995年(平成7年)には木山捷平の妻から直筆原稿・蔵書・書簡などが寄贈され、笠岡市立図書館に保管されて整理が行われました。2000年(平成12年)には森田思軒の子孫から笠岡市に対して遺稿や手紙などが寄贈され、図書館の閲覧室を改装して森田思軒の展示コーナーが設置されました。
2009年(平成21年)4月には現行館に隣接する勤労青少年ホームの建物が改修され、こども図書館(児童書棟)が開館。本館とこども図書館は連絡通路で結ばれています。
1.3 館内:一般書
書架ではくっきりした大きな文字とイラストを用いた分類案内が見やすい。2019年(令和元年)12月に岡山県立大学デザイン学部の学生によって製作されたものだそうです。
利用できる閲覧席は半分となっていましたが、間引かれた席の上をテーマ展示コーナーとする工夫がありました。
(写真)3類と4類の分類案内。
(写真)貸出期間と貸出冊数の案内。
(写真)間引いた閲覧席でのテーマ展示。
(写真)6類の細かい見出し。
(写真)予約が多い本の紹介。
1.4 館内:郷土資料
郷土資料の棚にも「0類 総記」「1類 哲学」などの分類見出しがある上に、「0類 雑誌『高梁川』」「2類 郷土の偉人」「4類 カブトガニ」「6類 干拓」など笠岡市の特色に合わせた分類見出しが設けられていました。
笠岡市出身の翻訳者 森田思軒と小説家 木山捷平に関する文献は別置されていますが、別置するまでもない量の題材にも気を配っていてよいですね。
(写真)郷土資料。「4類 カブトガニ」の見出し。
(写真)郷土資料。「0類『高梁川』」「2類『岡山県史』」「2類『笠岡市史』」「2類 郷土の偉人」「6類 干拓」「7類 小野竹喬」などの見出しがある。
(地図)左は1925年の笠岡湾、右は現在の笠岡湾干拓地 - Wikipedia。今昔マップ。
笠岡市立図書館のOPACには未登録されていませんが、カウンターには1964年(昭和39年)頃の『笠岡市住宅案内図』がありました。寄贈されたものとのことで、映画館の跡地を特定するために大いに役立ちました。傷みかけているので複写不可というのは仕方ないですが、岡山県立図書館にはない年代の住宅地図なのでOPACには登録してほしい。
(写真)郷土資料。住宅地図『笠岡市住宅案内図』(日本住宅地図刊行会、1964年頃)。
1.5 館内:展示室
2階には森田思軒顕彰コーナーと木山捷平文学コーナーがあります。森田思軒 - Wikipedia(1861年-1897年)は翻訳家、木山捷平 - Wikipedia(1904年-1968年)は小説家であり、いずれも笠岡市出身です。
(写真)森田思軒顕彰コーナーと木山捷平文学コーナーの入口。
(写真)森田思軒顕彰コーナー。森田の愛用品。
(左)木山捷平文学コーナー。著書など。(右)木山捷平文学コーナー。ゆかりの文学作品。
1.6 サービス
帰宅してから笠岡市立図書館について検索したところ、1983年(昭和58年)から市艇「しらさぎ」で笠岡諸島の離島に本を運んでいるというサービスが気になりました。
このサービスは笠岡諸島において1人あたり1冊/年の貸出冊数を生んでいるとのことで、『ライブラリー・リソース・ガイド』はこのサービスについて「極めて印象的」と書いています。
公式Twitterではスタッフの日々の仕事が淡々と紹介されているのも味わいがあります。児童書コーナーには児童向けのレファレンスサービスの紹介がありましたが、児童からのレファレンス対応ではレファレンス力が鍛えられそうです。
(写真)児童向けのレファレンスサービスの案内。