(写真)『住宅案内図帳』日本特殊地図協会、1960年。
2021年(令和3年)3月、兵庫県たつの市龍野(旧・龍野市)のたつの市立龍野図書館を訪れました。関連記事として「たつの市龍野の映画館」があります。
1. たつの市立龍野図書館
1.1 図書館の歴史
揖保郡龍野町の図書館が開館したのは大正末期のこと。龍野出身の詩人である三木露風 - Wikipediaが図書館の建設を発案し、1923年(大正12年)11月に龍野小学校の一室に設立。1924年(大正13年)8月には龍野醤油組合事務所本館を譲り受けて図書館の建物とし、揖保郡初の図書館が開館しました。
1955年(昭和30年)には龍野町で "郷土に関係ある一切の文献及び資料" を集めようとする運動がおこり、1958年(昭和33年)には龍野藩文書などが龍野文庫としてまとめられています。戦後の1970年(昭和45年)には図書館が暫定的に旧龍野中学校校舎に移り、1980年(昭和55年)に現行館が開館しました。
(写真)1924年から1970年まで使用された初代龍野町立/龍野市立図書館。『たつの・宍粟・太子今昔写真帖』郷土出版社、2008年
(写真)1980年開館の現行館。
1.2 図書館の館内
2005年(平成17年)には龍野市・新宮町・揖保川町・御津町の1市3町が合併してたつの市が発足し、龍野市立図書館からたつの市立龍野図書館に改称。その他の3町には龍野図書館よりも新しい図書館があります。龍野図書館は駐車場が少ないうえにアクセスに難があり、旧龍野市民でも3町の図書館を利用する方が一定数いそうです。
図書館入口の古風なフロアマップには「下駄ばきでの入館はご遠慮ください」という注意書きがありました。開館から40年が経過した館内は古さを感じるものの、書架間の通路幅が広いことや、雑誌コーナーに大きな窓があることなどが好印象。龍野図書館がある龍野伝建地区は2019年(令和元年)に国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)に選定されており、重伝建地区内にあることを活かした取り組みも行ってほしいところです。
(左)図書館入口。(右)1階の一般書の書架。
(写真)フロアマップ。
1.3 播磨圏域連携中枢都市圏図書館相互利用促進事業
播磨圏域連携中枢都市圏の8市8町(姫路市・相生市・加古川市・高砂市・加西市・宍粟市・赤穂市・たつの市・稲美町・播磨町・市川町・福崎町・神河町・太子町・上郡町・佐用町)では図書館の相互利用が行われています。
圏域内のどの図書館も利用できるほか、8市8町計37館の蔵書横断検索も可能。全国的に見ても規模の大きな相互利用制度ではないでしょうか。播磨科学公園都市圏域定住自立圏2市2町(たつの市、宍粟市、上郡町、佐用町)では「貸出した本をどの図書館に返却することも可能」というのは便利そう。
(写真)播磨圏域連携中枢都市圏図書館相互利用促進事業のウェブサイト。
1.4 図書館の住宅地図
郷土資料室は2階。2005年(平成17年)の合併前の時点で4万人という人口を考えると、郷土資料は質も量も素晴らしい。郷土資料の中でも特に目を引くのは、段ボール箱に平積みにされた住宅地図です。1960年代から1970年代の住宅地図が多数あり、これらはいずれもOPACに登録されていませんでした。
(写真)2階の郷土資料室。
OPAC未登録の住宅地図
『龍野住宅案内図帳』日本特殊地図協会、1960年
『龍野市住宅地図』旭地図商会、1962年から1971年の間
『龍野市住宅地図』旭地図商会、1965年から1971年の間
『龍野市全図』1970年
『龍野市住宅地図』1970年
『龍野市・揖保川町住宅案内図』1970年・1971年
『龍野市住宅地図』1972年から1977年の間
『ゼンリン住宅地図 龍野市』1978年
『ゼンリン住宅地図 龍野市』1979年
『龍野市住宅地図』1980年
『ショウコウマップ』商工通信、1980年から1987年の間
『ショウコウマップ』商工通信、1987年から1990年の間
『龍野市・揖保郡住宅明細図』刊広社、1985年
『龍野市・揖保郡住宅明細図』刊広社、1988年
(写真)1960年代-1980年代の住宅地図。
都道府県立図書館や政令指定都市の図書館ならともかく、人口数万人の自治体の図書館がこの年代の住宅地図をそろえているのは珍しい。たつの市龍野にあった映画館跡地の調査にとても役立ちました。1955年(昭和30年)頃から起こった龍野文庫の運動とは関係ないでしょうが、旧館時代から郷土資料の収集に熱心な職員がいたのでしょうか。
(写真)1960年代-1980年代の住宅地図。