振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

御嵩町の映画館

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(写真)中山道みたけ館。2019年12月撮影。

 

2019年7月と12月、岐阜県可児郡御嵩町を訪れました。

 

1. 御嵩町を訪れる

御嵩町中山道の宿場町「御嶽宿」(嵩ではなく嶽)として栄えた町。人口1万7000人と小規模な自治体ですが、近代には可児郡役所が置かれていた町であり、1889年(明治22年)の町村制施行時に町制を敷いている歴史の古い町です。御嵩駅は名鉄広見線の終着駅であり、犬山線広見線を乗り継いで訪れることができます。名鉄電車の車内では御嵩の観光ポスターをよく見かけますが、これまで広見線新可児駅以東を訪れたことはありませんでした。

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(地図)愛知県名古屋市から見た岐阜県御嵩町の位置。©OpenStreetMap contributors

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(写真)名鉄広見線御嵩駅。2019年7月撮影。

 

1.1 御嵩の街並み

名鉄御嵩駅で電車を降りると、駅のすぐ東側がかつての御嶽宿の中心部のようです。商家竹屋(竹屋資料館)や御嶽宿本陣跡など宿場町の風情を残す建物はあるものの、街並みとして魅力的とは言い難いし、街並みはがらんとしており活気がありません。

なお、この後には御嵩町に隣接する加茂郡八百津町も訪れています。人口規模(御嵩町=18,000人、八百津町=10,000人)、鉄道の存廃(御嵩町=存続、八百津町=廃止)、高校の数(御嵩町=2校、八百津町=1校)などにもかかわらず、中心市街地は八百津町のほうが活気があるように思えました。なぜでしょう。

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(写真)かつての中山道沿いに形成された街並み。2019年12月撮影。

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(写真)商家竹屋。中山道みたけ館の別館扱い。2019年12月撮影。

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(写真)商家竹屋の館内。2019年12月撮影。

 

1.2 岐阜県立東濃高校

7月に訪れた際、帰路の電車内には多数の東濃高校生がいました。岐阜県立東濃高校は1896年(明治29年)に旧制東濃中学校として開校した高校であり、旧制岐阜中学校(現・岐阜県岐阜高校)、旧制高山中学校(現・岐阜県立斐太高校)、旧制大垣中学校(現・岐阜県立大垣北高校)に次いで、岐阜県で4番目に古い高校だそうです。

可児市美濃加茂市など中濃地域は外国人比率の高い地域です。岐阜高校・斐太高校・大垣北高校はその地区の最難関校であり、ほぼ全員が大学進学を目指すと思われますが、東濃高校はかなり性格が異なります。2018年度の東濃高校は全校生徒の1/4が外国人だそうで、進路は進学40%・就職50%・その他10%とのこと。2018年度には全校生徒328人のうち、フィリピン国籍が44人、ブラジル国籍が33人、中国国籍が3人、韓国国籍が1人だったそうです。

電車内を見渡してみると、外国人生徒は1/4以上に多い印象を受けました。東濃高校には外国人生徒支援のノウハウがあることから、外国人生徒が電車通学で集まってくるのかもしれません。飛び交っていた聞きなれない言語はタガログ語だったのでしょうか。

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(左)御嵩町役場。(右)岐阜県立東濃高校。2019年7月撮影。


 

1.3 中山道みたけ館

御嵩町図書館と御嵩町郷土館が入る中山道みたけ館は、1996年(平成8年)に開館した複合施設です。1階が図書館で2階が郷土館。郷土館には中山道御嶽宿ジオラマがあるし、近代以降の主産業であった亜炭産業についての展示もあるのですが、郷土館全体が撮影禁止となっているのが残念でした。1階の図書館入口には2020年(令和2年)の大河ドラマとなる明智光秀に関する展示がありましたが、2階の郷土館の職員が製作したと思われます。

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(写真)御嵩町図書館と御嵩町郷土館が入る中山道みたけ館。2019年12月撮影。

 

 御嵩町図書館の書架は他館であまり見かけない形状の凸型で、高さの割には圧迫感がありません。郷土資料コーナーには郷土に関するパスファインダー集のファイルがありました。「御嵩町の〇〇」と「岐阜県/全国の〇〇」の資料をセットで紹介しており、御嵩町の何かについて本格的に調べたい方にも役立ちそうでした。

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(写真)御嵩町図書館の書架。

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(写真)郷土に関するパスファインダー。(左)「御嵩キリシタンについて、隠れキリシタンについて」。(右)「中山道御嶽宿/伏見宿について、岐阜県の街道について」。


 

2. 御嵩町の映画館

かつて御嵩町には3館の映画館がありました。御嵩市街地に「日之出映画劇場」と「東濃シネマ劇場」の2館、伏見市街地に「伏見劇場」の1館です。1990年に御嵩町が刊行した『御嵩町史 通史編 下』には3館の概要が掲載されており、その他には1956年に御嵩町伏見支所が刊行した『伏見町誌』で伏見劇場について言及されています。御嵩町の映画館について調べたことは「岐阜県の映画館 - 消えた映画館の記憶」に掲載しており、跡地については「消えた映画館の記憶地図(全国版)」にマッピングしています。

hekikaicinema.memo.wiki

www.google.com

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(写真)1970年代の御嵩市街地の航空写真。国土地理院 地理院地図

 

2.1 日之出映画劇場(1914年-1968年)

所在地 : 岐阜県可児郡御嵩町1536(1966年)
開館年 : 1914年8月24日
閉館年 : 1968年
1950年・1955年の映画館名簿では「曙座」。1960年の映画館名簿には「曙座」と「日之出映画劇場」の双方が掲載されているが理由は不明。1963年の映画館名簿では「日之出映画劇場」。1966年の映画館名簿では「御嵩日之出映画劇場」。1969年の映画館名簿には掲載されていない。跡地は「中山道みたけ館」の南南東100mにあるアパート「リゾームハウスA・リゾームハウスB」。

中山道みたけ館から中山道を挟んですぐ南、現在はアパートが建っている場所には日之出映画劇場がありました。閉館後は御嵩シルバー株式会社の工場に転用され、1989年まで建物が残っていたということで、1970年代の航空写真には映画館だった巨大な建物が写っています。

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(写真)リゾームハウスA・B。日之出映画劇場跡地。2019年12月撮影。

 

2.2 東濃シネマ劇場(1956年-1960年代中頃)

所在地 : 岐阜県可児郡御嵩町(1960年)
開館年 : 1956年
閉館年 : 1963年以後1966年以前
1955年の映画館名簿には掲載されていない。1958年・1960年・1963年の映画館名簿では「東濃シネマ劇場」。1966年の映画館名簿には掲載されていない。跡地は「御嵩町営有料駐車場」。

名鉄御嵩駅のホーム西端の北側に東濃シネマ劇場がありました。跡地は御嵩町営有料駐車場ということですが、現在も利用者がいるのでしょうか。わずか数年で閉館したとのことで、現在の跡地の周囲に商店などはありません。

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(写真)御嵩町営有料駐車場。東濃シネマ劇場跡地。2019年12月撮影。

 

2.3 伏見劇場(1925年-1959年)

所在地 : 岐阜県可児郡伏見町(1955年)
開館年 : 1925年12月4日
閉館年 : 1959年9月
1950年の映画館名簿には掲載されていない。1953年・1955年の映画館名簿では「伏見劇場」。1960年の映画館名簿には掲載されていない。

中山道御嶽宿から約4.5km西には伏見宿がありました。現在の伏見公民館の敷地内には「伏見宿本陣之跡」の石碑が建っています。伏見劇場の跡地は伏見公民館の北約100mとされますが、正確な位置は判然としません。

伏見公民館から200m西には登録有形文化財松屋山田家住宅がありました。和風建築にモルタルの旧伏見郵便局がくっついて見えるのがユーモラスです。

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(写真)伏見宿本陣之跡と伏見公民館。2019年12月撮影。

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(写真)松屋山田家住宅。旧伏見郵便局を併設。登録有形文化財。2019年12月撮影。