(写真)伊豆急行線の8000系電車。
2019年(令和元年)6月、静岡県賀茂郡東伊豆町稲取を訪れました。
(地図)静岡県における東伊豆町の位置。©OpenStreetMap contributors
この日は「第4回伊豆稲取キンメマラソン」があったそうで、私と同じ電車に乗っていた方はほとんど伊豆稲取駅で降りました。伊豆半島東部には江戸城の築城に用いられた石丁場が多数あったそうで、伊豆稲取駅前には切り出された石が置かれた築城石広場があります。
(左)伊豆稲取駅で降りるキンメマラソンの参加者。(右)伊豆稲取駅前の築城石広場。
1. 稲取を訪れる
稲取地区は賀茂郡東伊豆町の町役場がある町。東伊豆町の総人口は約12,000人であり、稲取地区と熱川地区がそれぞれ約6,000人を有しているようです。民家が広範囲に広がる熱川地区とは異なり、稲取地区は東伊豆町立稲取小学校を中心とする南北1km・東西1.5kmの範囲にはっきりとした市街地が形成されています。
1.1 稲取市街地
いったん伊豆稲取駅で降りたとはいえ、45分後の電車に乗って伊豆急下田駅に向かいます。稲取港の朝市などはスルーして、目的地である映画館跡地2軒を目指しました。
オリオン座があった東西通りは1車線道路ではあるものの、静岡銀行や静岡中央銀行の支店があり、呉服店・酒屋・米屋・食堂などが生き残っており、かつてメインストリートだった雰囲気を漂わせていました。
(写真)東西通りの東側。左がオリオン座跡地?
1.2 ミニミニ図書館
1992年開館の東伊豆町立図書館は稲取地区ではなく熱川地区にあり、稲取地区には2009年10月開館の図書室「ミニミニ図書館」があります。1986年開館の東伊豆町立体育センターは稲取地区に置かれており、人口規模の等しい両地区に社会教育施設を分散させたのだと思われます。
東伊豆町の人口は約12,000人。愛知県では豊山町(約15,000人)や南知多町(約18,000人)と同規模ですが、豊山町や南知多町には公共図書館がありません。東伊豆町の規模の自治体で1990年代初頭に単独施設の図書館を開館させたことには興味があります。東伊豆町における図書館運動については『ならいの風吹く町に 東伊豆町住民の図書館づくり』という書籍がありますが未確認。
(左)東伊豆町立稲取小学校。(右)「ミニミニ図書館」がある稲取小学校体育館。
「ミニミニ図書館」は稲取地区の中心部にある東伊豆町立稲取小学校の体育館の一室を用いています。開館時間は「10時-17時(12時-13時は閉館)」、休館日は「土曜日・日曜日・祝祭日」ですが、東伊豆町立図書館公式サイトにこれらの利用案内は書かれておらず、土日が休館日であることはわかりません。稲取地区唯一の図書施設ということで、年間4,000人程度の利用者はいるようなので、利用案内くらいは公式サイトに書いてほしい。学校の敷地内ではありますが、「ミニミニ図書館」の入口は公道から5mの距離にあるため、敷居の高さは感じませんでした。なお、私が訪れたのは日曜日の朝8時過ぎでした。
(写真)「ミニミニ図書館」。
(写真)「ミニミニ図書館」。
(写真)稲取温泉街の入口。
(写真)稲取温泉街。
1. 東伊豆町の映画館
各年版の映画館名簿や『東伊豆町誌』(東伊豆町、1989年)などによると、東伊豆町の稲取地区には、オリオン座と稲取中央劇場という2館の映画館がありました。東伊豆町の城東地区には白田劇場と熱川劇場があり、東伊豆町には計4館の映画館がありました。4館の中で最後まで残ったのは稲取中央劇場であり、跡地を確定させられたのも稲取中央劇場のみです。
(地図2枚)稲取地区における映画館跡地。国土地理院 地理院地図。
2.1 オリオン劇場/オリオン座(1970年代初頭)
所在地 : 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取801(1969年)
開館年 : 1960年以前
閉館年 : 1969年以後1973年以前
オリオン劇場/オリオン座については文献での言及を確認できていない。Google mapsで「東伊豆町稲取801」を検索すると「宿」という用途不明の建物の場所に飛び、またGoogleで「東伊豆町稲取801」を検索すると不動産売買の鈴木商会という企業が出てくるが、詳細は不明。
事前にGoogle ストリートビューを見た限りでは、映画館時代の建物を魔改造したものに見えました。現地を訪れて建物を観察すると、奥のガレージとなっている部分が映画館のホールだったとしてもおかしくないものの、映画館の建物ではないだろうと思いました。
(写真)オリオン座跡地?にある「宿」。
(写真)オリオン座跡地?にある「宿」。
1.2 稲取中央劇場(-1978年)
所在地 : 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取415(1969年)
開館年 : 1952年以前
閉館年 : 1978年
大正時代には喜遊座という芝居小屋であり、のちに映画館に転換して稲取中央劇場に改称。『目で見る 三島・伊豆の100年』(郷土出版社、1991年)には1951年(昭和26年)頃の写真あり。1978年(昭和53年)に閉館した後、中央プラザとしてヤオハンの衣料部がテナントに入っていたが、2006年(平成18年)現在は福祉関係の事務所が一部を利用していた。
中央プラザの正面口が面している県道の標高は16m、裏口が面している道路の標高は10m。約2階分の高低差があり、映画館時代にどのような建物が建っていたのか気になります。
(写真)稲取中央劇場跡地にある中央プラザ。
(写真)稲取中央劇場跡地にある中央プラザ。