振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

「ウィキペディアタウン@北杜 須玉町編」に参加する

(写真)正覚寺の杉戸を眺める参加者。

2024年(令和6年)10月12日(土)、山梨県北杜市北杜市すたま森の図書館で開催された「ウィキペディアタウン@北杜 須玉町編」に参加しました。北杜市須玉町を訪れる須玉町の映画館からの続きです。

 

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1. イベント概要

1.1 北杜市立図書館

北杜市山梨県の北西端にある自治体であり、北巨摩郡5町3村が合併して現在の市域が形成されています。8地域すべてに公共図書館があり、いずれも立派な図書館であるという特徴がありますが、人口4万3000人に公共図書館8館というのは全国的に見てもかなり多いのではないかと思います。

2023年(令和5年)には8館を3館程度に集約するという計画が浮上しましたが、集約に反対する市民団体が署名運動を行い、2024年(令和6年)には集約に関する条例が市議会の反対多数で否決されています。

(写真)北杜市すたま森の図書館。

 

1.2 「ウィキペディアタウン@北杜」

北杜市立図書館では2019年(令和元年)から「ウィキペディアタウン@北杜」と題したウィキペディアタウンが開催されています。

2019年(令和元年)10月には金田一春彦記念図書館で、2020年(令和2年)11月には小淵沢図書館で、2021年(令和3年)5月にはながさか図書館というように、1年に1館ずつ8館を巡回するように開催されており、すたま森の図書館で6館目となりました。

講師はWikipedia日本語版管理者のさかおりさんであり、さかおりさんはWikipedia地方病 (日本住血吸虫症) - Wikipedia という記事を書いたことで知られています。また、都留文科大学図書館情報学を教える日向良和教授、山梨県立図書館で司書を務める丸山直也さんなどが協力者として参加し、グループファシリテーターなどを務めています。私は小淵沢図書館やながさか図書館で開催された際などに一般参加しています。

(写真)告知チラシ

 

2. 若神子のまちあるき

2.1 正覚寺

すたま森の図書館に集合した後、午前中は徒歩で正覚寺諏訪神社、三輪神社をめぐりました。

正覚寺は若神子北部の山裾にある曹洞宗の寺院であり、山門、本堂、鐘楼、庫裏、経蔵などの建物があります。甲斐源氏の祖である新羅三郎義光との関わりで知られている寺であり、新羅三郎義光の位牌が置かれています。

本堂の鬼瓦などに武田菱紋が使われていますが、庫裏の内部にも巨大な武田菱紋が置かれていました。本堂入口近くに吊るされている駕籠は、歴代の住職が葬儀の際などに用いたそうです。

(写真)正覚寺

(写真)武田菱紋。

(左)住職が用いた駕籠。

 

興味深いのは三枝雲岱(うんたい)が杉戸に描いた作品です。三枝雲岱は巨摩郡浅尾新田(現・北杜市明野地区)出身であり、甲斐国でも有数の南宋画家だったようです。丹頂鶴、梅、老松の絵が残されていますが、圧倒的に見栄えがいいのが丹頂鶴です。

(写真)杉戸に描かれた三枝雲岱の丹頂鶴。

(写真)杉戸に描かれた三枝雲岱の梅。

(写真)味噌なめ地蔵。

 

2.2 諏訪神社

正覚寺から南下した場所の山裾には諏訪神社があります。

長野県の諏訪大社と同様に、7年に一度(6年に一度)の頻度で御柱祭を開催する神社であり、向かって右側に一之御柱、向かって左側に二之御柱が屹立しています。2016年(平成28年)に御柱祭が開催された後、2022年(令和4年)の御柱祭はコロナ禍のために中止となっています。

拝殿の左側には能舞台のような舞殿があるのも諏訪神社の特徴です。

(写真)諏訪神社御柱

(写真)諏訪神社で解説を聞く参加者。

 

2.3 三輪神社

北杜市すたま森の図書館から南に下ると、田んぼの中に三輪神社があり、上部に地蔵が彫られた六地蔵幢(ろくじぞうどう)が山梨県指定文化財となっています。六地蔵幢は地蔵信仰に関連する供養塔であり、室町時代の永享6年(1434年)頃に建立されたもの。三輪神社で最も古い石造物です。

近くの長泉寺には文安3年(1446年)の名号板碑があり、こちらも供養塔として山梨県指定文化財となっています。ほぼ同時代の同一集落に役割は同じながらも全く異なる形状の供養塔が建立されたことに興味をそそられます。

(写真)三輪神社の六地蔵幢。

(写真)三輪神社。

 

拝殿の左側奥には「金色蚕養神」と書かれた石碑があり、背面を見ると1916年(大正5年)に建立されたことが分かります。近代の山梨県は養蚕王国と呼ばれ、藤村紫朗県令によって県内に製糸工場も多数建てられていますが、須玉町で生産された繭は長野県諏訪地方や群馬県富岡製糸場などに送られていたとのことです。

(写真)石碑「金色蚕養神」。

 

3. ウィキペディア編集

3.1 文献

各自で昼食を取った後、午後にはすたま森の図書館でWikipediaの編集作業を行いました。同一集落にある寺院と神社が編集題材ということで、『須玉町史』など複数の題材に関わる文献については複本も準備されていました。

(写真)文献リスト。

 

書籍だけでなく、山梨日日新聞データベースから題材に言及している記事を印刷したもの、国立国会図書館デジタルコレクションから題材に言及している文献を印刷したものなども準備されていました。

書籍だけでも十分な文章量の記事になりますが、古い画像を追加したいときなどにデジコレが役に立ち、近年のトピックなどを反映させるためには新聞記事が役に立ちます。

(写真)準備された新聞記事。

 

3.2 編集記事

正覚寺 (北杜市須玉町若神子) - Wikipedia - 加筆。

諏訪神社 (北杜市須玉町若神子) - Wikipedia - 新規作成。

三輪神社 (北杜市) - Wikipedia - 新規作成。

(写真)編集中の参加者。