振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

「信州・酒ペディア in 上諏訪」に参加する

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(写真)紅葉がきれいな諏訪市図書館

www.library.pref.nagano.jp

 

2018年10月28日(土)、全国発酵食品サミット in NAGANOプレイベントの「信州・酒ペディア in 上諏訪」に参加した。主催は県立長野図書館、しかし諏訪市図書館が共催で会場は諏訪市図書館の視聴覚室だった。諏訪市図書館の館長や職員、諏訪市内の学校の教員、長野県醸造試験場の方、長野県内の公共/大学図書館の方など、約20人が参加した。

 

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(左)会場の諏訪市図書館視聴覚室。(右)宮坂醸造社長の宮坂直孝さん。

 

1. スケジュール

09:30-10:30 「記事を書くことの楽しさ」

       説明 : かんた

10:00-10:30 「宮坂醸造の酒づくりとまちづくり」

       説明 : 宮坂直孝さん(宮坂醸造社長)

10:30-12:30 諏訪五蔵周辺のまちあるき

       ガイド : サカマユウジさん

12:30-13:30 丸高蔵 みそ茶屋千の水で昼食

13:30-16:20 ウィキペディア編集

16:20-16:50 成果発表・講評

 

 スケジュールは各地のウィキペディアタウンと似たような感じ。午前中には諏訪市図書館の視聴覚室でウィキペディア諏訪市における醸造業の説明を聞き、その後諏訪市のマイクロバスで諏訪五蔵周辺まで移動して、自由に蔵元の見学を行った。温泉が湧き出る地区でサカマユウジさんの解説を聞き、マイクロバスで昼食場所の丸高蔵へ。食事を終えた人から徒歩で諏訪市図書館に戻った。2時間30分弱がウィキペディアの編集時間。4グループに分かれて計7記事の編集を行い、2記事が新規作成され、既存の5記事が加筆された。

 

2. イベントのふりかえり

 宮坂直孝さんの話はひとことも聞き漏らせない面白い話だった。イベント前に朝日新聞信濃毎日新聞の記事データベースで「宮坂醸造」「諏訪五蔵」などと検索したら大量の記事が出てくる。諏訪市にある5つの酒蔵の緩やかな組織「諏訪五蔵」では、1998年から年2回の呑みあるきイベント「上諏訪街道 呑みあるき」を実施しており、各回に約2000人もの人が参加する。

 「諏訪五蔵」の仕掛人宮坂直孝さんらしく、宮坂醸造他の日本酒メーカーに先駆けて海外進出を行っているのも宮坂直孝さんの代からだという。特に日本酒をめぐる昨今の話題など、話の内容はそのまま文章化できるくらい密度が濃かった。「狭い範囲に酒蔵が5軒も集まっているのは全国的に見て珍しい」という諏訪五蔵の説明はこちらから

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(写真)図書館から諏訪五蔵までの移動はマイクロバス。さすが観光地の自治体。

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(写真)宮坂醸造の蔵元ショップ「セラ真澄」。

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(左)「横笛」の伊東酒造。(中)舞姫。(右)麗人酒造。

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(写真)見学中の参加者。諏訪五蔵周辺はすごい交通量。

 

 酒蔵の見学後にはサカマユウジさんのガイドを聞きながら小和田地区を歩いた。私は日本酒はもちろんアルコール類全般がダメなので、酒蔵の自由見学よりもサカマさんの説明のほうが興味深く、資料などをもらってもう少し深く知りたいと思った。

 小和田地区は澄んだ井戸水が必要な諏訪五蔵からすぐの場所にありながら温泉が湧き出ている場所であり、民家の軒先には温かい水が出る蛇口がいくつもある。掘る深さによって澄んだ水が出たり温泉がでたりするそうで、Google mapでは名前も確認できない小河川「角間川」が重要な役割を果たしているらしい。

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(左)民家の軒先にある温泉の蛇口。硫黄のにおい。(右)地形の解説を行うサカマユウジさん。

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(写真)霧ヶ峰から流れる角間川。

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(写真)宮坂醸造と同系列の丸高蔵が昼食場所。味噌・醤油・漬物と発酵食品ばかり。

 

 昼食を食べてから諏訪市図書館に戻り、まずは県立長野図書館の小澤さんによるウィキペディアタウンの説明。毎度のことながら小澤さんの説明は見事だと思う。ウィキペディアタウンを開催する意義や目的について、自分の言葉でわかりやすく参加者に伝えている。

 他地域のウィキペディアタウンで主催者が同じことやってるだろうか。小澤さんと同じだけイベントの意義や目的を理解していても、主催側の図書館員でここまで説明してる方を見たことがない。他地域ではウィキペディアの説明役の講師を “立てる” ために図書館員が一歩引いてるのだろうけど、主催者が説明してほしいのです。

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 (写真)ウィキペディアタウンについて説明する小澤さん。

 

3. 今回の編集対象記事

新規作成・・・麗人酒造、本金酒造

加筆・・・・・宮坂醸造、伊東酒造、舞姫 (酒造メーカー)、協会系酵母諏訪市

 

午後には塩尻から、アーバンデータチャレンジ参加組の助っ人が3人やってきた。参加者を4-5人ずつ4グループに分け、「麗人酒造と本金酒造の新規作成」、「宮坂醸造と伊東酒造と舞姫の加筆」、「協会系酵母の加筆」、「諏訪市(特に醸造業)の加筆」に取り組んだ。ちょっと記事数が多いように感じる。「宮坂醸造の加筆」と「諏訪市の加筆」のみでもよいくらい。宮坂醸造は新聞記事から雑誌インタビューまで深く掘り下げる価値のある題材だと思った。

 本金酒造などは文献が乏しかった。諏訪五蔵すべてをウィキペディアの記事にすることは意義深いことではあるけれど、無理に取り組まなくてもよかったかもしれない。とはいえこれは結果論であり、編集対象記事を決めるのは難しい。

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4. 個人的な反省

 私は「ウィキペディアとは: 記事を書くことの楽しさ」というテーマで参加者に向けて話す役割がありました。またウィキペディア編集終了後に講評を行う役割がありました。参加者に何かしらのヒントを感じてもらえるような発表がしたかったのですが、今回は準備不足のままイベント当日を迎えてしまい、 参加者にウィキペディアウィキペディアタウンの魅力を伝えきれなかったと思っています。ぐぬぬ。どう改善すればもっとよくなるか教えてください。


 なお、発表スライドはSlide Shareにアップロードしています。今回言いたかったことをひとことで言うと、「それまで紙の文献にしか書かれてなかった地域の情報をウェブに上げることはとても楽しいし意義のある事で、ウェブに上げるためのツールとしてウィキペディアが役に立つかもしれない」ということです。

www.slideshare.net

 

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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