(写真)ウィキペディア展覧会のブース。
2024年(令和6年)11月5日(火)から7日(木)、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催された図書館総合展2024に参加し、ブース出展「ウィキペディア展覧会」に協力しました。
1. 企画の概要
1.1 図書館総合展とは
図書館総合展は毎年秋に開催される図書館業界の展示会です。パシフィコ横浜のホールが会場となり、一日につき約1万人、3日間で延べ3万人が来場します。
図書館管理業務の受託を行う企業、図書館システムや図書館向け什器などを販売する企業、出版社や書店、図書館情報学に関する大学のゼミなどが出展者となり、公共図書館や学校図書館など様々な分野の図書館員、図書館に関連する様々な企業の社員、図書館情報学を学ぶ学生などが来場します。
(写真)図書館総合展の会場。大企業のブース。
(写真)図書館総合展の会場。(左)壁際のブース(大宅壮一文庫など)。(右)中央部のブース(アカデミック・リソース・ガイド)。
1.2 「ウィキペディア展覧会」とは
図書館総合展の参加者に図書館とWikipediaの相性の良さを広めるべく、漱石の猫さんが中心となって2022年(令和4年)から出展しているのが「ウィキペディア展覧会」ブースです。
今回の図書館総合展では、3日間に渡ってブースを出展したほか、ポスターセッションにてポスター展示も行っています。また、11月6日の午前中には、書籍『70歳のウィキペディアン』の著者である門倉百合子さんがフォーラム会場で「ウィキメディア・ムーブメントの今」と題した発表を行いました。
10人弱のスタッフがブース対応やフォーラムのZoom配信などに関わりました。来場した方にWikipediaの基本的な仕組みや編集方法を説明したほか、日本各地で開催されているウィキペディアタウンについて紹介したり、Wikipediaの編集体験なども行っています。
なお、ブースの出展にはウィキメディア財団から資金面で助成を受けています。
2. ウィキペディア展覧会
2.1 会場ブース
ブースを訪れる方の多くは、図書館総合展の会場でたまたまウィキペディア展覧会のブースを見つけてくださった方です。多くの方が「なぜ図書館の展示会にWikipediaのブースが出展しているのだろう」と思ったことでしょう。
Wikipediaには「出典に基づいて書かなければいけない」というルールがあり、Wikipedia側から見れば編集を行う際には図書館の文献を使う、図書館側から見れば自らが所蔵する文献が使われるという相互関係にあります。
このように図書館とWikipediaは親和性が高いため、全国各地でウィキペディアタウンという市民参加型ワークショップが開催されています。公共図書館の文献を用いて地域に関するWikipedia記事を編集するのが一般的なウィキペディアタウンですが、題材を文学や芸術などの分野に特化させたり、専門図書館の文献を用いて行うエディタソンなどもあります。
(写真)Wikipedia編集体験中のお客さんと対応中のスタッフ。
ウィキペディア展覧会のブースに来られる方は公共図書館や学校図書館に勤めている方が多いのですが、国立国会図書館に勤めている方、百科事典を刊行している出版社の方、大学で図書館情報学を教えている方なども来られました。Wikipediaそのものの認知度はとても高いのですが、Wikipediaがもっと活用できることはまだまだ知られておらず、ブース出展を行った甲斐があったと思います。
(写真)Wikipediaについての説明を聞くお客さんと対応中のスタッフ。
公共図書館で開催されたウィキペディアタウンに参加したことのある方で、それ以来編集を行っていないためアカウントを忘れてしまったという方がいました。
その時に編集した記事を思い出してもらい、その記事の編集履歴からアカウント名が判明しました。自身が編集した記事は記憶に残っていることが多いため、イベントの際には一度でも何らかの記事を編集してもらうことが大事だと感じました。
(写真)フォーラム会場で開催された「ウィキメディア・ムーブメントの今」を映したモニター。
私がブースで対応した方の中に、「著述家である自身の記事をかつて作成したが、宣伝とみなされて削除されてしまった」という方がいました。
Wikipedia内で記事が削除されると編集記録には残らず、赤リンクをクリックして記事作成画面を出さない限り、記事が削除されたことも把握しづらい。この方は「自分が書いた記事がいつの間にか消えてしまった」と感じたようです。同じような状況に遭ってWikipediaが難しいと考える初心者は多いのではないかと感じました。
(写真)Wikipediaに関する書籍や新聞記事の展示。
(写真)Wikipedia編集体験用のパソコン。
「ある人物記事の出典として自身の個人サイトが使われているが、自身の許諾なく使われている。出典から除去できないだろうか」という相談も受けました。
詳しく話を聞いたところ、当該人物の死去を伝える出典として用いられているのが不本意とのことです。Wikipediaに出典として用いる際に許諾を得る必要はありませんが、個人サイトを出典とするのはWikipedia:信頼できる情報源 - Wikipediaの観点で好ましくないため、「Wikipediaは見るのも嫌だった」とのことですが、(除去されたことで)「長年の心のつかえがとれた」とのことでした。
(写真)ウィキメディアグッズの販売。
私はその場でWikipediaを実際に編集してみせるデモンストレーションも担当しました。
記事「トックク」には「旧正月に食べるようになった起源は分からない」という文章があったのですが、これまでこの文章には出典が付けられていませんでした。『韓国伝統文化事典』に出典となりうる記述があったため、この文献を出典に加える編集プロセスを見てもらい、Wikipediaの編集画面の仕組みや、Wikipediaでは必ず履歴が残ることなども説明しています。
(写真)日本におけるWikipedia関連コミュニティの紹介。
2.2 ポスターセッション
(写真)ウィキペディア展覧会のポスター展示。
(写真)ウィキペディア展覧会のポスター展示。
(写真)ポスター展示。
(写真)ポスター展示の例。(左)雑誌専門図書館の大宅壮一文庫。(右)公立図書館におけるBL図書の収集に関する研究を展示する聖徳大学図書館情報コース。
(写真)開催前日の11月4日の設営風景。11月7日の終了後の撤収風景。