振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

西条市立西条図書館を訪れる

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(写真)西条市立西条図書館。

2021年(令和3年)8月、愛媛県西条市西条市立図書館を訪れました。「西条市の映画館」に続きます。

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1. 西条市立西条図書館

1.1 図書館の歴史

西条市は四国屈指の工業都市であり、今治造船西条工場などがあります。

 

1951年(昭和26年)11月には市制10周年記念事業として、字堀端にあった旧愛媛県西条保健所を改修して初代の西条市立図書館が開館。1953年(昭和28年)2月には渡辺本治 - Wikipedia(後の衆議院議員)の寄付によって、木造2階建ての建物(228.92m2)を新築しました。1971年(昭和46年)7月には市制30周年記念事業として、明屋敷238-2に鉄筋コンクリート造3階建ての建物(673.75m2)を新築。この建物は愛媛県西条高校の南側に隣接しており、この場所は西条藩の陣屋跡にあたります。

2009年(平成21年)6月1日に西条市立西条図書館が開館。図書館入口には石井秋平氏の銅板レリーフがあり、新図書館建設に際して多大な貢献をしたとありました。朝日新聞記事によると公募によって「望館 ~山・川・人~」という愛称がつけられたようですが、ウェブ検索をした限りではまったく定着していないようです。

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(地図)愛媛県における西条市の位置。OpenStreetMap contributors

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(写真)図書館の入口。

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(写真)「石井秋平氏之像」。

 

1.2 図書館の館内

西条市立図書館の建物の設計は石本建築事務所。書架は2000年代後半以降の流行ともいえる焦げ茶色、閲覧席の座面はベージュで統一されており、館内は落ち着いた雰囲気です。西条市は人口約11万人の自治体ですが、西条図書館の延床面積は5,253m2にも達します。2019年度末の蔵書数は約39万冊。

西条市は四国最高峰の石鎚山がある自治体でもあり、西条図書館の山型の屋根は石鎚山をモチーフとしているようです。1階の中央部には山岳関連資料が別置されていました。

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(写真)1階の閲覧席。

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(左)山岳関連資料。(右)1階の書架や閲覧席。

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(写真)2階から見た吹き抜け。

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(写真)2階の書架。

 

1.3 鉄道関連資料

2階には「十河信二氏蔵書」コーナーがあり、新幹線0系の写真なども展示されていました。1955年(昭和30年)から1963年(昭和38年)まで国鉄総裁を務めた十河氏は、総裁就任前に西条市長を務めています。

十河氏の遺族から寄贈された資料は1万点を超え、2016年度からはデジタル化も行われているらしい。国鉄の常務会や理事会などの会議資料、東海道新幹線を建設した際の一次資料などがあって価値が高いそうです。

参考:「十河信二の資料1万点、目録に 西条市教委、研究機関などに配布」産経ニュース、2016年5月31日

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(写真)郷土資料。

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(写真)「十河信二氏蔵書」コーナー。

 

2階の最奥部には鉄道関連文献を集めたコーナーがあり、1970年代以降の『鉄道ファン』や『鉄道ジャーナル』など、鉄道系雑誌のバックナンバーが多数ありました。

公共図書館としては質量ともになかなかの蔵書に見えましたが、鉄道ファンの基準ではどうなんだろう。ウェブ検索をした限りでは、この鉄道関連文献コーナーはあまり知られていないように思われます。

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(写真)鉄道関連資料コーナー。

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(写真)鉄道関連資料コーナー。(左)1970年代の雑誌『鉄道ファン』。(右)1970年代の雑誌『鉄道ジャーナル』。

 

1.4 自動化書庫

2021年(令和3年)9月24日には西条市立西条図書館の自動化書庫に焦点を当てた愛媛新聞の記事が出ました。

参考:「四国でココだけ!ロボット図書館 西条図書館「自動化書庫」に潜入愛媛新聞、2021年9月24日

 

西条図書館の自動化書庫は「四国初&唯一」とのことですが、”(記者が)関係者以外では初めて自動化書庫に潜入” とあるように、これまではあまりPRしていなかったようです。

自動化書庫は書庫出納の多い図書館で力を発揮するものと思われます。私が在学していた大学の図書館では、図書館内のOPACから書庫出納ボタンを押すと10分後には資料が所定の場所に置かれています。膨大な書庫出納がある大学図書館で、司書とのやり取りをすることなくスムーズに資料を閲覧できる仕組みです。

西条図書館のOPACにレシートを印刷する機能はなく、閲覧したい書名を書いた予約用紙をカウンターに持っていくと、司書が改めてOPACで検索して書庫出納を行う形です。また、西条図書館における書庫出納は1日(たった)15冊とのことで、導入費用1億4200万円、メンテナンス費用年間200万円という費用の妥当性が気になります。

新聞記事は図書館側から新聞社側に働きかけたものではないかと思います。自館の特長をPRする意識が高まっているのは良いことだと思いました。

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(写真)OPAC画面。