振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

三木市立中央図書館を訪れる

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(写真)三木市立中央図書館。

2022年(令和4年)3月、兵庫県三木市三木市立中央図書館を訪れました。「三木市を訪れる」からの続きです。「三木市の映画館」に続きます。

ayc.hatenablog.com

 

1. 三木市立中央図書館

1.1 図書館の歴史

1929年(昭和4年)には三木町立三樹小学校内に三木町立図書館が開館。1982年(昭和57年)には三木城址の一角に2代目となる三木市立図書館が開館。2015年(平成27年)には3代目となる現行の三木市立中央図書館が開館しています。三木市立図書館 - Wikipediaを小加筆しましたが、ぐぐって得られる沿革情報が乏しい。愛知県内の図書館は『三木市史』を所蔵していないのでこれ以上の加筆が難しいですが、次に兵庫県を訪れた際には文献を集めてみようと思いました。

 

2000年代以降の沿革は興味深い。2005年(平成17年)の貸出数は約17万冊であり、1人あたり貸出数は2冊にすぎませんでしたが、2006年(平成18年)の三木市立図書館活性化構想策定以降には大きな変化を見せ、2年後には貸出数が2倍になっています。

さらに2009年(平成21年)と2010年(平成22年)には分館を開館させ、2015年(平成27年)には本館の新館が開館。2019年度(令和元年度)の貸出数は15年前の5倍以上となる約90万冊に達しており、1人あたり貸出冊数は11.9冊となっています。

兵庫県自治体では猪名川町立図書館に次いで第2位、兵庫県の28市の中では第1位。全国の同規模自治体(人口6万~8万人)110市区の中で第3位という好成績。単なる新館効果ではない劇的な変化であり、図書館行政を主導している方はさぞ有能な方なのだろうと思いました。

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(写真)2015年までの三木市立図書館。現在は三木市立みき歴史資料館。photo : 663highland - Wikimedia Commons

 

1.2 図書館の館内

三木市立中央図書館は背後が里山の斜面となっている場所にあり、1階が書庫や視聴覚室、2階のワンフロアが開架室という変則的な構造です。天井や柱は白色が基調で、床面は赤色、窓が大きい。新しい図書館なのに背表紙が退色している棚もありますが、明るくて解放感のある室内です。館内のサインは白色と黒色を基調とし、フォントも含めて2010年代の流行という印象。

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(写真)開架室の入口。

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(左)1階のフロアマップ。(右)地域資料のサイン。

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(左)視聴覚室のサイン。(右)注意事項のサイン。

 

開架や閉架書庫の郷土資料で好感触を得たため、図書館では三木市にあった映画館の跡地に関するレファレンスを行いました。自分で探し出したもの以外の文献では跡地が判明しませんでしたが、職員が "両親から聞いた記憶" という注釈付きながらも大正館/三木東映の跡地を明らかにしてくださいました。私が航空写真などから推定していた場所がまさに跡地だったようです。

 

1.3 三木市の鳥観図・地図

旧館時代の郷土資料は閉架書庫にあったそうですが、新館の開館時に開架に置くようになったとのこと。郷土資料は充実している印象を受けました。

 

播州三木要覧』1938年

三木市の映画館について調べる過程で、書庫にある『播州三木要覧』(三木町、1938年)という鳥観図を閲覧しました。1938年(昭和13年)1月28日には三木電気鉄道(現・神戸電鉄粟生線)が三木東口駅(現・三木上の丸駅)から三木福有橋駅(現・三木駅)まで延伸されており、これを記念した鳥観図でしょうか。戦前における三木の名所や主要施設がよくわかる記録的価値の高い鳥観図であり、デザイン的にも優れています。

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(絵図)『播州三木要覧』三木町、1938年。三木市立中央図書館所蔵。※全体ではない

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(絵図)『播州三木要覧』三木町、1938年。三木町中心部。三木市立中央図書館所蔵。

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(絵図)『播州三木要覧』三木町、1938年。電鉄三木駅周辺。三木市立中央図書館所蔵。

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(絵図)『播州三木要覧』三木町、1938年。大宮八幡宮三木市立中央図書館所蔵。

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(絵図)『播州三木要覧』三木町、1938年。三木城址三木市立中央図書館所蔵。

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『三木町全図 昭和二十六年』1950年

書庫には古い地形図などもありますが、以下の地図は戦後の1950年(昭和25年)頃の三木市街地。翌年の1951年(昭和26年)には三木福有橋駅(現・三木駅)から電鉄小野駅(現・小野駅)まで延伸されており、延伸間際の中途半端な状態の線路が描かれています。現在の三木市観光協会の正面、湯の山街道駐車場の場所に三木町役場があったようです。

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(地図)『三木町全図 昭和二十六年』三木町、1950年。三木市立中央図書館所蔵。