(写真)博物館明治村に移築された劇場の呉服座。
かつて池田市には演劇場の「呉服座」がありました。1971年(昭和46年)には愛知県犬山市の博物館明治村に移築され、1984年(昭和59年)には重要文化財に指定されています。「池田市の映画館」に続きます。
1. 池田市を訪れる
1.1 池田栄町商店街
関西の主要私鉄駅の駅前のイメージ通りに、阪急宝塚線池田駅の北口にはアーケード商店街の池田栄町商店街があります。南北に約350mに渡って伸びている商店街であり、中央部を横断する道路を境に南がサカエマチ1番街、北がサカエマチ2番街となっています。
(写真)サカエマチ1番街。
もともと池田の町は本町や新町が中心でしたが、1910年(明治43年)に箕面有馬電気軌道(現在の阪急宝塚線)池田駅が開業したことで、本町や新町と池田駅を結ぶ位置にこの商店街が形成されます。1959年(昭和34年)にはアーケードが設置されています。
(写真)サカエマチ1番街。
(写真)サカエマチ1番街。
(写真)サカエマチ2番街。
(写真)サカエマチ2番街。
2. 池田市立図書館
2.1 図書館の歴史
1980年(昭和55年)に開館した旧館が老朽化したことや、旧館は丘の上にあるためにアクセスに難があること(愛称は「丘の上の図書館」)などから、2019年(令和元年)には池田駅前の複合商業施設 サンシティ池田に池田市立図書館が移転しました。
近年の大阪府では自治体中心駅の駅前にある商業施設に中央館を移転させる自治体が目立ちます。過去10年では池田市立図書館のほかに、和泉市立和泉図書館(フチュール和泉、2011年)、東大阪市立永和図書館暫定施設(ヴェル・ノール布施、2012年)、寝屋川市立中央図書館(アドバンスねやがわ、2021年)、泉大津市立図書館(アルザタウン泉大津、2021年)などが移転開館しており、駅から離れた場所に単独館として開館した松原市民図書館(2020年)や守口市立図書館(2020年)が新鮮に思えるほどです。
2.2 図書館の館内
図書館内の売りはアルネ・ヤコブセンによる椅子やソファなどのようであり、新館開館を報じる記事では総じて児童書エリアの写真が利用されています。一方で、閲覧席の少ない一般書エリアは窮屈な印象であり、ゆったりとした児童書エリアとの差を感じます。
また、館内には書庫に相当するスペースがありません。離れた場所にある旧館が書庫扱いとなっているため、書庫出納しても当日中には閲覧できません。いつか別施設に再移転する計画があるのでしょうか。
(写真)池田市立図書館の入口。
(写真)池田市立図書館の郷土資料。
(左)カーリルタッチ。(右)落語関連資料。
3. 演劇場「呉服座」
所在地 : 大阪府池田市西本町4
開館年 : 1892年
閉館年 : 1969年1月
1892年猪名川河岸移転。1969年解体。1971年博物館明治村移築。1984年重要文化財指定。映画館ではなく芝居小屋。読みは「くれはざ」または「ごふくざ」。
3.1 移築前:大阪府池田市(1892年-1969年5月)
かつて猪名川の河岸には演劇場の呉服座がありました。戦後の10年間が最盛期だったとされ、浪曲師や講談師など多くの芸能人が来館しています。1969年(昭和44年)5月の歌舞伎公演を最後に閉館し、1971年(昭和46年)には愛知県犬山市の博物館明治村に移築されました。閉館後には猪名川の河道が拡幅され、跡地は堤防内となっています。
(写真)呉服座が掲載されている1965年の住宅地図。
(写真)移築前の呉服座の位置。『明治村建造物移築工事報告書 四 重要文化財 旧呉服座』博物館明治村、1985年。
(写真)移築前の呉服座。猪名川側から見る。『明治村建造物移築工事報告書 四 重要文化財 旧呉服座』博物館明治村、1985年。
(左・右)演劇場の呉服座跡地。猪名川の堤防内。
3.2 移築後:博物館明治村(1971年-)
2020年(令和2年)1月には博物館明治村の呉服座を訪れました。廻り舞台の下部や花道の下にある地下通路を見学することができます。
(写真)博物館明治村に移築された呉服座。2020年1月。
(左)呉服座の桝席と桟敷席。(右)人力の廻り舞台。いずれも2020年1月。
(写真)呉服座の1階部分。『明治村建造物移築工事報告書 四 重要文化財 旧呉服座』博物館明治村、1985年。