振り返ればロバがいる

Wikipediaの利用者であるAsturio Cantabrioによるブログです。「かんた」「ロバの人」などとも呼ばれます。愛知県在住。東京ウィキメディアン会所属。ウィキペディアタウンの参加記録、図書館の訪問記録、映画館跡地の探索記録などが中心です。文章・写真ともに注記がない限りはクリエイティブ・コモンズ ライセンス(CC BY-SA 4.0)で提供しています。著者・撮影者は「Asturio Cantabrio」です。

日進市の映画館

(写真)日進市立図書館。

愛知県日進市を訪れました。

1. 日進市を訪れる

f:id:AyC:20190212192123p:plain

(地図)愛知県における日進市の位置。©OpenStreetMap contributor

 

名古屋市の東側に位置する日進市。2016年12月には日進市立図書館の館内の写真を撮らせてもらいました。2017年12月9日には「ブラニッシン!~いまの日進、世界に発信~」というOpenStreetMapマッピングパーティに参加しています。この2019年2月にも日進市を訪れました。

ayc.hatenablog.com

f:id:AyC:20190212194236j:plain

(写真)日進市立図書館。

f:id:AyC:20190212194245j:plainf:id:AyC:20190212194256j:plainf:id:AyC:20190212194259j:plain

(左)時間外貸出ロッカー。(中)同一施設内のカフェ。(右)IT講習室。

f:id:AyC:20190212194302j:plainf:id:AyC:20190212194305j:plainf:id:AyC:20190212194323j:plain

(左)自動貸出機。(中)新着図書・特集展示。(右)1階の開架。
f:id:AyC:20190212193834j:plainf:id:AyC:20190212193847j:plainf:id:AyC:20190212193849j:plain

f:id:AyC:20190212193852j:plainf:id:AyC:20190212193857j:plainf:id:AyC:20190212193859j:plain

(写真)日進市の宝泉寺。ブラニッシンでOpenStreetMapの編集対象となった。


2. 日進市の映画館

日進市の映画館事情

私が作成している愛知県の映画館地図「消えた映画館の記憶地図」を見ると、日進市周辺のエリア(長久手市日進市・愛知郡東郷町みよし市名古屋市名東区名古屋市天白区)は映画館が少ない地域だったことがわかります。名古屋市中心部と比較してまばらなのはもちろん、愛知県全体の地図を見てもやはり少なかったのです。

過去の映画館名簿を1960年から2018年まで全年度分確認すると、過去の日進市域(愛知郡日進町)には「日進東映」と「ドライブインシアターくるま座」があったことがわかりました。ぐぐってみると「-くるま座」についてはいくらか言及がありますが、「日進東映」についてはいっさいヒットしません。日進東映に関する言及を図書館で探してみました。※日進東映についてヒットする言及は、いずれも私が「消えた映画館の記憶」に掲載したことでヒットするようになったものです。

f:id:AyC:20190212195853p:plain

(地図)日進市周辺に存在した映画館。「消えた映画館の記憶地図」より。赤は閉館した映画館。緑は営業中の映画館。はてなマークは正確な場所を特定できていない映画館。

 

2.1 日進東映(1950年代後半-1960年代中頃)

日進市立図書館では、愛知県に関する郷土資料は2階、日進市に関する郷土資料は1階にまとめられています。まずは『日進町誌』(1983年-1990年)をあたり、めぼしい文献を片っ端からめくりましたが、些細な情報も得られませんでした。なお、事前に愛知県図書館で愛知郡日進町の住宅地図を閲覧しましたが、1968年と1970年の住宅地図に日進東映は掲載されていません。

1階の郷土資料の脇にはレファレンスカウンターが設置されています。司書に「日進市にあった映画館について調べている」というと、「日進市に映画館はありませんでしたよ」と言われてしまいました。「1960年代まで大字浅田にあったそうなんですが」というと、「私は浅田在住ですが(さらに言えば1970年生まれですけど)、ありませんでしたよ」とも。それで険しい顔をして「何か文献はないでしょうか」と聞くと、事務室にいた別の司書にも聞いてくれ、「“映画館跡地” なら知っている」という情報を得ることができました。

その司書によると、県道が交差する「浅田」交差点西側の三角地帯に “映画館跡地” があるとのこと。Google mapを見ると現在はヘラルドハウスウェアという会社があります。日進市立図書館が所蔵する1982年の住宅地図ではその場所に「家具の柏屋」があり、1989年の住宅地図ではその場所に「服部家具センター日進店」がありました。なお、“映画館跡地” について教えてくれた司書は一度も “日進東映” という館名を口にしませんでした。

1961年-1969年の空中写真でこの地点を見てみても、“映画館跡地” にある建物が映画館であることは確信できませんでした。この時代の映画館は民家とははっきり異なる形状/規模であることが多いのですが。1960年代半ばの愛知郡日進町の人口は約14,000人。大字浅田だけなら2,000-3,000人でしょうか。当時としても少ないです。本当にここが映画館だったのでしょうか。

参考文献 : 『映画年鑑 1963年版 別冊 映画便覧 1963』時事通信社、1963年など各年版の映画館名簿。

f:id:AyC:20190212202925p:plain

(空中写真)1960年代の “映画館跡地”。地理院地図 空中写真・衛星画像(1961年-1969年)


2.2 ドライブインシアターくるま座(1987年-2000年代前半)

日進市に存在したもう一つの映画館(映画施設)については、1987年10月2日に『中日新聞』がオープンを報じています。愛知トヨタ自動車の新型店舗「ツインカム」に併設されるドライブインシアターであり、ドライブインシアターとしてはザ・モール春日井ドライブインシアターに次いで愛知県2例目。自動車販売店に併設される全国初のドライブインシアターだそうです。

参考文献 : 「ドライブイン・シアター 愛知・日進町にも 愛知トヨタが新店舗に併設」『中日新聞』1987年10月2日

f:id:AyC:20190212192038p:plain

(地図)かつて存在した日進市の映画館の所在地。地理院地図

 

2.3 TOHOシネマズ赤池(2017年-営業中)

さて、2017年11月24日にはセブン&アイ・ホールディングス系列の大型ショッピングセンター「プライムツリー赤池」がオープンし、シネコンのTOHOシネマズ赤池が開館しました。10スクリーン計約1700席。愛知県の映画館としては初めて「MX4D」が導入されています。

日進市の北隣の長久手市にはイオンシネマ長久手があり、東隣のみよし市にはMOVIX三好があります。名古屋市の東部郊外にシネコンが3館もあって供給過多ではないかと思われますが、日進市周辺の映画館環境は羨ましくも思います。

 

3. まとめ

従来型映画館の日進東映ドライブインシアターのくるま座、シネマコンプレックスのTOHOシネマズ赤池と、これまでの日進市には形態の異なる映画館が3館存在し、まったく時期がかぶっていないことがわかりました。日進市立図書館に対する日進東映のレファレンスでは、文献での言及を確認できませんでしたが、司書の記憶から場所を(ほぼ)確定させることができました。「消えた映画館の記憶地図(愛知県版)」にマッピングするとともに、判明したことを「尾張地方の映画館 - 消えた映画館の記憶」に記録しています。

 

f:id:AyC:20190212191140p:plain

(写真)「尾張地方の映画館 - 消えた映画館の記憶」より日進市部分を掲載。