振り返ればロバがいる

Wikipediaの「利用者:Asturio Cantabrio」によるブログです。ロバです。東京ウィキメディアン会・関西ウィキメディアユーザ会所属。

ウィキペディアタウンin鶴舞に参加する

2017年6月3日(土)、名古屋市鶴舞中央図書館で開催された「ウィキペディアタウンin鶴舞」に参加しました。

主催者によると、今回のイベントは「地域の文化や歴史について、フィールドワークと文献調査を行ってからウィキペディアを編集するワークショップ」であり、「参加者は調べる楽しさを体感し、図書館の活用方法や地域の歴史についての理解を深める狙い」があるとのこと。

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 OpenStreetMapから切り出した鶴舞公園の地図。左側中央に鶴舞中央図書館。右側中央の竜ヶ池まで行って帰って70分。

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イベント準備(1)

このイベントはにんげん図書館(山本茜さん)と鶴舞中央図書館の共催。まちあるきガイドは昭和区案内人クラブに依頼し、鶴舞公園を管理する名古屋市みどりの協会も協力してくださっています。私はウィキペディアンとしての協力者という立場。全体のコーディネートはにんげん図書館、場所や資料の提供は鶴舞中央図書館、まちあるきガイドは案内慣れしている市民団体と、それぞれが得意な分野で役割を分担するイベントとなりました。

peoplelibrary.net名古屋市:昭和区案内人クラブ(昭和区)

 

午前中はフィールドワーク(鶴舞公園のまちあるき)、昼食をはさんで午後にはグループワーク(ウィキペディアの編集)という流れは他地域のウィキペディアタウンと一緒ですが、アイスブレイクや振り返りを重視するそのスケジュールにはにんげん図書館流の個性が出ていました。
また、フィールドワーク前には図書館の齋藤さんが「ウィキペディアタウンとは」、グループワーク前には私が「ウィキペディアの記述方法」について説明してはいるものの、その合計時間は30分弱。2週間前に参加した「ウィキペディアタウンin丸亀」では計70分だったので、鶴舞では説明時間をかなり抑え、参加者の負担を減らしています。


いわゆるウィキ記法を口頭で説明されても理解するのが容易ではありません。最近のイベントではウィキ記法を口頭で説明するだけでなく、紙に印刷して配布するケースも多いように思われます。編集方法の説明は簡単に済ませ、ウィキペディアの特徴とか役割について詳しく説明するのが主流になってきた感じです。

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イベント準備(2)

今回の題材は鶴舞中央図書館がある「鶴舞公園」。まずは主催者側で「八幡山古墳」「奏楽堂」「噴水塔」「普選壇」「名古屋市鶴舞公園附属動物園」「鶴々亭」「竜ヶ池・酒匂の滝」「胡蝶ヶ池」の8か所を編集候補(まちあるきガイド候補)に選び、この段階で鶴舞中央図書館が文献がどれだけあるか確認します。その後昭和区案内人クラブさんを交えたミーティングを行い、10か所が最終的なまちあるきガイドスポットとなりました。

5月1日にはFacebookのイベントページを中心として広報を開始。同日発行の『広報なごや』、鶴舞中央図書館でのチラシ配布、にんげん図書館ウェブサイト・SNSなどでの宣伝を行っています。申込時点でウィキペディアタウンへの参加経験と属性(職業)を聞いており、イベントまでに主催者側でグループ分けを行いました。

ウィキペディアタウンの参加経験者は円周率3パーセントさんなど6人が早くから参加を表明していたこともあり、5グループに1人ずつ編集経験者を配置できました。私は前日までに奏楽堂・噴水塔・普選壇などの写真を撮影してWikimedia Commonsにアップロードしたほか、当日用意される文献の中から著作権面で問題ない写真や絵葉書を何枚かアップロードしています。f:id:AyC:20170608091748j:plainf:id:AyC:20170608092718j:plainf:id:AyC:20170608091751j:plain

 (写真)事前にとっておいた写真の一部。奏楽堂、鶴々亭、噴水塔。

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(写真)事前にアップロードしておいた絵葉書類。上3枚は関西府県連合共進会(1910年)時、下3枚は1920年代-1930年代。下の左側2枚は当時珍しかった夜間の電飾。

 

 

鶴舞公園をあるく

イベント前々日と前日とは打って変わって、6月3日(土)のイベント当日は絶好のまちあるき日和でした。同日に開催された「Wikipedia Town 沼津 #2」より1時間遅く、10時にイベント開始。昭和区民は少なかったかもしれませんが、関西からやってきた3人を除けば、多くが名古屋市在住・在勤者だったように思えます。公共・大学の図書館員や名古屋スリバチ学会の方が目立っていました。

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(上)受付開始前の会場。中央の文献机の周囲に5グループを配置。

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(左)ウィキペディアタウンの説明を行う鶴舞中央図書館の齋藤さん。(右)グループごとのアイスブレイクをフィールドワーク前に行う。ウィキペディアタウンでは意外とみかけないパターンだった。

 

イベント参加者は5グループ×約6人で約30人。30人全員で鶴舞公園をフィールドワークして大丈夫だろうかという不安もありましたが、よく晴れた上に穏やかな気候だったこの日、思ったほど人はいません。ただ70分で10か所の説明はやや多かったようで、10分ほど予定時間をオーバーしています。このフィールドワークには毎日新聞の記者の方も同行し、翌日には地方版にイベントの記事が掲載されています。

日ごろから鶴舞公園をガイドしている昭和区案内人クラブの方々の説明はとてもおもしろい。今回のイベントに向けていくつもの文献をめくり、鶴舞公園についての予備知識を付けておいたのですが、それでも各スポットで新たな発見がありました。

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 (写真)図書館を出て鶴舞公園を歩く参加者。「かつて60本のヒマラヤスギが植えられたが、オリジナルの樹は数本しかない」という説明が昭和区案内人クラブから入る。右の大木がオリジナルの樹。

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 (写真)噴水塔前での昭和区案内人クラブの説明。口頭だけでなく古写真などの資料も使います。

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 (写真)昭和区案内人クラブはポイントごとに案内人が入れ替わる。庭園内に設置されている銅像や奏楽堂の説明。1枚目は9歳の少女像「ベアトリーチェ」、2枚目は「踊り子」。

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 (写真)胡蝶ヶ池の説明。北側部分の池の脇に植わっているアカメヤナギ(3枚目)は公園の造成以前から自生しているらしく、この地がかつて沼沢地だった時代の名残を残しているとか。

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 (写真)左は見ごろのハナショウブ園。右は鶴舞公園最高峰の吉田山。吉田山の地盤はJR鶴舞駅の高架と同じ高さだという説明があった。

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(写真)鶴舞中央図書館近くにある鶴々亭と百華庵。本来は有料施設だが緑化センターの好意で入らせてもらえた。名古屋市の制度である認定地域建造物資産となっている。歴史的建造物の位置づけは、上から指定文化財(国・県・市)、登録文化財(国)、認定地域建造物資産(経済的支援あり)、登録地域建造物資産(技術的支援あり)。

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 (写真)普通選挙法を記念した普選壇と、かつてこの地にあった市立名古屋動物園の正門。普選壇に書いてあるのは五ケ条の御誓文。普選壇前は屋外麻雀のメッカ。

 

 

今回の文献

この日に提供された文献は量と質が抜群でした。

『名古屋の公園100年のあゆみ』など、鶴舞公園について調べる際の基本的文献8冊は5グループそれぞれに1冊ずつ配布し、『御大典奉祝名古屋博覧会総覧』(1929年)など、より詳しく調べるための文献約10冊は中央の机に置かれました。5冊ずつ必要な文献はこのイベントのために分館から持ってています。

公共図書館が主催者であり、さらに大都市の図書館だからこそできる提供の仕方でした。雑誌記事から堅い文献や古い文献まで、さらには絵図や写真集まで揃った多彩な文献は、参加者を大きく刺激したようです。提示された文献以外に、イベント中にも図書館内からいくつもの文献が運び込まれました。

イベント中に新聞データベースを使ったグループはなかったと思いますが、「鶴舞公園」ではなく「奏楽堂」のように小さな題材を調べるときは新聞記事も役に立ちます。特に鶴舞中央図書館は中日・朝日・読売・毎日・日経の5紙が揃っていて(愛知県最多)印刷もしやすい、愛知県でもっとも新聞データベースが役に立つ図書館です。

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 (下)本日の文献をすべて集めるとこんな感じ。この量はウィキペディアタウン新記録なのでは。

 

 

ウィキペディアを編集する

配布された鶴舞中央図書館周辺のご飯どころマップを基に、12時から13時は各自で昼食。13時からはグループごとの作成記事を決めるドラフト会議を行い、それぞれ「竜ヶ池」「普選壇」「市立名古屋動物園」「吉田山」「鶴々亭」を担当することが決定しました。

鶴舞公園の目玉となる建物は名古屋市公会堂(改修工事中のため今回のイベントからは除外)。次に有名なスポットは「噴水塔」や「奏楽堂」などであり、文献の量からもこの2つは作成してほしいと思っていましたが、これらを選んだグループはありませんでした。昭和区案内人クラブはフィールドワークで各スポットをとても平等に案内していました。また、参加者の中に地形好きが多かったのも影響しているかもしれません。

 

文献はもとからかなりの量でしたが、イベント中にどんどん増えていくのは図書館開催ならではです。図書館で1929年の名古屋新聞を探して記事に反映させたグループがあり、また50年以上前の文献に掲載されている写真を記事に反映させたグループもありました。

昭和区案内人クラブの方は午後のグループワークにも何人か残ってくださいました。文献を読んでわからない点は案内人に聞くことができ、用意された文献(主)と案内人の知識(従)をバランス良く活かしていたように思えます。

奏楽堂や噴水塔は文化財指定されており、一定量の文献が見込めます。一方で池や丘などの地形は一般的に文献が少なく、「竜ヶ池」や「吉田山」や「動物園」というキーワード単独ではほとんど情報が得られません。竜ヶ池の水源の場所を突き止めようとしたり、吉田山にあった建物や貝塚を探ることで道を開いたり動物園の設立にかかわった今泉七五郎に興味を持ったりと、それぞれの方法で一つの記事を完成させています。

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(写真)各グループの作成記事を決めるドラフト会議。被ったらじゃんけん。

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(写真)各グループの担当記事。スクリーンでは編集作業の残り時間を秒単位でカウント。残り1時間43分。

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 (写真)5グループそれぞれの編集の様子。

 

成果発表後、山本茜さんから「今回のイベントは知るプロセスが目的」(知ること自体が目的ではない)というコメントがありました。ウィキペディアタウンというイベントをうまく表しているコメントですが、イベントに参加したことのないウィキペディアンにはイベントの主旨が理解されていないように思われます。ウィキペディアのコミュニティに対してどうPRしていくのかは悩ましいところです。

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 (写真)成果発表。

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 (写真)イベントは終了したはずなのに文献に群がる参加者。

 

ウィキペディアタウン 鶴舞の情報、世界に発信 市民ら記事作成 名古屋/愛知」2017年6月4日、毎日新聞地方版

https://mainichi.jp/articles/20170604/ddl/k23/040/076000c?ck=1

 

 

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